「うんちく講座」No.95「鳴らない音があるオルガンのなおし方」で、教師は学校の器材を修理する力が必要だということを書いたが、今回はその続編。
(ぴかちゅう先生から教えてもらった方法なのだが)
一時期、「うたごえ運動」などで、人気があったアコーディオンだが、今は演奏する人も少なくなっている。(昔はのど自慢などで横森良造さんあたりがおなじみだった)
鼓笛隊などをまだやっている学校だと、若干使われる機会もあるかもしれないが、ほとんどは楽器置き場の片隅で眠っているのかもしれない。
うたごえ運動の人や、のど自慢の伴奏の人が使っていたのは、独奏型といって、右手でメロディーを弾くほかに左手で和音(コード)ボタンを弾くというタイプのもので、これは値段も高い(今の価格で20万円以上)
学校にあるのは、ほとんどが合奏用で、右手のメロディー鍵盤だけのタイプである。
出る音の音域によって、ソプラノ・アコーディオンからバス・アコーディオンまでがある。鍵盤は2〜3オクターブ程度である。
価格は安いもので、7万円程度。けっこう高い楽器である。
うまく演奏できれば、かなり表現力のある楽器なので、音楽の時間にアンサンブルなどで活用できればよいのだが、多くの学校では購入後かなりの年数が経っているので、故障しているものも多いかもしれない。
オルガンの場合の故障は、No.95「鳴らない音があるオルガンのなおし方」に書いたように、発音源であるリードの部分にほこりなどがはさまって、鍵盤を押しても音が出なくなるという例がほとんどだが、アコーディオンの場合は、逆に鍵盤を押さなくても音が出てしまうという例が多い。
あるいは、下の写真のように、鍵盤が浮き上がってしまっているということもある。(その鍵盤の音が、押さなくても出るという合併症状のことも多い)

これを修理するためには、覆いを取り去って、発音部分を露出させなければいけない。オルガンだと裏面の板を外してしまえばよいのだが、アコーディオンには多くのネジ止め部分があって、どこを外せばよいのかわかりにくい。
実は、外すべきネジは、ただ2個である。下の写真を参照いただきたい。

この写真の場所のネジを上下1つずつ抜けば、鍵盤側のカバーを取り外すことができる。
私の学校には、T社とY社のアコーディオンがあるが、T社のものはドライバーで回して外す「ネジ式」のものになっており、Y社のものは、ただ引き抜くだけでよい「ピン式」のものになっている。ピン式の場合、はさみなどでピンの頭をはさむようにして引き抜けば簡単に抜くことができる。
カバーを外したのが、下の写真である。
この写真を見ればわかるように、アコーディオンは、各鍵盤にてこのような棒がついており、その先にふたのような部分がついていて、それがそれぞれ穴をふさいでいる。
穴の中には発音源のリードが入っており、鍵盤を押すと、ふたが上がって穴を空気が通るようになり、リードが音を出すという仕組みである。

上の写真のアコーディオンの場合は、鍵盤を押さなくても3つの音が出てしまうという故障である。
まず「シ」の場合、ふたの部分がてこの腕から外れており、てこの腕の先端が穴の中に入ってしまっている。そのため、鍵盤も浮き上がっている。
その隣の「ド」は、外れた「シ」のふたがはさまってしまい完全に穴をふさぐことができない状態である。
「ミ」の場合も、ふたが腕から外れかかって、穴が半分ふさがれていない。
これらの原因がわかったら、それに応じた対処をすればよい。
腕から外れてしまったふたは、接着剤等でつけ直す。外れかかっているふたも同様にする。
また、この腕の部分はアルミニウムのような柔らかい金属なので、それがゆがんでふたの位置がずれてしまっていることもある。その場合は少しの力で腕を曲げることができるので、手で調整をする。
これで修理は終わりである。悪い部分を直したら、もう一度ふたをすれば、また十分に使えるアコーディオンになる。
「うんちく講座」No.83「OHPは30年もつ」で書いたことにも通じるが、こういった修理の方法をしらないと、高価な器材を「壊れたから廃棄処分」ということになりがちである。
あるいは、安易に業者に修理に出して、高い修理料(ほとんどは人件費)をとられることになる。
今まで何度も書いたことの繰り返しになるが、ちょっとした修理ぐらいは自分でできるということも、教師にとっては大事な能力である。
そのための知識もあるにこしたことはないが、知識がなくても、まずはドライバーでなかみを開けてみれば、何かがわかるはずだし、そういうことに挑戦してみようという態度こそが、教師にとって不可欠であると、私は思う。