OHPは30年もつ

OHP(オーバーヘッド・プロジェクター)は手軽に使え、かつ効果的な視聴覚機器として、教室で学習指導の際に活用されている。
ところが古くなったものは、ランプが点かないとか、暗くなったなどの理由で、教具室の隅に放置されていることもあるようだ。昭和50年代の前半には、ほとんどの学校で導入したはずなので、買ってから20数年になるものもあるだろう。
「古いものは、もうダメだから、最新型のOHPを買いたい」と予算要求する例も多く見かける。
ちょっと待ってほしい!!
OHPは実に簡単な構造である。中を開いて見た方はわかると思うが、光源のランプと、レンズや鏡などの光学的な部分しかない単純な機器である。経年劣化するような部分は全くない。
私は、赴任した学校で、「もう古くて使えない」と廃棄寸前だった(あるいは放置されていた)OHPを、ほとんど復活させてきた。
今、新しいものを買おうとすると、廉価版でも6・7万円、ちょっと良いものだと15万円以上もする。まだまだ使えるOHPを数個も死なせておくのは、何十万円分の損である。
整備や修理のポイントを述べるので、ぜひやってみていただきたい。
まず、ランプが点かないとしたら、多くはランプ切れである。同型のOHPで、ちゃんと点くものを準備し、それとランプを入れ替えて試してみる。新しいランプを入れて点くのであれば、ランプを購入して入れるだけで、OHPは復活する。交換用のランプは、種類にもよるが、一般的なものなら4千円程度である。
ランプは大丈夫なのに点かないとしたら、ヒューズが切れている可能性がある。これも、ちゃんと作動するものと入れ替えてチェックしよう。ヒューズ切れだったら、電気店で数百円払うだけで、OHPは復活する。
なお、ほとんどのOHPでは、ふたを開けたままで、電源を入れても、ランプは点かない。左の図のタイプでは、上面のふたを開けて、ランプ等の交換を行うが、ふたの部分に金属の突出したものがついていて、これが本体にきちんと差し込まれることで、安全装置が作動し、はじめて電源が入る仕組みになっている。機種によっては、横からふたを開けるものもあり、それをきちんと押し込んで閉めることで安全装置が作動するものもある。
光量不足で薄暗いということを古くなったせいにすることもあるが、これも大間違いである。たまにはランプ自体が古くなって暗くなることもあるが、それであればランプ交換で対応できる。
しかし、薄暗い場合の、ほとんどの原因は、汚れているということである。
OHPの掃除は、少なくても半年に一回というのが、私の持論である。私が復活させたOHPのほとんどは、中がホコリだらけであった。特にひどいのが、中に入っている平面レンズの上面である。これらを取り出し、ガラス用の洗剤等できれいにするだけで、OHPは新品同様の光量を取り戻す。ついでに、ランプの下にある反射鏡や、その他のレンズ、鏡、ガラスなどの部分をきれいにする。これで光量は100%復活である。
上面のガラスが割れてしまっただけで廃棄されそうになったOHPも見たことがある。旧型のものになると交換用の部品の在庫もないし、あったとしても正規のものだと数千円はするが、これは近所のガラス屋さんに枠を持ち込んで、サイズに合わせて切ってもらえば解決である。正規のものはガラスの厚さが2mmと3mmの中間だったが、2mmの普通のガラスを切ってもらったら大丈夫だった。私の場合は、知り合いのガラス屋さんだったので、ただでやってもらった。
鏡が割れたのも、同じようにサイズに合わせて切ってもらい、瞬間接着剤などで着ければよい。
「各学級にOHPがあればいいのに、使えるものが2台しかないので、新年度には、せめて2台、新しいOHPを買ってほしい」という話が出て、調べてみたら、教具室で死んでいるOHPを9台見つけて、全部を復活させ、家庭科室や図書館などの特別教室に(ほとんど使われないで)置かれていたものと合わせて、何も買わないでも全教室に配備できたという体験もある。
ドライバー1本と雑巾ひとつでできる作業である。教師は指導技術の研修も大事だが、このような初歩の知識・技術も、きちんと身につけてほしいものだ。
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