描画ソフトで地図をなぞる


 自慢じゃないが方向オンチである。したがって地図を描くことには全く自信がない。

 通勤届等の文書に描く地図は略図なので、私でもどうにか描けるが、自力で正確な地図を描くのは本当に苦手である。



 ところが、仕事で様々な報告書を書いたりするときなど、正確な地図を描かなければならないことがある。

 自分で現場を見て、それをもとに地図を描くというのは私にはとうてい無理なので、既存の住宅地図等を参考にすることが多い。



 地図を手本にしながら自分で描くとか、地図の上に白い紙を置いて写し描きをするなどの方法が一番手っ取り早いのだが、紙に手描きしたものだと、ワープロで作った文書で使うには糊で貼るしかない。(実際には貼ったものをコピーすることが多い)

 しかし、この頃は、報告書類を紙の状態で綴じておくだけでなく、パソコンで扱えるデータとして保存しておくことも多くなったし、文書をそのまま電子メールで送信することも増えてきた。この場合、地図のデータもデジタルファイル化するほうが具合がいい。



 手描きしたものをイメージスキャナ等で取り込む方法もあるが、どうせなら地図を描く段階からパソコンを使って、正確で楽な作図をしてみたい。

 すでに自分で工夫した便利な方法で実行している方も多いだろうが、私のやっている方法も紹介してみよう。



地図をイメージスキャナやデジカメで取り込む

 下の図はイメージスキャナで取り込んだものだが、急ぎの場合で手もとにスキャナがないというときはデジタルカメラで地図を撮影するのもよいだろう。デジカメで撮る場合は、地図とカメラを平行にして、地図の構図が歪まないように配慮する必要がある。



 この画像に「事故発生地点」とか「事故車の進行経路」等の文字や線を直接描き込んでもよいが、不要なデータ(世帯主の名前等)も多いので、ごちゃごちゃした図になってしまう。不要な文字等を消すこともできるが、手間がかかるし、仕上がりもきれいではない。そこで、私の場合は次のような方法を使っている。



プレーン・レイヤーの類が使える描画ソフトを使う

 描画ソフトには、数枚の画像を重ねて、それを透過したりしながら編集作業ができるものがある。元になる図面の上に透明な紙(トレーシングペーパーとかOHPシート等)を重ねて、上からなぞる作業のようなことをコンピュータソフトで行う機能である。

 その1つ1つの画面のことを「プレーン」とか「レイヤー」と呼んでいる。最近の描画ソフトはほとんど複数のプレーン(またはレイヤー)を扱えるようになっている。

 描画ソフトには「ペイント系」と「ドロー系」がある。

 ペイント系は、画像データをドット単位で扱うもので、色の修正やぼかしなどの効果がうまく行えるが、画像中の一部の図形の拡大縮小とか、1図形の消去などの作業は苦手である。

 ドロー系は、例えば「ある座標とある座標の間を指定の太さで結ぶ直線を描く」とか「この座標を中心として指定の半径の円を描く」というようにベクトルデータで処理するもので、製図系の作業に向いている。

 作業の用途によって、描画ソフトを使い分けるのが望ましい。今回の作業では、ドロー系ソフトである「花子」を使っている。



下の図を表示して上の図に入力する

 イメージスキャナやデジカメで取り込んだ地図を描画ソフトで表示させ、その面(プレーンまたはレイヤー)の上に、新たな入力用のプレーン(レイヤー)を設定して、そこで地図をなぞって線を引く作業をしている様子が、次の画像である。



 その際、この画像のように、取り込んだ地図の色を黒以外の色に変換しておくと作業をするときに見やすい。(色の変換には少々手間がかかるが)

 上の画像の右下の「プレーンの設定」という部分を見てもらえばわかるが、この場合は、地図のデータがある「Aプレーン」を表示する設定にしておいて、入力は「Bプレーン」で行っている。つまり、入力の作業は、地図データのAプレーンには影響を与えず、別のプレーンであるBプレーンに保存されるわけである。



入力画面だけを表示した状態で保存

 道路の線など、必要な部分を入力したら、不要な部分を見えなくして、入力結果だけを表示させるとよい。つまり「Aプレーンを表示しない」という設定にすればよいのである。

 そうやったのが、下の画像である。



 画像右下の「プレーンの設定」を見れば、Aプレーンが表示されていないことがわかるだろう。

 あとは、これに説明の文字や、矢印等を描き込んでいけばよい。ドロー系ソフト(この場合は「花子」)でもその作業ができるが、私の場合は、この画像をペイント系のソフトで読み込んで、そのソフト上で作業をすることが多い。



ソフト間でのコピー&ペーストを活用する

 実際に作業をしてみると、イメージスキャナ等で取り込んだ地図の画像をペイント系ソフトで処理し、JPG形式やGIF形式、BMP形式等で保存した場合、ドロー系ソフトではファイルの読み込みができないことが多い。

 その場合は、ペイント系ソフトで画像を表示し、それをコピーして、ドロー系のソフト上で「貼り付け」を行うとうまくいく。

 ソフト間のファイルの互換性がない場合は、この方法を使うのがお勧めである。インターネット上の画像などには、保存が不可能なものもあるが、それらをどうにかして使いたいという場合は、パソコンのディスプレイに表示されているものをそのまま画像として取り込む「PrtSc」(プリントスクリーン)キーを使い、それを他のソフトに貼り付けるという技が便利である。このやり方については、うんちく講座No.318「画面コピーをきれいに縮小するには」でも触れているのでご参照いただきたい。



地図サイトのデータも活用

 今回は印刷物である住宅地図を使ったが、インターネットの地図サイトの画像も活用できる。スキャナやデジカメ等の機器も不要だし、個人データの保護のために民家の世帯主名等も入っていないので、場合によってはその画像をそのまま使うこともできるので便利である。下の画像は地図サイトから取り込んだ例である。



 私は、「Domap」「MapFan Web」を使うことが多い。



地図だけでなく建物の見取り図の場合も便利

 今回は地図を描く目的で、既存の地図をなぞる方法を紹介したが、同じやり方で建物の見取り図も作成することができる。学校要覧等の印刷物の中の校舎の見取り図は、印刷業者が原版を持っていて、学校ではそれをコピー機で複写して使うことが多いが、自分でもパソコンで扱える画像データとして持っていると便利である。

 印刷業者の原版をスキャナで取り込んでもよいが、その場合、住宅地図と同じように不要な文字や記号などが入っていてじゃまになることがある。今回紹介した方法で、基本的な輪郭線だけが入っている原版を作成しておき、必要に応じてそれに文字や記号を加えるようにすると都合がよい。



花子の簡易地図作成機能の活用も

 今回の例は、報告書等で使うためにきちんとした縮尺の正確な地図を描かなければならなかったが、運動会や文化祭の案内等のチラシに使ったりするのであれば、あまり正確さにはこだわらない簡単な地図のほうがよいということもある。

 そういうときは「花子」の簡易地図作成機能を使うと、楽に地図を描くことができる。下の画像は、花子で簡易地図を作成しているようすである。





 私の場合は、仕事上の必要に迫られて、「こんなことはできないだろうか」といろいろ試行錯誤しているうちに、各種ソフトの便利な機能を知るということが多いのだが、普段からソフトの使いこなしを確かめておいて、いざというときにはそれを使うと効率的だろう。このうんちくがその一助になれば幸いである。

<03.09.15>

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