サンキュッパ



 うんちく講座もこのコンテンツでNo.398サンキュッパである。

 そこで、いわゆる「サンキュッパ」について考えてみたい。



 「いわゆるサンキュッパ」と書いたが、一般には価格が「39,800円」あるいは「3,980円」または「398,000円」などの製品をこう呼ぶようだ。

 ちなみに、家電量販店のチラシを見てみると、「3,980円」で買えるのは「CDラジカセ」、「39,800円」で買えるのが中級レベルのデジカメといったところである。



 39,800円といえば約4万円である。4万円から200円を引いた金額であるから割引率で表せば、たったの「0.5%引き」でしかない。

 しかし、「定価40,000円」と表示するよりも「定価39,800円」と表示したほうがずいぶん安い印象を受けるので、意図的にこういった表示をするのだろう。よくいえば「数字のマジック」ということになるが、悪くいうと「ごまかし」でもある(^^;)

 「40万円のハイビジョンテレビ」よりは「39万8千円のハイビジョンテレビ」のほうが、ぐっと安いような気になるので、この「ごまかし」は大成功といえよう。だが、40万円のものから2千円分安くしてもらっても、前述したように「たったの0.5%引き」なのだから実際にはたいした値引きでもないのである(^^;)



 「イチキュッパ」とか「ニーキュッパ」「ゴッキュッパ」などの価格設定もある。

 どれも同じように見えるかもしれないが、頭1桁の数字が変わることによって、値引率(?)には下の表のようにかなりの差が出てくる。

切りのいい価格
キュッパの価格
値引率
10,000円
9,800円
2.0%
20,000円
19,800円
1.0%
30,000円
29,800円
0.7%
40,000円
39,800円
0.5%
60,000円
59,800円
0.3%
100,000円
99,800円
0.2%


 10万円に対しての99,800円などは、たったの「0.2%」の値引きでしかないのだが(1日の時間に例えると0.2%は2分53秒だけである)見た目の感じでは、ずいぶん安くなったような印象を受けるので、「ごまかし」の効果はこれが一番大きいのかもしれない。



 しかし、この「ごまかし」が本当に有効だったのは、1989(平成元)年の3月31日までであった。

 この日までは消費税がなかったので、サンキュッパ(39,800円)の製品を買ったときに、4万円を出せば、とりあえず200円のおつりがもらえたからである。出した4万円がそのままレジに吸い込まれるよりは、200円でもおつりをもらえたほうが、なんとなく「安く買った」という満足感があったと思う。



 しかし、1989(平成元)年4月1日からは消費税3%が導入された。(当時は竹下内閣)

 さらに1997(平成9)年4月1日には消費税が5%に上げられた。(当時は橋本内閣)

 サンキュッパ(39,800円)の商品を買っても、消費税3%時代だと「40,994円」、消費税5%の現在なら「41,790円」を支払わなければならないのである。



 消費税については、導入当初は「福祉目的で活用」という説明もあったし、先進国ではもっと高い消費税率の国もあるので一概に文句も言えないが、高い買い物をしたときなどは消費税の金額の高さに「ムッ」とするときもある。

 例えば、約20万円のパソコンを、例の「数字のマジック」で、「超高性能の最新パソコンが、たったの199,800円」などと表示されていると、本当は20万円に対しての0.1%(千分の一)しか安くないのに、「これは安い」などとごまかされて、レジで支払いをすると、「消費税5%で、20万9790円いただきます」と言われるはめになる。

 財布から21万円を出して、210円のおつりをもらうわけである。



 こういうときは、詐欺にあったような気分になる。「なにが199,800円だ。実際には21万円もふんだくりやがって!」という具合である。

 怒るべき対象は、ホントは別にあるのだが、ついつい、その店を恨んでしまいがちになる。これだと店にとってもよくないし、消費者の精神衛生上もよくない(^^;)



 消費税については、現在の首相が「私の任期中は上げることがない」と言っているが、「この程度の公約違反は大したことではない」という発言もあっただけに100%信用もできないし、任期についても、もしかしたらあと数ヶ月かもしれないので、近い将来、もっと上がる可能性(危険性?)もある(^^;)

 こういう世の中であるから、いわゆる「キュッパ」形式の価格表示をするのは、もうやめにしたほうがよいのではないだろうか。



 私なら、「この高性能機器が、たったの39,800円」という店よりも、「消費税込みで4万円!」という店の方を歓迎する。

 20万円相当の商品を買うときに、199,800円の価格表示があって実際には20万9790円を払うよりは、「消費税込み20万円!」の店で、すぱっと20万円を払うほうが気持ちいいし、得である(^^;)



 うんちくNo.278「円周率3騒動」でも書いたように、新しい学習指導要領になり小学校の算数の授業で「円周率を『3.14』ではなく『3.1』で扱う」ということが論議を巻き起こしているが、「3.14」を「3.1」として扱った場合の値引率(?)は「約1.27%」である。

 これは、1万円の商品を9,800円で売ったときの値引率よりも小さい。某首相ではないが「大したことではない」のである(^^;)

 円周率を「3.14」ではなく、「3」として扱うというなら大問題かもしれないが、この場合の値引率(?)は「約4.46%」であり、現在の消費税率「5%」よりも小さい。

 199,800円の商品を買ったつもりが、レジで209,790円を払わなければいけないというほうが大問題なのではないだろうか(^^;)



 「キュッパ」型の価格設定は消費税がなかった頃の名残りであり、今の世の中にはしっくりこない感じもあるので、それよりはむしろ「消費税込みで○万円」というすっきりしたかたちにしたほうがよいのではないかと思う次第である。
<03.02.02>


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