あると便利な小型ミキサー
小さなミキサーを買った。ミキサーといっても野菜ジュースを作ったりするものではなく、複数のマイクの音量等を調整するオーディオミキサーである(^^;)
オーディオ・テクニカ社の「AT−PMX5P」という製品で、定価が12,000円。ネット通販で買ったのだが送料・税込みでも11,000円ちょっとで手に入った。
下の写真がそれである。寸法はH48×W160×D133mmで、とても小さい。隣に並べたCDのケースと比較すれば小ささがおわかりだろう。

買うきっかけになったのは、勤務校の学習発表会である。
ステージ発表をする児童の声が聞き取りにくいというのでマイクの本数を増やすことにして、マイクは買ったのだが、体育館の放送アンプのマイク入力が2系統しかなく、準備したマイクを全部使うことができない。
マイクミキサーがあれば問題は解決するのだが、私の部屋にある多重録音用のミキサー(下画像左端)は前面も背面もコードでがんじがらめになった状態で、コードを外して持ち出すのは至難の技である(^^;)

インターネットで検索したら安価で手軽な上記製品が見つかったので、まずは私が購入してみて、具合がよかったら学校でも購入してもらおうということになったのである。
その後、学校の物置を探したら、昭和50年頃のマイクミキサーが埃にまみれて出てきた。動作チェックをしたらちゃんと使えるので、私のミキサーは不要になったのだが‥‥‥
さて、このミキサーであるが、買って大満足であった。
詳しい仕様等については、下の製品画像をクリックすると公式ページにつながるのでご覧いただきたい。

この製品は「ポータブルマルチミキサー」と呼ばれている。単なるマイクミキサー(学校の物置にあったもの)と違うのは、マイクだけでなく他のオーディオ機器等からのライン入力も扱えることである。
左から4つが入力用の4チャンネルだが、それぞれのチャンネルの一番上にある「TRIM」という小さなつまみで入力信号のゲインを調整できる。
ご存知の方も多いと思うが、オーディオ機器が出す信号の出力は器材によってかなり違う。ヘッドフォン端子では+10dB(デシベル)程度と大きいし、CDデッキ・MDデッキ等の一般のライン入出力では−10dB程度である。マイクは−50dB程度とかなり小さく、マイクの出力をアンプのライン入力につないでも音は出ない。マイクからの信号を増幅する部分が必要なのである。
ここでは単純にdBという表現を使ったが、実際にはそれぞれの出力(mW)に対する負荷(インピーダンスΩ)との関係などが複雑で、横並びでは比較できない面もあるのだが、説明を簡略するために全部dBで表している。
このミキサーでは、TRIMつまみを回すことで、入力ゲインを+10dBから−50dBまで調節できるので、マイクだけでなく他のオーディオ機器からのライン出力やヘッドフォン出力を扱えるのである。
また、マイクアンプがなくても、このミキサーをステレオ等のライン入力につなげば、ちゃんとマイクの音を鳴らすことができる。
上から2つ目の小さなつまみは「PAN」で、音源をステレオの左右の好きな位置に定位できるパンポットの機能がある。
マイク/ライン入力の4チャンネルの他に、右下に外部機器(CDプレーヤー・MDプレーヤー・ビデオデッキ等)用のライン入力端子も別に備えており、これは右上の「ラインレベル」つまみで独立して調整することができる。
つまり、このミキサーが1台あれば、マイク4本の音量を調整しながらCDの音を流すことができる。あるいはマイクの本数を2本に減らせば空いた2チャンネルに2台目のオーディオ機器を接続することも可能である。モノラル出力でもかまわないなら、マイク1本にオーディオ機器4台まで接続も可能だ。
これはなかなかのスグレモノである。
学習発表会で使うことを前提にして買ったのだが、他にもいろいろな使い方が考えられる。私が思いついたものを、以下、列挙してみよう。
1.マイクの本数を増やすときに使う
まずは、私がこのミキサーを買ったきっかけのように、マイク入力端子が少ないオーディオ機器で多数のマイクを使いたいというときに役に立つ。
マイク入力端子が2・3個しかない場合でも、このミキサーをライン入力端子に接続すれば、4本多くマイクを使うことができる。パネルディスカッションなどで、多くの人数にそれぞれマイクを設置したいなどというときには便利である。
ライン入力が1つしかなくて、それにCDなどをつないでいたという場合でも、それをこのミキサーのライン入力につなげばよいから問題はない。
ちょっと乱暴な使い方になってしまうが、ライン入力がない場合、あるいはあっても他の入力のためにふさがっている場合は、このミキサーの出力をマスターボリュームで下げて、オーディオ機器のマイク入力に突っ込んでしまうという方法もある。試してみたらあまり問題はなかった(お勧めできる方法ではないのだが‥‥)
2.ビデオ編集やラジオドラマ制作に使う
ハンディタイプのビデオカメラで撮ったものを、その生音も生かしながらBGMを加え、ナレーションも入れて別のビデオテープに仕上げるというような場合、ハンディビデオカメラからの画像出力を仕上げ用のビデオデッキにつなぎ、音声出力(生音が入ったもの)はこのミキサーにつなぐ。ミキサーにBGM用のCDなどを接続し、ナレーション用のマイクもつないで、これをミキシングして仕上げ用ビデオデッキの音声入力に入れれば立派なビデオ番組を仕上げることができる。
最近は自作のラジオ番組を作るなどという人も少なくなったが、昔は校内放送用のラジオ番組などもよく作ったものである。そういうときにも、BGMを加えながらマイクを何本も使えるこのミキサーは大活躍する。
3.複数の電子楽器等のミキシングに使う
MIDI音楽を作っていると、パートによって音源を変えたいことが出てくる。例えばストリングス系はローランドのMIDI音源で鳴らし、ドラムはヤマハの音にしたいということもある。
その場合、シーケンサーの設定で出力ポートを振り分ければ複数の音源を同時に鳴らすことが可能だが、その音をミックスして録音する場合など、こういったミキサーがあれば便利である。
あるいはライブ演奏等で複数のキーボードを演奏し、それを自分の手もとでコントロールしてPAに送るなどという場合にも、このミキサーを使うことができるだろう。
4.簡易ライブ演奏やミニFM局でのミキサーとして使う
前述の3つの使い方は、かなり当たり前の使い方だが(^^;)、私が面白そうだと思うのは、簡易ライブ演奏での活用である。
ちゃんとしたPA装置はないが、小さなホールなどで2・3人編制のバンドのコンサートをしたいなどというときには、このミキサーが活躍するだろう。
ミキサーの出力を普通のステレオ装置につなげば、ちょっとしたPAとして使える。ステレオがなくてもギターアンプなどにつないでもよい(若干、音は悪くなるが)
いちばん楽しそうなのが、電源のない野外でのミニコンサートである。
うんちく講座No.103「簡易&高品位な新時代PAが5千円で」で詳しく書いているのだが、このミキサーにFMトランスミッターをつなぎ、ラジカセで受信して拡声するとよい。
このミキサーは電池でも使えるので、トランスミッターもラジカセも全て電池で駆動するという「野外電池コンサート」を開くのである(^^;)
生ギター2本とボーカル2人を4本のマイクで拾う。エレキギターを加える場合には、電池駆動のギターアンプを使ってもらう。ミキサーにはまだラインの外部入力を加えられるので電池駆動のリズムボックスを鳴らすこともできる。
ちょっとしたフォークロック系やブルース系のライブ演奏なら、この電池システムでも熱く盛り上がるのではないだろうか。
生演奏をしない場合でも、CDやMD等で再生した曲を自分のディスクジョッキーで聴いてもらうというミニFM局で遊んでも楽しい。
自分の部屋から周囲20〜30mの人だけに聴いてもらうというのでもよいし、野外でDJごっこをやってもよいだろう。
いろいろ書いてみたが、このちっちゃなミキサーを手に入れたことで、様々な使い方の可能性が広がってくる。
1万円ちょっとで手に入る機器でもあるし、持っていても損はないと思う。
余談になるが、最初の写真のステレオシステムは、うちの客間に置いているもので、ビデオデッキ以外は、人から不要になったものをタダでもらったり、中古品流通店で1〜2千円程度で入手したものばかりで構築しており、総額5千円以下のシステムである。新製品時の価格だと10万円を超えるものなので、けっこう良い音を出してくれる(^^;)
<02.10.09>
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