簡易&高品位な新時代PAが5千円で



 PAというのは、「パブリック・アドレス」の略だが、簡単に言うと「拡声装置」のことである。ロック・コンサートなどで、ステージの両脇に要塞のように黒いスピーカーが立ち並んでいるのも「PA」というし、運動会などで使う拡声装置もまた「PA」である。

 ビッグなロック・グループが世界ツアーに使ったりするPAは何千万円もするが、ここで話題にするのは、ちょっとした屋外の集会などで使用する程度のPAのことである。

 学校のグランドでやる運動会の場合、これまでは、校舎の屋上などに取り付けられた「トランペット型スピーカー」で音を流していたが、最近は近くに民家があることも多く、あまり遠くまで音が響くようなスピーカーの使い方は騒音問題としてもとり上げられている。

 先日読んだ音響機器メーカーの広報誌によると、この頃では、そういった問題を避けるため、大出力のスピーカーを1・2個設置する方法ではなく、小さい出力のスピーカーを、会場全体にまんべんなく多数設置するという方法が主流になっているそうだ。

 とは言っても、グランドのいろんな場所に、スピーカーを配置するとなると、そのための地中配線やら、電源の確保など、実現するためには難しい問題も多い。

 そこで、私が考えたのが、たった5千円程度の費用で、それに近い拡声装置を準備できる方法である。

FMトランスミッター 

 そのための秘密兵器が、左の写真の「FMトランスミッター」という道具である。


 コードの先についたステレオ・ミニ・プラグをカセット・レコーダーなどのヘッドフォン・ジャックに差し込むと、その音をFM電波にして飛ばすという機器だ。ご覧の通りの小さなもので、街の電気店などで5千円以下で入手できる。(きちんとした電気店よりも、日曜大工の店などに置かれていることが多いようだ)


 こんな小さなものだが、障害物がない(直接見通せる)場所だと、20〜30m程度は、電波が届く。



簡易PAシステム これを利用したのが、右下の図にあるようなPAシステムである。


 メインのコンソールは、普通の運動会で使うようなアンプでもいいが、ここでは、全て電池で動かせるように、一般のCDラジカセを使うことにしよう。マイクミキシング機能があるほうがよい。(アナウンスもできるので)

 このCDラジカセで、アナウンス・カセットテープの演奏・CDの演奏ができる。

 そして、ヘッドフォン・ジャックに、FMトランスミッターをつなぐ。

 あとは、FM電波が届く範囲内に、ラジカセやFMラジオなど、電波を受信して音を出せる機器を、できるだけ多く配置する。電池で動くものなら、配線の必要もないし、好きな場所に置くことができる。

 これで、会場内のいろんな場所で、まんべんなく無理のない音で放送を聞くことが可能になる。しかも、それぞれの機器のスピーカーから出る音は、それほど大きくもないので、少し離れた場所には騒音の迷惑をかけることもない。

 また、大きな出力が必要ならば、受信する機器の数を増やして、スピーカーの数を増やせば、理論上は数百ワットの出力も可能である。

 キャンプ場などでやる場合には、カーラジオ(FMの)の音を使うことも可能である。室内のコンサートでも、来場のお客さんにラジカセ(電池式の)を持参してもらえば、主催者がスピーカーを1個も準備しないコンサートなどというのも可能になるし、全員がヘッドフォンラジオを使えば、無音のディスコ・パーティーだってできる。

 タイトルでは、「5千円で!」と書いたが、もちろん、使用するラジカセなどの値段は含まれてはいない。(電池代も別である)しかし、5千円程度のFMトランスミッターが一つあるだけで、あとはどこにでもあるラジカセ等を使えば、このような素晴らしい(?)PAシステムを組むことができるのだ。

 実は、このシステムには、もう一つの利点がある。それは停電が起きても大丈夫ということだ。運動会や、卒業式など、交流電源を使った音響システムを使っていると、停電になれば「万事休す」ということにもなりかねない。

 そんなとき、万一に備えて、電池を入れたラジカセ数台とFMトランスミッターを準備しておけば、突然の停電にもとりあえずは対応できる。



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