夏の終わりのホームドラマ
このドラマはフィクションであり、登場する人物は実在の人物とは一切関係がありません(^^;)
登場人物
ある母親
ある小学生
陰の声
お盆も過ぎ、帰省客も去って、やっと平常の生活に戻った土曜日の朝。
「夏休みの勉強もそろそろ仕上げなくちゃね。どのぐらいできているの?」
「ぼちぼちってところかな」
「ちょっと見せてごらんなさい」
「‥‥‥‥」
「何よ、これ! 全然できていないじゃない!」
「‥‥‥‥」
「あれほど、毎日きちんとやっておきなさいと言っていたのに、何やってたの!」
(言っただけできちんとできるなら、学校の先生は苦労しない‥‥)
「工作はできたの? 自由研究は? 読書感想文も宿題だったわよね」
「絵日記は3枚できてるよ‥‥」
「絵日記しかできてないってことじゃないの! どれだけ宿題があるの? 学校からのおたよりを持ってきなさい」
「まあ、こんなに宿題があるんじゃないの。夏休みはもう十日もないのよ。どうするつもりなの」
(どっちかというと親の怠慢だと思うが‥‥)
「あと土曜日曜は、今と来週しかないじゃない。お母さんは来週の日曜はでかける用事があるし‥‥。今日と明日は遊ばないでがんばるのよ!!」
(親の都合優先では子供もたまったもんじゃない)
夏休みの後半には、どこの家庭でもよくみられる光景だと思うが、こうなると親も子供も辛くなる。残された夏休みの期間と、これもまた残された宿題の量を考えると暗澹たる気持ちになる。
「暗澹たる気持ち」を子供にぶっつけて、「あれもできていない」「これもできていない」「これをやるには半日以上かかるのにどうするつもりなの」などと怒鳴りつけるのでは、子供の気持ちは親にも増して暗澹となってしまう(^^;)
中にはごていねいに、「ピアノの練習もやってないじゃない」などと、夏休みの宿題に関係のないことまで叱ってしまうこともあるようだし、「こんなふうにあなたがいい加減なのも、お父さんが放任しているからよ!」と夫婦げんかにまでなってしまうようでは、全く救いようがない‥‥(^^;)
賢い親なら、夏休みに計画的に学習させる手だてを講じているはずだから、お盆過ぎになってはじめて子供がちゃんとやっていないことを叱るというのは、親にも大きな責任がある。
とは言っても、現実としては、どこの親も忙しい。毎日の仕事に追われ、お盆にはいろいろな親戚づきあいもあるとなれば、子供に「ちゃんと計画的にやっておきなさいよ」と言うのがやっとで、毎日の見とどけをする余裕もないだろう。(本当は毎日少しの時間をさいて見てやれればよいのだが‥‥)
その結果、夏休みの終わりが近づいた頃に、上のような状態になってしまうことになるのだが、これも無理もないことだろう。もともと親自体、あまり計画性がないのだから、その子に計画性がないのも当然である。私などはその典型である(^^;) もし、親が放っておいても子供が計画的に学習を進めていたとしたら、それは子供に感謝したほうがよい。
さて、上の例のようになってしまったら、どう対応したらよいだろうか。
「こうなったらしょうがない。何もしないで出校することにしよう!」と開き直ってしまうのもひとつの手だが(^^;)まあ、ほとんどの場合、それはないだろう。
そうなると、残された短い期間のうちに宿題を仕上げなければならない。そのためには、子供が安定した精神状態で宿題に取り組めるようにしたほうがよい。
親に怒鳴られた不安定な気持ちで学習に取り組んでも効果がないということは、職場で上司に怒鳴られて、落ち込んだり、むっとしたりした経験がある方ならわかるはずだ(^^;)
さらに、子供は「このままでは夏休みの宿題を全部できないかもしれない‥‥」という不安な気持ちになっているのだから、「いったい、何をやってたのよ。そんな子のことはお母さんは知りませんよ!」などと言って、子供の精神状態をさらに悪化させ、自分自身(親)の存在をも子供の不安要因のひとつにしてような親は、愚の骨頂である。
まずは、子供の不安を取り除くことが第一である。
「けっこう大変なことになっているけど、大丈夫。お母さんが力になってやるから心配しなくてもいいよ。いっしょに頑張ろうね」と言ってあげよう。
かなり甘すぎるのだが、この期に及んではしかたがない(^^;) 子供にしてみれば頼れるのは親しかいないのである。計画性のある生活をさせるための指導は、また別の機会にやることにしよう。
次にやるのは、これからやらなければならないことを整理してやる作業である。
ヒステリー状態で怒鳴る親は、「あれもやっていない」「これもできていない」と言うのだが、いったいどれくらいの数の宿題が残っているのか正確には把握していないことも多い。
子供にしても、「なんだか、やることがたくさん残っているような気がする」というだけで、いくつ残っているのかわからないまま不安になっている。そういう不安があるものだから、読書感想文を書いていても、工作のことが気にかかるという状態で、ひとつの学習に集中できないでしまい、ますます進まなくなるという状態になってしまう。
そこで、残っている宿題を一覧表に書き出してみよう。
山のように残っていると思われた宿題も、整理してみれば5つか6つしかないのではないだろうか。
それを1つずつ、つぶしていけばいいのである。親も子供も休みの日などには、頑張れば3つぐらいは仕上げられるだろうから、落ち着いて考えてみれば、そんなに暗澹たる気持ちになる必要もない。
中には、植物の発育記録などのように、半月以上もかけないとまとめられないものを子供がやろうとしている場合もあるだろうが、どう考えても無理なようなものは、「これはやめましょう」ということにする。半日程度でできるものに変更するか、思い切ってやめることにする。これで子供の不安は大いに減少するはずである。
長い期間を費やすような研究が、絶対やらなければいけない宿題になっていたとしたら(この状態になったらどうせ親が手伝わなければいけないのだから)インターネットでデータをもらってくるなどの裏技を使う。(この文章を読んでくださる方は、それが可能だろう)植物の発育記録とか、夏休み中の天気調べなどというデータは入手できるはずだ。「うちの親はたいしたもんだ」と再評価されることにもなるかもしれない(^^;)
子供にとって夏休みは楽しいはずのものであるが、夏休み終了間際に宿題が原因で不安定な精神状態にさせてしまうのはよくないし、それへの対応がまずくて親に対する不信感や反発を抱かせても無意味なことである。
学級崩壊などを事例を見ると、担任が「あれもできていない」「お前たちはこれもだめ」と怒鳴るだけで、今やるべきことを具体的に明示していないことが原因になっていることも多いようだ。
親も、子供のダメなところをただ怒鳴るだけでなく、子供がやるべきことをすっきりと整理して、不要な不安を取り除き、生きる方向を示してやるような親になりたいものである。
と、偉そうなことを書いてはみたが、私自身は、うんちく講座No.300「夏休み現状イージー」に書いたように、夏休みの最後の数日で猛勉強をしたタイプであるし(^^;)、この文章の冒頭のホームドラマが妙に現実味があるのを、「もしかしてモデルがいるのでは‥‥」と思われたとしても否定できないので‥‥、偉そうなことは言えないのだが‥‥(^^;)
<02.08.18>
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