ハイパー安価デジカメ



 うんちく講座No.345「使えるぞ安価デジカメ」で、1万円以下のデジカメでも日常使用に支障のない性能を持つことや、学校で子供たちの体験学習などに使うには最適であることを書いたが、今回はその続編で、前回紹介したものより少しだけ価格の高い機種についてのうんちくである。



 前回は、アクシア(富士フィルム)の「ix−1」(店頭価格8〜9千円)という機種を紹介した。

 その縁でアクシアさんから新製品の「ix−20」をモニターさせてもらった。この製品、価格はオープン価格になっているが店頭での実売価格が1万2〜3千円程度ということなので、ix−1の約1.5倍の価格ということになる。

 実際にいろいろ使ってみて、価格以上に価値があると感じたので、レポートしてみたい。



 まずは外見であるが、下の写真の通りである。


上から順に

○携帯電話

○ix−1

○ix−20

○タバコ

である。見ればわかるか‥‥(^^;)

ix−20の正確なサイズは
幅105mm×高さ63mm×厚さ37mmで、
タバコの89mm×55mm×23mmより一回
り大きいといった程度である。



 前回のNo.345「使えるぞ安価デジカメ」では、ix−1の弱点として、「液晶ディスプレイがない」「ズーム機能がない」「ストロボがない」「画像の1枚ずつの消去ができない」などを上げた。

 それらの点について、ix−20では次のようになっている。



液晶ディスプレイ
 ix−20では、ix−1同様に液晶ディスプレイはない。液晶の価格が高いのでカメラに内蔵するとカメラ自体の価格が高くなってしまうから、液晶ディスプレイを装備しないのは安価デジカメではしかたのないことである。

 しかし、それを補う機能として、ビデオ出力端子がついた。付属のビデオ接続コードを使って、ビデオ入力端子のあるテレビなどに接続し、デジカメ内に記録された画像をモニターすることができる。いちいち接続するのはちょっとめんどうかもしれないが、この機能によって、液晶ディスプレイがないという欠点をカバーできるし、画面の大きなテレビなどにつなぐことによって、旅行先など、パソコンのない場所でも、撮影した画像を大人数で楽しむことができる。


ズーム機能
 ズーム機能はix−1同様、ついていない。これはix−1についても書いたように、大きく撮りたいものは近寄って撮るという、写真撮影の基本にしたがうということで我慢するしかないだろう(^^;) 画質が35万画素(ix−1は30万画素)だし、レンズの性能もそれほど良くないので、ズーム機能があったにしても、それほどきれいな画像は期待できない。安価デジカメではズームなしというのが基本だろう。


ストロボ
 ix−20にはストロボが内蔵された。暗い場所での撮影には便利である。しかし、ix−1では普通の照明がついた夜の室内での撮影などは問題がなかった(きちんと写る)ので、夜間の屋外撮影などの場合以外は、あまりストロボは必要がないかもしれない。(逆光の場合の補正には効果があるかもしれないが)

 実際に使ってみたが、カメラと被写体間の距離が適正な場合(2.5m程度)ではかなり効果があるが、それより近い場合などは被写体が真っ白になってしまってあまり使えなかった。ストロボ使用時の露出の補正機能はないようだ。これは被写体との距離が遠すぎる場合も同様である。

 赤目防止機能(撮影前にストロボが点滅する)などの機能もついているが、ストロボに関しては「うまく使えると効果的」という感じで、「ストロボがあるからオールマイティ」ということではないようだ。


1枚ずつの画像消去
 ix−1の弱点の1つが「撮影した画像を1枚ずつ消去できない」ということである(全部を消去することはできるが)

 ix−20になって、この点はかなり改善された。カメラ本体だけでは、記録されている任意の画像を1枚だけ消去することはできないが、直前に撮影した1枚だけを消去することはできる。つまり、「今、撮影した1枚は明らかに失敗撮影だった」という場合には、その画像を消去することができるのである。

 また、ビデオ出力をテレビなどにつないでモニターしている場合には、直前に撮影した画像だけでなく、何番目に撮影した画像であっても任意のものを1枚ずつ消去することができる。




 以上がix−1の弱点についてのix−20の対応であるが、価格が4千円程度高くなっただけで、かなり機能がアップされたことがわかる。

 さらにix−1の長所がix−20にどう引き継がれているかということや、ix−20になって新たに加えられた長所について見てみよう。



記録媒体
 ix−1では、撮影した画像を本体内のメモリに保存するという方法だった。これによって640×480ピクセルの画像なら26枚、320×240ピクセルの画像なら107枚を記録できた。

 ix−20では、記録媒体としてスマートメディアと使っている。本体同梱の8MBのスマートメディアには、640×480ピクセルで約133枚、320×240ピクセルで約530枚の画像が保存できる。ix−1と比較すると約5倍の記憶量である。スマートメディアは4MB〜64MBのものが使用できる。

 本体同梱の8MBのものでも、640×480ピクセルの標準画像で一般カメラの24枚撮りフィルム5本分以上を撮影できるので、数日間の旅行などでもじゅうぶん間に合うだけの記憶量である。64MBのスマートメディアを入れたなら長期の海外旅行などでもゆとりをもって撮影できる。

 ただ、本体内のメモリに記録するタイプのix−1が、シャッターを押した瞬間に記録される感じなのに対し、ix−20はシャッターを押してからスマートメディアに記録されるまでのタイムラグがある感じで、素速い連写などにはちょっとキツイ感じもある(スマートメディアを使っている他のデジカメも同様だが)またシャッターボタンを押してから実際に撮影されるまでちょっと間があるようなので、ボタンを押してから少しの間は、カメラを固定したほうが手ぶれが少ないようだ。


USB接続
 パソコンとの接続にUSBを使っているのはix−1と同様である。これはとても便利なのだが、Windowsの場合、95以前のバージョンのマシンだとUSBには対応していない。現時点で学校にあるパソコンはWindows95のものも多いので、このデジカメを学校で導入する場合はネックとなる。ただ、ix−20の場合はスマートメディアを使っているので、Windows95マシンでもスマートメディアリーダーがあれば使うことができる。

 近年中に学校のパソコンを新しい機種に更新する予定はあるが、その前に安価デジカメを子供たち用に購入しようという場合には、スマートメディアリーダーの活用も効果的だろう。


添付ソフトの充実
 ix−1でも添付ソフト(CDで供給)の充実ぶりは素晴らしく、それだけでも5千円以上の価値はあると感じたのだが、ix−20の添付ソフトは更にバージョンアップしており使い勝手なども向上している。特に新しく加えられた「ix−20ユーティリティ」は後述する動画撮影機能があるなど、なかなかのスグレモノである。


動画の撮影
 ix−1では、マイクロソフトのネットミーティングでインターネットのテレビ電話用のカメラとして使ったり、連写した画像を動画として編集するなどの機能があったが、カメラの画像(動画)をそのままディスプレイに表示する機能はなかった。

 ix−20では「ix−20ユーティリティ」というソフトを使って、カメラのレンズがとらえている画像をそのままパソコンのディスプレイに表示できるし、それを動画(AVI形式)で録画することができる。

 パソコンのディスプレイで自分の顔や周りの様子が動いて映るというのは、なかなか面白いものである。これが1万円ちょっとのデジカメで可能なのだから素晴らしい。その画像(動画)をそのまま保存もできる。その場合、デジカメ本体(スマートメディア)に保存するのではなく、パソコンのハードディスクに保存する方法になっているので、ハードディスクの空き容量に余裕があれば、かなりの長時間録画も可能である。

 できあがる動画ファイルはAVI動画フォーマットなので、そのままWindowsに標準添付されているメディアプレーヤー等で再生することができる。ただ、本格的なデジタルビデオカメラ等で撮影されたAVI動画とは細かいところでちょっと違っているのか、私が試してみた範囲では、デジタルビデオ用の編集ソフトなどで扱うことができなかったし、mpg形式に変換することもできなかった。自分で撮ったものを再生して見てみるだけと割り切って使うのが妥当なようだ。




 価格面では、ix−1の1.5倍程度になったix−20であるが、機能面ではそれ以上にグレードアップしたという感がある。

 では、デジタルカメラとして最も大事な要素である「画質」についてはどうだろうか。ix−1と比較してみよう。



 ix−1は30万画素である。ix−20はそれより少し画素数が増え35万画素になった。

 ix−1が想像以上にきれいな画像だったので、それより画素数が増えたix−20はかなり高画質になったのでは‥‥と期待したのだが、実際に使ってみたらそれほど大きな差はなかった。

 下の画像がその例である。


ix−20の画像(35万画素)




ix−1の画像(30万画素)




 どちらの画像も夜間に室内の照明(蛍光灯)のもとで、ストロボなしで撮影したものである。撮影時のカメラ位置は全く同じにしてある。

 この例だと、ix−20のほうが少し引き締まった画像に見えるが、これは撮影範囲の違いによるもののようだ。ix−1のほうが若干ズームアップ気味に撮れる。

 色はix−20のほうが濃い感じに撮影される。レンズやセンサーの違いによるようだ。



 この例ではix−20のほうがきれいに撮れるという感じがするが、撮影の状況によっては、ix−1に軍配が上がるということもあるようだ。

 具体例として、ix−1、ix−20、それに私が持っているオリンパスの「C−900」(130万画素)で撮影して比較した例を別のページに掲載してみた。ご覧いただきたい。

 撮影した対象によっては、ix−20の画像がちょっとどぎつかったり、色が滲んだりしている例もある。ただ、ix−20の画質が悪いというよりは、ix−1のほうが8千円程度という価格に似合わずとても画質がよいということができるだろう。



 手軽にメモ代わりに撮影するというのが、ix−20・ix−1のコンセプトであるから、画質に関してはどちらも必要十分といえる。それよりもix−1よりはるかに多くの機能を装備したix−20が1万3千円程度で手に入るということが驚異的だと思う。(もしこれで画質までix−1をはるかに超えるということになったら2万円以上のデジカメと同じになってしまう‥‥)

 画質はix−1と同程度、機能ははるかに上ということを納得すれば、1万3千円程度のix−20は、やはり「買い」であるし、子供たちに使わせるデジカメとしても、大人がいつもポケットに入れて使うデジカメとしても最適な1台であるといえよう。

 なお、ix−20の正規ホームページもご参照いただきたい。

<01.08.01>


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