ケータイ利用で伝え合う力アップ
うんちく講座のNo.286「伝え合う力を育てる一方法」にも書いたのだが、児童生徒が教室できちんと話し合うという能力がなかなか育っていない。
そこで、新しい学習指導要領の国語科の目標に「伝え合う力」が特筆されたということと、それを育てていくためには指導の工夫が必要だということは、No.286に書いたとおりだが、またひとつ、新しい工夫を思いついた(^^;)
No.286で書いたように、「子供たちの話し合う力が落ちている」というが、確かに教室型の「私は○○と考えます。それは○○だからです」といった、やや文語調の話し方は苦手でも、くだけた口語調のおしゃべりは得意な子が多いという事実がある。
また、「総合的な学習の時間」等に取り組んでみると、ふだん教室ではほとんど発言しないような子供が、校外学習でグループ別に見学をする場合など、見学依頼のお願いの電話をきちんとかけているような場面を多く見かける。
もしかすると、話す場を変えることで、「伝え合う力」がぐんと伸びるのでは‥‥と考えていた矢先、興味深い場面にでくわした。
ある小学校の公開授業研究会。社会科の学習で、子供たちのグループが調べてきたことをクイズや寸劇など、様々な手法で発表していた場面だった。
その中の1つのグループでは、お米屋さんとお客さんのやりとりを電話の会話風の寸劇で発表していた。
一昔前であれば、旧型の電話機のおもちゃを使ってやるところだが、さすがに今の時代を反映して、使っていたのは携帯電話のおもちゃ(本物かもしれない)であった(^^;)
「もしもし、○○屋さんですか。佐藤ですが、お米を60kg届けてほしいのですけど‥‥」
「はい、わかりました。今すぐお届けします。ところでどちらの佐藤さんですか。」
「はい、横浜の佐藤です。」
「えっ! 横浜ですか‥‥。わかりました。それでは、宅配便で、すぐにお送りします。」
子供たちの達者な会話を聞きながら、この「携帯電話を使う」方法は、かなり効果的かもしれないと考えた。

学級集団の前で、2人が話し合うというのは、いわゆる「対話」である。
教師と子供が一問一答形式で話すよりも、子供どうしが問い答えるという対話形式は、話し合いの深まりや広がりという面で効果がある。
しかし、大勢の前で、「私は○○と考えるのですが、あなたはどうですか?」といった対話をすることは、けっこう難しい。
それでは、もう少しくだけた言葉で対話してもよいということにしても、やはり照れが先に立つためか、うまく進まない。
そこで、携帯電話を小道具に使ってみるのである。
大勢の前で話すことには変わりがないのだが、この小道具ひとつで、意識が話す相手に集中する。目に見える世界も一変する(電話をしているときに見える世界のことを思い浮かべていただければ、簡単にご理解いただけるだろう)
話す言葉もややかたくなるが、電話を通すことで、話す子供たちにとっては、かたい言葉にも違和感がなくなる。
携帯電話のかたちをしたものを(あるいは電源の入っていない携帯電話を)耳にあてるだけでも、それなりの効果があるとは思うが、できれば、本当に耳元のスピーカーから相手の声が聞こえる装置だと理想的だ。
旧型の電話のおもちゃで、実際に話ができるものもあるが、旧型だと、送話器が口もとを覆うようなかたちになるので、あまりよくない。携帯電話型なら、送話器部分が口もとから離れるかたちになるので、無意識に声が大きくなるのだ。(携帯電話でひそひそ話をしている人をあまり見かけない。たいていは傍若無人に大声を出している‥‥)
できれば、携帯電話のかたちをしたトランシーバー(同時送受信ができるもの)か、コードがつながっている携帯電話(^^;)のおもちゃなどがいいだろう。
これを使って、対話型の話し合いをどんどん行わせる。2人だけの話し合いでは広がりがないというのであれば、「ちょっと待ってください。今、○○さんとかわります」と言って、携帯電話をどんどんまわしていく。
私の思いつきが正しければ、「伝え合う力」はどんどん向上するはずだ(^^;)
<00.10.19>
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