私の誕生日は、11月14日である。別にその日にプレゼントが欲しいので宣伝するわけではない。この「11月14日」をどう読むかというのが、今回の主な内容である。
私の場合、これを「じゅういちがつ じゅうよっか」と読む。ほかの人にも聞いてみたが、やはり同じように読むという人がほとんどであった。
「何を当たり前のことを言っているんだ」と思われるかもしれない。しかし、これは、よく考えると実に不思議なことなのだ(^^;)
カレンダーの日付を声に出して読んでいただきたい。
「1日」は「ついたち」、「2日」は「ふつか」と読むだろう。そうやって、日付が「10日」を過ぎたとき、面白いことが起きる。
文章ではわかりにくいので、表にしてみた。(表示の都合で縦型にしてある)
1日
ついたち
11日
じゅういちにち
21日
にじゅういちにち
2日
ふつか
12日
じゅうににち
22日
にじゅうににち
3日
みっか
13日
じゅうさんにち
23日
にじゅうさんにち
4日
よっか
14日
じゅうよっか
24日
にじゅうよっか
5日
いつか
15日
じゅうごにち
25日
にじゅうごにち
6日
むいか
16日
じゅうろくにち
26日
にじゅうろくにち
7日
なのか
17日
じゅうしちにち
27日
にじゅうしちにち
8日
ようか
18日
じゅうはちにち
28日
にじゅうはちにち
9日
ここのか
19日
じゅうくにち
29日
にじゅうくにち
10日
とおか
20日
はつか
30日
さんじゅうにち
もうお気づきだと思うが、「4日」のところだけが異質なのだ。
1日〜10日の部分は、「いちにち」というような呼び方をせず、「ついたち」というような呼び方をしている。この呼び方は、下の表のように、「ひい、ふう、みい‥」という数え方から来ているようだ。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
ひい
ふう
みい
よう
いつ
むう
なな
やあ
この
とお
ついたち
ふつか
みっか
よっか
いつか
むいか
なのか
ようか
ここのか
とおか
まあ、このことは、今回の本題ではないので、これぐらいにしておこう。
問題は、10日を過ぎてからである。
最初の表で書いたように、11日からは、「じゅういちにち」というように、「じゅう」に「いちにち」をつなげて読むのが普通である。これは20日代になっても同じだ。
この原則にしたがうならば、「14日」は「じゅうしにち」と読むはずである。数字を数えるときには「いち・に・さん・し・ご・ろく・しち・はち・く・じゅう」と読むのが普通だからだ。
ただ、あとで書くように、「4」と「7」だけは、「し」「しち」が聞き取りにくいということもあるので、数の後に単位等がつく場合は「よん」「なな」と読むという例外的な慣用があるので「よんにち」が普通であろう。
そうなると、「14日」は「じゅうよんにち」で良いと思われる(実際にそう言っている人もいる)
しかし、「14日」だけは、「じゅうよっか」と読まれている。不思議なことである‥‥。
ここで、早めに余談を‥‥‥(^^;)
4と7の読み方が例外的であることは、「うんちく講座」No.180「7と4の不思議」で触れている。詳しくはそちらをご参照いただきたいが、少々面倒なので、その内容を一部転載する。
まずは下の表が常用漢字表の音訓表である。
数字
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
音読み
イチ
イツ
ニ
サン
シ
ゴ
ロク
シチ
ハチ
キュウ
ク
ジュウ
ジッ
訓読み
ひとつ
ひと
ふたつ
ふた
みっつ
み
みつ
よっつ
よ
よん
いつつ
いつ
むっつ
む
むつ
むい
ななつ
なな
なの
やっつ
や
やつ
よう
ここのつ
ここの
とお
と
1から10までの数字を連続的に言う場合は
「イチ、ニ、サン、シ、ゴ、ロク、シチ、ハチ、キュウ、ジュウ」のように音読みでそろえることになる。
また、数を数える場合は
「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、ここのつ、とお」のように訓読みでそろえる。
したがって「イチ、ニ、サン」と音読みで始めた数え方の中に「よん」と「なな」という訓読みが入るのはおかしいということになる。
でも、現実には10から1に逆カウントするときには
「ジュウ、キュウ、ハチ、なな、ロク、ゴ、よん、サン、ニ、イチ」である。
こういう数え方をするには何か根拠があるに違いない。
そこで見つけたのが「NHK放送のことばハンドブック」(昭和62年)である。
それによると、「耳で聞いて紛らわしくないように、数字の読み方を次のように決める」とあり、下の表のようになっている。
数字
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
読み方
レイ
イチ
ニ
サン
ヨン
(シ)
ゴ
ロク
ナナ
(シチ)
ハチ
キュー
(ク)
ジュー
確かに「シ」「シチ」「ハチ」は聞き間違える可能性もある。そこで間違いを防ぐために「4」と「7」については訓読みを使うようにしたのだろう。
数を連続でカウントするときには、全体の流れがあるので音読みか訓読みに統一するのだろうが、数字を1つずつ読むときには、聞き間違いがないように、「シ」「シチ」を使わずに「よん」「なな」を使うようになったものらしい。
ということで、「14日」は「じゅうよんにち」でよさそうなものだが、実際には「じゅうよっか」という読み方をされている。
このことに気づいてから、不思議でしょうがなく、なぜそうなるのか、いろいろな方法で調べてみたのだが、いまだ、はっきりとした答を得るにいたっていない。
「うんちく講座」の普通のパターンであれば、私が疑問に思ったことを、いろいろ調べて、わかった結果を記述するのであるが、今回は結果を得ることができなかった。
そこで、疑問のままで、皆さんに投げかけて、どなたか正解をご存知の方がいらっしゃれば、聞いてみたいと思った次第である(^^;)
もちろん、正解がわかれば、このページの続きとして紹介させていただくつもりだ。
ここで文章を終えてもよいのだが、自分なりの考えも書かないと不十分だと思うので、書いてみたい。
「じゅうよんにち」という読み方もあったのではないだろうか。ただ、「じゅうよんにち」というのは、とても発音しにくい。
「じゅう(zyu)」という「y」を含む拗音に、「よん(yon)」という「y」を頭にして撥音「n」で終わる語が続き、さらに「にち(niti)」という「n」で始まる語が続くと、「zyuyonniti」という発音になるので、ろれつがまわらなくなってしまう(^^;)
そこで「よっか」という、発音にめりはりがあり、口にしやすいかたちにしたものではないだろうか。
「じゅう○にち」という言い方は、比較的新しいものだと思う。もともとは「とおか−あまり−むいか」などという言い方をしていたという。これだと「とおか−あまり」の後に「ついたち・ふつか・みっか・よっか‥‥」が付いたので、「14日」も「とおか−あまり−よっか」だったはずだ。
「じゅう○にち」という言い方が使われるようになったときに、発音しにくい「じゅうよんにち」だけは、もともとあった「とおか−あまり−よっか」の言い方から「よっか」を拝借して(^^;)、「じゅうよっか」という言い方にしたのでは‥‥と、私は自分勝手に考えてみたのだが、どうだろうか。
<00.05.09>