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つるんとしたデザインのラジカセ等が増えてきた。
表のデザインのことではなく、裏面のことである(^^;)
ラジカセが普及してきたのが昭和40年代中頃、今から約30年ほど前である。
当時のラジカセやラジオの背面(または側面)には、たくさんの入出力端子がついていた。
下の画像は、私が大学生の頃に愛用していたラジオの名機、ソニーのスカイセンサー「ICF-5500」だが、左右の側面にライン入出力端子等が数多くついており、ステレオアンプ等に接続したり、外部からの入力信号を内蔵のFMトランスミッターで飛ばすことができたり、エレクトリック・ギターのアンプとしても使えたりするなど、なかなかのスグレモノであった。
同時期に使っていたソニーのラジカセ(CF−1900)も、モノラルではあったが、入出力端子が充実していて、学生時代、下宿の粗末なプリメインアンプに接続して、カセットデッキ&チューナーがわりに大活躍していた。
本体自身がプリメインアンプにもなったし、外部機器にもなりえた。
こうやって、新しい機器を購入するごとに、使い方の可能性が広がり、同時に機器どうしを接続するためのコードの種類も増えていったわけである(このへんのことは、うんちくNo.148「コードマニア」でも書いている)
オーディオ機器等の接続や使いこなしの力を、これらのマシンが教えてくれたという気もする。
ところが、この頃、電気店に並ぶラジカセ類を見ると、外部との入出力端子類はぐっと少なくなっている。
極端なものだとヘッドフォン端子1つしかないというものもある。(けっこうそういう機種が多いようだ)
部屋の棚の上に置いたり、外に持ち出したりして、単体でラジカセとして使う分には、それでも何の問題もないのだが、他のアンプにつないで音を増幅しようとしたり、他の音響機器からの音をラジカセ側で録音しようとしたりするときは、かなり不便である。
ラジカセについているヘッドフォン端子やマイク端子につないでむりやりに接続すればできないこともないが、入出力の大きさやインピーダンスの関係で、望ましくない接続になってしまうことが多い。
最近のラジカセは、音源として、ラジオとカセットテープだけでなく、CDやMDを搭載しているので、使い方次第では、いろんな可能性があるのに、外部との入出力が不便なため、結局、単体での使用しかできないようになってしまう。
CDやMDでは、デジタル信号を使っているのだから、内部的にはデジタル回路で接続されているはずなのに、その信号が外に開放されていない。
デジタルの光信号入出力端子などがちゃんとついていれば、生録音したMDのデータを、別のMDレコーダーに全く音質を劣化させないままダビングできるのに、そういう使い方ができるMDラジカセというのは少ないようだ。
こういうデータを外に出したり、外から取り込んだりする端子をつけないというのには、2つ理由があるように思う。
1つはコストを安くするためだろう。
内部でCDとMDをダイレクトに結線するのは簡単だが、本体の外と接続するための端子をつけるとなると、部品的にも工程的にもコストが高くなる。
もう1つは、そういう端子を必要とするユーザーが少なくなったことではないだろうか。
最近ではラジカセに限らず、オーディオ・コンポ形式でも、コード類の接続が面倒なものは少なくなってきたようだ。一見、プリメインアンプ・カセットデッキ・CDプレーヤー・FMAMチューナーなどのユニットを積み重ねたコンポのように見えても、実は一体成形で、背面のコード接続は全くいらないというようなものもある。
私のように新旧各種の機器をつないで、ステレオ装置の後面は迷路のようにコードがつながっているというようなのは、あまり好まれない風潮になったのかもしれない。コンポを買ってきて電源コンセントに差し込むだけですぐに音楽が聴けるというようなのが、若い女の子あたりには面倒がなくてよいのだろう。
私のような「外部入出力端子が少ないものは使い物にならない」などというようなのは珍しいのだろうから、そんなごく一部のユーザーのために面倒な端子を準備するよりは、「簡単・便利」を求める多くのユーザーに合わせて、めったに使わない端子は無くしてしまうというのが正解なのかもしれない(^^;)
こういう傾向は、ラジカセに限ったことでもないようだ。
パソコンなどでも、本体とキーボードだけで、面倒な配線などがいらないオールインワン・タイプのものも人気が出てきているし、デスクトップ型でも、拡張ボード用のスロットは複数準備されているものの、既に標準添付のボード(モデムとかビデオボードとか)に使われていて、新たに拡張しようとしてもスロットの空きがないという機種も多い。
これも考えようによっては、買ったままで多様な機能が使えるということで、全くの初心者の方とか、あまりメカに強くない方には便利なのだろう。
面倒が少ないというのは、よいことではある。
私の場合も、洗濯機とか電気釜(どちらもほとんど操作することがないが)などでは、扱いが簡単なほうがありがたい。
洗濯をするときに、いちいち、洗うものの材質は毛糸だから、水位はこのくらい、水流の強さはこのくらいで、洗濯の時間は何分などと細かく設定しなければならないものよりも、洗濯槽に洗う物を放り込んで、スイッチをポンのほうが楽である。
しかし、本当に衣類を大事にしながら、きれいに洗いたいという人にとっては、細かいところまで設定できる洗濯機のほうが、ずっと良い洗濯機なのだろう(^^;)
このコンテンツを書こうと思ったきっかけになったのは、電子キーボード(楽器)について、いろいろ調べたことだった。
「Akira's コンサート」でも公開しているように、私は自作曲をMIDIデータにしたりしている。
メロディだけでは音楽にならないので、伴奏を作らなければならないのだが、これを、ギター・ベース・ピアノ・ドラムス等、一つ一つデータを打ち込んでいくのは、けっこう大変な作業である。
それで、シーケンサー等を使って、ある程度のバッキングパターンを自動的に作成したりもするのだが、これもなかなか思うようにいかない。自分の考えたように仕上げるには、かなりの部分でパターンを自作したり修正したりしなければならない。
学校の授業で使っている電子キーボード(Y社のエレクト○ン)には、かなりカッコイイ伴奏パターンが内蔵されている。
これを使っていて、この伴奏パターンを、そのまま自作曲のバッキングに使えないかと考えたわけである。
外部入出力端子を見てみると、ちゃんとMIDIのインとアウトがついている。
取り扱い説明書では、この伴奏パターンは外部に記憶できないということが書いてあったが、ものは試しということで、シーケンサーのMIDIインとエレク○ーンのMIDIアウトを接続し、シーケンサー側をリアルタイムのマルチトラック保存に設定して挑戦してみた。
結果は、だめであった。
通常のMIDIキーボードと同じように、実際に指で弾いた音はデータとして保存されるのだが、バッキングのデータは、エレ○トーン本体からは発音されるものの、シーケンサーにはデータとしては入らなかった。
バッキングを演奏させるためには、左手用キーボードで和音を押さえればよいのだが、シーケンサーには、演奏結果としてのバッキングのデータではなく、演奏させるために押した左手の音(ジャーンという和音)だけが保存されるのであった。
MIDI鍵盤としては、これが正しいのかもしれない。
しかし、実際の演奏では、MIDI音源にバッキングのためのデータが送られて、音源がそれによって発音しているのだから、内部的にはちゃんとバッキングのMIDIデータが流れているはずなのだ。
ただ、それをMIDIアウトにはデータとして流していないということになる。
これも、ある意味では、外部入出力端子がないラジカセに似ている。
無理をして、そのデータを取り出そうとするならば、できないこともないだろう。
本体を分解して、配線や基盤のどこかから信号を取り出せば、うまくするとデータが外に出てくるかもしれない。しかし、高価な楽器で、しかも自分の持ち物でないもので、そこまでやってしまう勇気はない(^^;)
余談であるが、Y社の知り合いに聞いたら、高級機種では、若干データの形式は異なるものの、バッキングパターンもデータとして取り出せるそうだが、学校あたりで使っている普及型では無理なのだそうだ。
ラジカセにしろ、パソコンにしろ、電子キーボードにしろ、内部にある貴重なデータを、一般ユーザーに開放するという機種は少ない。
まあ、私のようなごく一部の物好きの要求に応えて、高いコストをかけ、普段誰も使わないような入出力端子をずらりと並べ、結果的には一般ユーザーに「何が何だかわからなくて使いにくいマシン」と言われるよりは、すっきりしたデザインのユーザーフレンドリーマシン(^^;)でいたほうが無難なのだろう。
なかみが透けて見える「スケルトンタイプ」の機器が流行しているが、外からは見えていても、データ信号となると闇の中に隠されているような気がする。
またまた余談だが、学校の情報公開も進んできた。
これまで非公開であった「校内だけの児童生徒に関する指導データ」なども、要求があれば開示しなければならない。
外部との入出力端子が充実してきたことになるのだろうが、接続を誤ると故障の原因にもなりかねない。ここらへんは最近のラジカセと同じレベルのほうがいいのかな(^^;)
<00.01.02>
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