言葉にこだわった「うんちく」を書くことになると、傍らに辞書は欠かせない。
日本語の辞書(国語辞典)、漢和辞典、それに百科事典をいくつか準備しているのだが、内容によっては英語関係の辞書も使うことがある。
英和辞典と和英辞典を使っていたが、最近になって面白いものを手に入れた。
私にとって英語は母国語ではないので、それぞれの語がもつ意味がわからない。そこで英和辞典で調べることになるのだが、それだと英単語が日本語に訳されて書かれている。それはそれでよいのだが、もしかしたら単語本来の意味と少しニュアンスの違った訳され方をしているのかもしれない。本来の意味を理解するためには、英語を別の英語で言いかえている辞書、つまり英語圏の人が使っている辞書で調べないといけないのでは‥‥と考えた。
アメリカやイギリスで使われている辞書を手に入れればいいのだろうが、完全に英語で書かれているだけだと、英語力の弱い私にはまるでわからないかもしれない。英語の言葉について英語で言いかえて、さらに日本語の説明があるような辞書は‥‥と、書店で探してみたら、すぐに見つかった。
「英英辞典」という辞書である。私が望んだように、「英語→英語の対訳→日本語訳」という構成になっているので、正確には「英英和辞典」と呼ぶべきものかもしれない。
書店には数種類の英英辞典が並んでいたから、それほど珍しい種類の辞典ではないようだ。ページ数も収録されている単語のレベルも様々であったが、私は自分でいちばん使いやすそうな「高校生の英語」レベルのものを購入した。
価格は2千円台。初版の発行年を見たら、私が高校生になる前の頃だったので、けっこう昔から市販されているようだ。
開いて見ると、これがなかなか面白い。
例えば、こんな具合になっている。
donkey
1.a small animal like a horse;an ass
2.a silly or foolish person
1.ろば
2.とんま、ばか者
この例は名詞なので簡単な表現になっているが、他の言葉だとけっこう長い表現で説明しているものもある。
また、本物の(英語圏の人が使っている)英語の辞書だと、「have」だの「must」だのの常識的な基本語は、説明が省略されることも多いのだが、日本人用の英英辞典は基本単語ほどていねいに説明されており、英語を学習する上で理解に役立つように書かれている。
この辞典は実に飽きない。知らない単語を調べるときにも役にたつのだが、どちらかというと知っている単語を引いてみる方が面白い。
1つの単語を調べたあとに、「じゃあ、この単語はどう書かれているだろう?」ということで、次から次へと興味がわいてくる。
私が最近、手にしたものの中では、最も面白いオモチャの1つである(^^;)
「うんちく講座」のNo.173に「おきかえる力」という文章を書いたが、英語をより深く理解するには、英語で英語をおきかえる、この辞典はとても有効だと思う。
話は全くかわるのだが、あのナガシマさんの学生時代のエピソードに、こんな話があるそうだ。
ドイツ語の試験のときに、「辞書持ち込み可」と言われたけれど、ナガシマさんは、そんな辞書を持っていない。
友人が「独和辞典」を貸してくれて、ナガシマさんは、それを使ってなんとか試験を終えた。
友人にその辞典を返すときに、ナガシマさんは言ったそうだ。
「いやー!、これは便利な本ですね!! 英語にもこんな本があればいいのに‥‥」
ナガシマさんが英和辞典を知らなかったことが、笑い話になるくらい珍しいことのように、日本人用の英英辞典があることを、このトシまで知らなかった私も、お笑いなのかもしれないが‥‥‥(^^;)