九十九をツクモと呼ぶ訳



 おかげさまで、「うんちく講座」のコンテンツも、この文章で99個めになった。

 99を漢字で書いた「九十九」、これを「つくも」ということは、ご存じの方も多いと思うが、どうしてそう言うようになったのかについては、正直なところ知らなかった。

 少し大きな国語辞典を見ても、「『百』という文字から『一』の線を取り去ると『白』という字になるから」ということと、「老人の白髪が植物の『ツクモ』に似ているから」という記述はあるのだが、それなら、どうして「ツクモ」が「九十九」なのかという関係は判然としなかった。

フトイの絵まず、左の絵が「ツクモ」である。それについての説明を引用しよう。

ツクモ
 植物「フトイ(太藺)」の古名。浅水中にはえるやや大形の多年草。カヤツリグサ科。根茎は太く地中に横たわり、茎は高さ80〜150cmで丸く太く、緑色が濃くて粉白をおび、基部に葉の退化した長い少数の鱗片がつくのみで、節はない。ときに生け花に用いられる。日本全土に生じ、ムシロや敷物を編む目的で栽培もされている。


 どうやら、水辺でワサワサと絡み合って茂っている様子や、枯れてきて色が白っぽくなった様子が、老人の髪の毛の様子を連想させるということはわかってきた。

 しかし、なぜ、それが九十九と結びつくのかということははっきりしない。


 実は、ある短歌が、「九十九という数字」と、「植物名である『つくも』」を結びつけているカギであるらしい。


 それは、「伊勢物語」の63段にある、次の歌である。

「百年(ももとせ)に一年(ひととせ)たらぬつくも髪  我を恋ふらし面影に見ゆ」

 つまり、これは洒落になっているのである。「白い髪」を「つくも」の様子に例え、さらに「白」を「百」から「一」ひいた文字としている訳である。

 こう書いただけでは分かりにくいので、表にしてみる。


老人の髪の様子

白い

ぼうぼうに乱れている

白という字の形は
百という字の上の
棒(一)をとった
ようなかたちだ。

水辺に生い茂っている
植物の「つくも」のよ
うに見える。    


100-1=99だ。

九十九

つくも

「九十九」を「つくも」と呼ぶことにした


 「白髪」を「つくも髪」と洒落たこの歌が、「九十九」=「つくも」という読み方のルーツになっていたということである。

 なお、この件について調べている中で見つけたこちらのページも、私の調べたものと植物の「科」は違うが、ほとんど同じ内容であり、さらにもっといろいろな面白いことも書いてあったので、ご覧いただきたい。


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