数十光年の教育



 私は理科の先生ではないが、星を見るのが好きである。この文章を書いている今は冬の星座の見納めの時期だが、見上げる空には、オリオン座とシリウスが美しい。

 全天で一番の明るさを誇る恒星シリウスは、地球から8.7光年。とても近い星である。明るく見えるのも当然であろう。またオリオン座で大きく赤く見える一等星の変光星ペテルギウスは約500光年、現在の北極星は1,100光年の彼方にある。
(「現在の北極星」と書いたのは地球の歳差運動により、天の北極にあたる位置が移動するためで、今の北極星が真北に近い位置にあるのは、あと1,000年程度で、次々と北極星にあたる星はかわっていき、約12,000年後には、こと座のベガが北極星になるということである。)

 それはさておき、まちまちな時間に光った星の光が、地球から見るとひとつの光のハーモニーになっているのは、とても神秘的な感じがする。あくまでも自己中心的に考えると、数年前、数十年前、数百年前、数千年前、あるいは数万年前に光った星たちが時空を超えて、自分のために星座という美しい姿を見せてくれていると思うとロマンチックな気持ちになる。

 今、子供たちに教えたことが即効的に役立つ教育もあるだろう。あるいは、星の光のように数十年先になって、「ああ、あのとき先生が言っていたのは、このことだったんだ」とわかるような教育もあるかもしれない。

 今、自分が子供たちに伝えたいことがうまく伝わらないようであっても、あせることはない。それが自分の信念に基づいたものであり、正しいと信じてやっていることならば、いつか星の光のように、子供の(そのときは老人になっているかもしれないが)心に光を投げかけるはずだから。



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