ナイナイナイ、エゲツナイ
えー、このネタは、「千客万来ルーム」で、「どらごん部屋」の親方から質問があった件について、私が答えたものをもとに書きました。(あちらはすぐに消えてしまうので)親方、ありがとうございました。
「えげつない」と「えぐい」の関係について質問されたことがある。「似たような意味だと思うのだが、どうして片方には『ない』という否定のかたちがついているのに同じような意味なんだろう」という質問であった。
私が答えたことについての要点をあげておこう。
○「えぐい」も「えげつない」も標準語として存在し、ともに「無遠慮なさま」のこと。
○「えぐい」はもともとは喉がいらいらする様子。「いがらっぽい」等と同じ。
○「えげつない」は「えぐっ気ない」が変化したものという説がある。
ここで問題になるのが「えぐっ気ない」というときの「ない」という言葉である。これは「無い」という否定形にとらえられがちだが、実は全く反対なのである。
「せわしい」と「せわしない」、どちらも「忙しいさま」を表す似たような言葉である。ただ、「せわしい」が本当に「せわしい」場合を表す(ちょっと変な文ですが)のに対し、「せわしない」は、「せわしい感じが甚だしい、きぜわしい」という使い方をし、意味が強められている。
「ない」という言葉は、「見えない」「金がない」のような助動詞・形容詞のこともあるし、「あじけない」「なさけない」のように語の構成要素となっているものもあるが、ともに打ち消しの意味を持つものである。まあ、これらが一般的であろう。
ところが、「えげつない」「せわしない」の場合の「ない」は、打ち消しの意味ではなく、「甚だしい」という意味を持つ「ない」である。これらの仲間に「いとけない」「はしたない」などがある。(説明を参照いただきたい)
「いとけない」:「いとけ」は「幼少」ということ。「いとけない」は「幼少の度合いが甚だしい」ということ。
「はしたない」:「はした」は「不足」ということ。「はしたない」は「不足の度合いが甚だしい」ということ。
これと似たような「ない」には、「大層もない」「滅相もない」という「ない」もある。
つまり、「えげつない」とは「えぐい」から生じた「えぐっけ」が甚だしいということになるので、「えぐい」よりも「えげつない」の方が、より「無遠慮で不快なさま」が強いということになるようだ。
「ない」がつく言葉には、かなり注意しないと勘違いすることもあるのでご用心を。
(この内容については文化庁発行「言葉に関する問答集15」を参考にしました)
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