CRTディスプレイの弱点



 自分のホームページに使う画像を自作するとき、描画ソフトを使うのだが、線や角度のきちんとした画像にしたいときには、描画ソフトの中でも「花子」などの製図系(ベクトルデータ)ソフトを使っている。



 その際、図形の端点がグリッド(座標を表示する格子)にぴったり位置するように設定しているので、できあがった図形は歪みのない完璧なものであるはずなのだが、私のパソコンで見ると、どうも変なかたちに見えるのである。

 このページをご覧の方のパソコンでは、次の画像はどう見えるだろうか。








 自動車(のつもり)が5台並んでいる画像なのだが、5台とも同じ大きさに見えるだろうか。(同じ図形を5台続けて貼り付けているので、本当は全部同じはずである)

 私のパソコンでは、真ん中の自動車が左右端の自動車よりも幅が小さく見えるのである。また、よく見ると端の方の自動車ではライト(のつもり)の部分も左右対称ではなく、外側の方が若干幅広になっているし、バンパー(のつもり)の部分の台形も歪んで見える。








 パソコン画面上での見え方のチェックのために、もう1つ画像を表示してみたが、私のパソコンではこの画像の白黒の四角形も、画面中央のものは幅が狭く、左右端にいくほど幅が広くなって表示される。(よく見ないとわからないほどの差ではあるが‥‥)



 「何を言っているのだろう。自分のパソコンでは何の歪みもなく中央も端も均一に見えるのに‥‥」と感じられた方は、液晶ディスプレイか、高価なCRTディスプレイを使ったパソコンでご覧になっているのではないだろうか。

 実は私が使っているパソコンは、自宅のものも職場のもの(自前で持ち込んでいる)も、CRTディスプレイを使っているのである。

 自宅のCRTディスプレイはかなり安価な17インチのもので、画面表面が球面になっている。職場のものは一応、S社のト○ニトロン管使用で平面なのだが、どちらでも同じように上に述べたような現象が見られる。画面の左右端にいくほどかたちの歪みが出るのは職場のパソコンのほうが顕著である。



 CRTとは、「Cathode Ray Tube」(陰極管)のことで、テレビに使われているブラウン管と同じで、電子ビームを発光体にあてて画像を表示する仕組みになっている。

 構造上、画面の周辺部にいくほど歪みが出るのは避けられない。それを修正するための機能も工夫されているし、手動の調整もできるが完璧に歪みを除去するのは難しいようだ。

 平面CRTディスプレイもあるが、これは球面ディスプレイの端部分が引っ込んだ感じになるのを見た目の上で修正しているだけで、表示された画像の形が歪んでしまうことまでは完全に修正はできないようだ。(構造から考えれば画面を平面にするほど歪みは大きくなることになる)

 新型のCRTディスプレイは、この歪みを修正するために発光体のピッチを変化させる等の工夫をしているので、ほとんど問題はなくなってきているようだが、その性能を完全に発揮させるには使用者が細かに調整を行わなければならないようだ。安価なCRTディスプレイや古いCRTディスプレイは歪みを我慢しなければいけないようである。



 その点、液晶ディスプレイの場合は、発色する液晶が画面上に等間隔に並んでいるので、上の例のような画面の歪みは全くないことになる。

 CADのようにきちんとした製図を行わなければならない場合などは、液晶ディスプレイのほうが向いているということになるだろう。



 もっとも、CRTディスプレイにも長所は多い。

 液晶ディスプレイと比較した場合、「画面の反応の速さ」「発色の鮮やかさ」などでは、CRTディスプレイのほうに軍配が上がる。

 また価格の安さの面でも液晶ディスプレイの比ではない。17インチ、19インチ、21インチなどの大型ディスプレイが必要な場合、液晶ディスプレイで準備しようとすると多大な出費になるが、CRTディスプレイなら格安で手に入る。



 「画面の歪みがない」「場所をとらない」などのメリットを考えれば、液晶ディスプレイを選択すべきかと思うし、画面の歪みというデメリットを無視してもCRTディスプレイの長所の方が大事という場合はCRTディスプレイを選択すればよいだろう。

 CADの作業などもする工場に勤める知り合いと話す機会があったが、製図作業をする際にはCRTディスプレイの歪みはあまり気にしないそうである。寸法の表示線が出ているので、それがぴったりしていれば見た目の上の若干の歪みは関係ないのだそうだ。(けっこう高価なCRTディスプレイを使っているようだが)

 彼の話ではむしろ芸術関係のデザイナーなどのほうが、かたちの歪みには敏感なのではないかという。見た感じの構図を気にする職種だと構図が歪んで見えるのは具合が悪いのかもしれない。ただ、デザイナーとなると色のバランスにも気をつかうだろうから、発色のよいCRTディスプレイの長所も捨てがたいだろう‥‥。

 パソコンでデザインしたものを製品化するという工業デザイナーの場合は発色も重要な要素になるだろうが、作った作品をインターネット上で公開するのが主な目的という場合は、液晶ディスプレイ使用者の割合が急激に増えている現在、作る側も液晶ディスプレイで確認しながら作業するほうがベターかもしれない。
<03.01.01>


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