自転車に乗れない子供(あるいは大人も)が、数時間の練習で(数日かかることもあるが)楽に乗れるようになるやり方の話である。
この方法は、テレビの裏技番組などでも紹介されているし、新聞・雑誌等の印刷物にも載っている。またインターネット上でもかなり採り上げられているので、既にご存知の方も多いだろうが、私自身、自分の子供を練習させるときにこの方法で大成功したので、自分のサイトでもネタにさせていただく。私の文章を見て初めてこの方法を知り、しかもやってみたら効果があったという例がひとつでもあれば幸いである。
昔の練習法
私が子供の頃、自転車の練習法というと、大人が自転車後方の荷台のあたりを手で持ち、子供の自転車が倒れないように支えて一緒に走るというのが一般的であったように思う。
私の場合、親が仕事で忙しかったので、近所のお兄さんが荷台支持係をやってくれた。(これも普通の風景だったと思う。よい時代だった)
しかし、この方法では乗れるようになるまでかなり時間がかかった。その間に何度も転んで痛い思いをした。「自転車乗りは転びながら身体で覚えないとだめ」などと暴論を吐く人もいるが(^^;)できることなら痛くない方法で乗り方を身につけたい。
近頃では親が子供につきあえる時間が更に少なくなり、めんどうを見てくれる年長の青少年もいない状況なので、親としては、短時間で、しかも親が疲れずに、子供が自転車に乗れるようになってくれる方法があればありがたいということになる。
自転車乗りの2つの要素
自転車に乗れるということは、次の2つの要素を同時に満たさないといけないのだそうだ。
A.転ばないようにハンドル等でバランスをとる操作
B.ペダルをこいで、前進する操作
前述した「昔の練習法」では、Aのバランスをとる操作の部分を、荷台を持って支持する人間が代行し、Bのペダルこぎ操作を先に身につけさせようとしているわけだが、じっくり考えてみると、ペダルこぎよりも先にバランスを身につけさせるほうが合理的である。
ペダルを外して練習
そこで考えられたのが、ペダルを外して地面を足で蹴り、そのスピードでサドルにまたがった人間がバランスをとって進むことを最初に覚えさせるという練習法である。
その昔、最初の自転車が作られた頃は、ペダルはなく、サドルにまたがって足で蹴って進むというのが自転車の原型だったそうだから、そのスタイルに戻るわけである。
ペダルがついている自転車でも、この方法ができないわけではないが、どうしても回転するペダルが足に当たりじゃまになる。そこでペダルのネジを緩め、自転車からペダルを外してしまうわけである。
この方法だと、後から自転車が転ばないように支持するという働きは不要である。子供がひとりで練習することが可能だ。しかも比較的簡単にバランス感覚を身につけることができる。
足で蹴って、蹴った足を地面につけないようにしながら、ある程度の距離を進むことができれば、バランス感覚の習得はOKである。あとは、ペダルを付け直して前進することを習得すれば大丈夫である。この段階で若干時間がかかることもあるが、たいていは短時間でこれもクリアするようだ。
練習上の留意点
基本的には、上記のような方法で誰でも簡単に自転車に乗れるようになるのだが、更に次のような点に留意すれば万全である。
- 最初にブレーキのかけ方を
- 安全のためにも、練習の最初には、ブレーキをかけて停止する方法を教えて、完全に身につけさせる。
- サドルの高さ調節
- きちんと両足が地面を蹴ることができるように、両足のかかとが同時に地面につく(サドルをまたいだ状態でちゃんと立っていられる)高さにサドルを調節する。(通常、自転車に乗る場合は両足のつま先が地面につく高さなので、それより低くする)
- ハンドルは軽く操作する
- ハンドルを持つ手に力を入れすぎて固定するようだとバランスがとりにくい。あまりまっすぐにしようとせず、かえって小刻みに動かすような感じにさせると、早くバランスがとれるようになる。
- 視点は遠くに
- 子供は近くの地面を見がちだが、これだとバランスをくずしやすい。10m以上先の遠くを見るようにするとよい。
- ペダルのネジのはずし方
- 子供の練習に直接関係することではないが、ペダルのネジを緩めて外すときに、左のペダルはネジが逆ネジになっているので注意する必要がある。
この方法を知って、我が家の娘に練習をさせてみたら、練習2日目でバランスをとれるようになり、ペダルを付けたらその日のうちにペダルをこいで前進もできるようになった。
この練習の間に親がやったことといえば、ペダルを外してやったこととペダルを付けてやったことだけである。あとは見ていて、ときおり声をかけてやるだけでよい(^^;)
昔の練習につきものであった「汗だくになって荷台を支えて一緒に走る」という作業は全く不要であった。
足で地面を蹴って進むだけだと、小さい子の場合、推進力が不足気味なので、少し勾配のある地面でやったほうがいいという意見もあるが、私がやった例では平坦路でも問題はなかった。勾配のある坂を使うと、下り坂はよいが、上り坂では親が自転車を持って登ってやらなければいけないので、かえって平坦路のほうがよいような気もする。
また、この方法で自転車の乗り方を身につけた我が子は、サドルに座ってバランスをとるという感覚から入ったためか、しばらくの間、サドルから腰を浮かせてペダルをこぐという「立ちこぎ」ができなかった。立ちこぎができない子は、自転車に乗ったときに少しふらつく傾向があるように思える。上記の練習法の最終段階で「立ちこぎ」までできるように練習させれば万全であろう。
小学校などの交通安全教室で「自転車の安全な乗り方」を指導する際、自転車に乗れない児童は見学せざるを得ないなどということもある。自転車が乗れるようになるという指導は家庭にまかせるというのが一般的で、学校の交通安全教室で「乗れない児童を乗れるようにする」ところまではめんどうみきれないということもあるのだが、そんなときに学校で数台、ペダルを外した自転車を準備することができれば、その時間のうちに「自転車に乗れない児童が自分だけで練習して乗れるようになった」ということもあるかもしれない。
<02.06.24>