紙だのみ
この「うんちく講座」は、基本的には私が不思議だと思って調べたこととか、初めて知ったことなどについて書いているので、もしかしたら読んでくださる皆さんには既知のことも多いかもしれない。今回の内容も、「それって常識でしょ」という方もおられるだろうが、私にとっては新しいネタなのでご勘弁いただきたい‥‥(^^;)
パソコンで作った文書や画像を印刷するとき、私はあまり紙にこだわらなかった。
パソコンを使い始めた頃(昭和60年秋)には、プリンタといってもドットインパクトプリンタだったので、どんな紙に印刷しても印字結果にそれほどの違いはなかった。値段の安い「わら半紙」のほうがインクの滲み具合もよくて見やすかったりするので、それを使っていた時期もある(^^;)
インクジェットプリンタを使うようになっても、まだその頃の安価インクジェットプリンタの性能は良くなかったので、冴えない印字結果であっても「まあこんなもんか」とあきらめていた。
学校にパソコンが入るようになって、30〜50万円ぐらいのカラーレーザープリンタを使うことができるようになり、雑誌のグラビアページのような印刷結果に驚いたのだが、「価格が高いから当然だろう」という感じ方で、2・3万円程度の個人用インクジェットプリンタでは高価なカラーレーザープリンタのような印刷結果は望めないものだと思いこんでいたのである。
ところが、それが私の思い違いであることに、最近気がついた。
パソコンショップに「写真グレード・インクジェットプリンタ用・フォト光沢紙」などという用紙が数年前から並ぶようになったのだが、私はそれを買ったことがなかった。
どうしても画質のよい印刷をしたい場合には、職場のカラーレーザープリンタを使えばよいと思っていたし、そういうフォト光沢紙を使っても、そんなにすごい印刷結果になると思っていなかったからである。
そこで、自分のカラーインクジェットプリンタでは、安価なコピー用紙(PPC用紙)を使って印刷していた。職場のカラーレーザープリンタを使う場合もコピー用紙が推奨用紙だったので、私がパソコンで印刷をするときに使っていたのは、常にコピー用紙であった。
そんな私であったが、パソコンショップにプリンタ用のインクを買いに行ったとき、隣の棚に並んでいた「フォト光沢紙」を1袋買ってみた。20枚入りで800円。1枚あたり40円と、それほど安くはないが、1袋でタバコ3箱程度の価格なので、ものはためしという感じで買ってみた。
で、印刷してみた結果、あまりの高品質な印刷に驚いた。
まずは印刷結果だが、下の画像でご確認いただきたい。

左がフォト光沢紙、右がコピー用紙に印刷したものである。
もとの画像ファイルは共通である。それぞれの用紙に印刷し、それをイメージスキャナで取り込んでみたのだが、これでも印刷結果の違いは明白である。
肉眼で見ると、フォト光沢紙のほうは写真屋さんに頼んだ写真のようにピカピカ感があるし、コピー用紙のほうはインクが紙にしみこんで、沈んでくすんだような感じがあるので、もっと差が大きい。
A4判1枚の価格が40円程度というと高い感じもあるが、一般の写真と比較したらかなり経済的だ。
A4判いっぱいの大きさに印刷すれば、一般の写真だと6つ切り程度になる。これだと写真屋さんに頼めば500円前後だろう。普通のLサイズならA4判の用紙1枚に4枚印刷できる。これで1枚分が10円になるから写真屋さんに頼むより経済的である。
近頃では写真屋さんでもデジカメの画像をプリントしてくれるようになったが、そうやって印刷したものと比較してみても、自分の安価プリンタでフォト光沢紙に印刷したものに遜色はなかった。
印刷結果に大きな差がないとなれば、デジカメで撮ってすぐに印刷ができ、経済的でもあるというフォト光沢紙に軍配を上げるしかないだろう。
1台8千円程度の安価デジカメでも試してみたが、これも満足のいく結果だった。大きく引き伸ばせばドットの荒れも目につくが、普通のLサイズ程度に印刷すると一般の光学(銀塩)写真と見分けがつかない程度であった。
ただし、フォト光沢紙等を使うときには、ちょっと気をつけなければいけないこともある。
それは、プリンタの用紙設定である。
プリンタのメーカーによって差があるようだが、たいていはプリンタのプロパティ等で用紙の種類を選べるようになっているはずだ。
この部分を「フォト光沢紙」等にしなければいけない。私の場合、最初、それに気づかずに「普通紙」の設定のまま印刷してしまった。すると黒の部分が用紙の表面に浮いたような状態で汚い仕上がりになった。
全てのインクジェットプリンタでこうなることではないようだが、メーカーによっては黒系のインクに顔料を使っているものがあり、普通紙の設定だと用紙の光沢層からうまくしみこまないようだ。
そこで用紙の設定を「フォト光沢紙」に変えたら印刷結果は改善した。購入した用紙とプリンタの用紙設定の組み合わせについては、いろいろ変更して試してみて、ベストのものを見つけるのがいいだろう。
ちょっと余談になるが、印刷結果が美しいカラーレーザープリンタに、このフォト光沢紙を使ってみたら、もっと素晴らしい結果になるのでは‥‥と期待してはいけない。カラーレーザープリンタは普通紙で最高の印刷結果になるように作られてあり、インクジェットプリンタ用の用紙を使うといろいろ不具合が起きる。
フォト光沢紙だけでなく、インクジェットプリンタ用の「スーパーファイン」などの用紙を使ってもいけない。これらのような表面が加工された用紙を使うと、印刷結果が良くないだけでなく、場合によっては故障の原因にもなるので、注意が必要である。
プリンタにあった用紙を選ぶのが大事なことは、実は数年前にも体験していた。
年賀ハガキの印刷のときだった。
普通の年賀ハガキ用紙にカラーインクジェットプリンタで印刷してみたら、インクの吸い込みが悪くて、完全に乾く前に印刷面にさわると汚れてしまうだけでなく、インクの発色も悪かった。
そこで、「インクジェットプリンタ用年賀ハガキ」というのを使ってみたら、きれいに印刷できて、すぐに乾いた。
印刷の結果が悪いのを、「安物プリンタだからしかたないか‥‥」とあきらめてしまいがちな私であったが、用途にあった用紙を選べば、2万円前後の安価なインクジェットプリンタでも高価なカラーレーザープリンタに負けない印刷結果を得ることができるということがわかった。
この頃はプリンタの性能・インクの品質・用紙の質も大いに向上してきている。
最近になってパソコンを使い始めた人は、そのことを素直に受け止めて活用しているようだが、私のように半端に古くからパソコンにさわっていると、「安いプリンタは、この程度のものだろう‥‥」と、試しもしないであきらめてしまう傾向があるようだ。
プリンタを新しいものに交換しなくても、新しい用紙を使うだけで劇的に印刷結果が改善することもあるようだ。これからもパソコンショップなどで「話題の新用紙!」などというのを見つけたら、買って試してみることにしよう。
<01.08.17>
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