踏切カメライタパチくん
鉄道関係の人と話す機会があり、面白い話を聞いた。
踏切で自動車が立ち往生したときなど、列車との衝突を避けるために非常ボタンが設置されているが、非常時でもないのにこのボタンを押すいたずらが多いという。
いたずらであっても、列車は停止するので、鉄道会社は迷惑を被る。その際、それなりの賠償をしてもらうために、いたずらの犯人を特定する手だてをとらなくてはならない。
そのために非常ボタンの近くにカメラを設置してあるのだそうだ。
その話に好奇心をくすぐられた私は、さっそく踏切を見に行った(^^;)
そこで撮影したのが、下の画像である。

この画像の中の説明にも書いたように、この(隠し)カメラの商品名は「イタパチくん」という。いたずらしたところをパチッと撮るから「イタパチくん」なのであろう。
話によれば岩手県の業者が開発したのだという。
非常ボタンと連動して、ボタンを押した人の顔を3枚続きで連写するらしい。
実際に撮った写真を見る機会もあったが、普通の光学カメラで撮った写真のようにはっきりときれいに撮影されていた。これならボタンにいたずらした人間の顔をちゃんと見ることができそうだ。
全ての踏切に設置されているわけではないそうだが、子供が通ったりすることの多い踏切にはたいてい設置されているのだそうだ。
イタパチくんではなく、ビデオカメラを設置しているところもあるそうだが、それだと価格が高くなるので、安価なイタパチくんを設置している踏切がほとんどなのだそうだ。
「安価なイタパチくん」と聞いて、不思議に思った。
非常ボタンと連動して、3枚も連写するカメラが、そんなに安いとは思えなかったからだ。
しかし、イタパチくんを間近に見て、私は「なるほど!」と納得した。まずは下の写真をご覧いただきたい(^^;)

これがイタパチくんのアップ画像である。金属製の箱の中にあるカメラをよく見ると‥‥‥
実は、コンビニなどで売られている「使い捨てカメラ」なのである。正式には「レンズ付きフィルム」という名称の、外側が紙製で、千円以下で買えるあのカメラである(^^;)
非常ボタンと連動して、3枚連写するというメカニックな部分にはお金がかかっているのであろうが、カメラ本体はオモチャ並みの価格で買える使い捨てカメラだということに、私はいたく感動した(^^;)
この頃の使い捨てカメラの性能は高いので、いたずら犯人の顔がわかる程度の写真なら問題なく撮影できる。
また、夜間には暗くて撮影ができないのでは‥‥とも考えたが、踏切の非常ボタンのあたりには明るい電灯がついているので、フラッシュなしでもちゃんと撮影できるようになっているのだ。
これなら1台数万円程度で設置できるだろうし、仮にいたずらがあって撮影が行われたあとでも新しいカメラへの交換が簡単で安上がりである。
鉄道会社にしてみれば、あまり高いお金をかけないで、非常ボタンへのいたずら対策ができるのだから、さっそく導入したことは想像に難くない。
全国的に、このイタパチくんを設置している踏切の数は膨大だろうから、使い捨てカメラを使ったイタパチくんを考案した業者のアイディアの勝利だと思う(^^;)
さて余談になるが‥‥
いたずらなどで列車を止めると、巨額な賠償金を払わなくてはならないという話をよく聞く。犯人が子供だった場合には保護者が責任を負わなくてはならないという話もある。
列車を止めたことにより、特急料金の払い戻し分を負担しなければならないので、何千万円もの賠償金を払うことになり、そこの家は破産したなどという話も、まことしやかに語られている。
その真偽が知りたくて、インターネットで検索をしてみたが、鉄道会社などのホームページで、賠償金の具体的な金額を明示しているようなものを見つけることはできなかった。
個人等のホームページでは、若干の具体的事例なども見つけたが、中には「列車が急ブレーキをかけ約1分停車した事例で、ブレーキの摩耗分と急圧力装置作動分として1万5千円」などというものもあった。
反対に1億円以上の賠償金を払わなければならないなどという文章もあったが、これはちょっと怪しい‥‥(^^;)
特急などを1時間も停車させた場合には数百万円の賠償という話もあったが、ここらへんは本当なのかもしれない。そういう計算からすれば1千万円ぐらいの賠償ということもありそうだが、悪質で被害の大きいものは別として、小さい子のいたずらで1〜2分程度の停車という場合には、その子と保護者への厳重注意ということで終わる例もあるようだ。子供のいたずらで親戚一同が破滅に追い込まれるというようなことはほとんどないらしい。
それでも、子供が踏切内に入っていたずらをすることは、本人にとっても危険であるし、列車が停止した場合には乗客等に大きな迷惑をかけることは事実である。
そういういたずらをさせないためには(イタパチくんのことは伏せたままで)、「非常ボタンを押した人の顔はちゃんとわかるような仕組みがあって、いたずらをした人からは何百万円もの賠償金がとられるのだよ」という程度の脅し(?)はしておいたほうがいいのかもしれない(^^;)
<01.07.03>
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