○○っ子



 「江戸っ子だってねぇ?」「神田の生まれよぉ!」おなじみ「石松代参・三十石船」の一節だが、ここでの「江戸っ子」という言葉は、いかにもかっこいい。



 ところが、この頃、全国津々浦々に「○○っ子」が増えてきたように思う。



 私の住む地域(前郷:まえごうという)ではそういう言い方がないので、あえて仮の例にするのだが、例えば「前郷っ子」という言い方である。



 こういう言い方を始めたのは学校のような気がする。

 一昔前までは、学芸会とか文化祭とか呼んでいた催しを、内容を改良して「○○フェスティバル」とか「○○まつり」というような催しに変えた学校が増えてきた。

 そのネーミングに「○○っ子」を使う例が多いのである。例えば「前郷っ子まつり」という具合だ。



 なんとなく親しみやすいし、かわいらしい感じもする。しかし、地元の人になじむかというと、そうでもない気がする。



 「江戸っ子」のように、もともと、その地域で定着している呼び方であれば問題はない。だが、地元の人も聞いたことのないような呼び方を、学校が勝手に作ってしまうのはどういうものだろうか。(地元出身でない先生が、命名しがちなようだ)



 私の住む地域を例にすれば、「前郷っ子」という呼び方は地域にはない。あえて探すならば「前郷しょ」という言い方ならある。「前郷の人」という意味の「前郷衆」から来ているのだと思う。方言の発音では「めんごしょ」と言う。

 これなら古くから地域に住む人でもなじむ言い方なので、あえて地域の言葉を使うとするならば「めんごしょまつり」だろう。(かなりかっこわるいが‥‥)



 学校で(勝手に)つける例では、もっと短くしてしまう言い方もある。前郷を例にすれば「前っ子」などと言ってしまうのだ(^^;) これはかなり乱暴だ。(前郷小学校を「前小」などとは言うのだが)



 本来の地名が3文字で、それに上下とか東西南北などがついた場合など、おかしな切り方をする場合もある。

 例えば「浜木綿」(はまゆう)町があって、その東半分を「東浜木綿地区」、西半分を「西浜木綿地区」と呼び、それぞれの地区にある学校名が「東浜木綿小学校」「西浜木綿小学校」だとする。

 こういう場合、略称を「東浜小」「西浜小」とするのも妙なハナシだし、「東浜っ子」「西浜っ子」と呼ぶのも変だ。さらに「東っ子」「西っ子」と呼んでしまったら、地元の人でも(地元の人だからこそ)さっぱりわからない。



 ところが実際には、そういう例をかなり見かける。



 ふるさと学習等が重視され、これからいっそう、地域に根ざした学習活動を行っていかなければならないのだが、地域では実際に使われていないような「○○っ子」などというネーミングを学校が勝手に作ってしまうのは、どういうものかな‥‥と思う。本当に地域の言葉を使うならば「○○っぽ」とか「○○もん」みたいになるのが正しいだろう(^^;)



 ただ、「○○もんフェスティバル」や「○○っぽ祭り」では、かなりかっこわるいし、子供たちも嫌がるだろう。(「○○っ子」も子供たちが喜ぶとは思えないが‥‥)

 あえて地域の名称を入れるならば「○○キッズ」あたりがスマートかもしれない。

<01.02.07>


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