盛り上がらない学校ホームページ
先日の県教頭会研究大会でのこと。私は学校ホームページに関する分科会に参加した。
「ホームページ作成担当教員の負担軽減」とか「児童生徒のプライバシー保護」などの話題で盛り上がっていたのだが、「まだ自分の学校ではホームページを開いていないのですが」と前置きししたある教頭先生の発言で、私は目が覚めたような気がした。(もちろん居眠りしていたわけではない‥‥)
「学校ホームページを作って、効果があることを教えてください」
インターネットをあまりやったことがないという先生の発言だったが、その分科会の参加者の大半が、私のようにインターネットにどっぷりつかっている人たちだっただけに、ほとんど素人ともいえるその先生の発言は新鮮だった。
ご本人は意識していなかっただろうが、実に鋭い指摘である(^^;)
学校ホームページを作ったり更新したりするには時間がかかる。私のように授業の持ち時間が少なければ勤務時間内に作業ができるが(といっても、本来の職務もあるから、そんなに暇なわけでもない)ホームページ作成担当者が一般教諭の場合には夜遅くまで作業をすることになるだろう。
その負担を軽減するために、担当者を増やして、仕事を手分けして行うようにするとか、ワープロで作った「学校だより」や「月行事表」などのデータを流用するとかいう工夫を話し合っていたわけだが、そんなにまで苦労をして作っているホームページも、「それがどんな役に立つのですか」と質問されると、「こんなに利点がありますよ!」と自信を持って言えないのが、正直なところである。
学校ホームページにアクセスしてくれる人が少ないのだ。
アクセスカウンタがついている学校ホームページをご覧いただけばわかるだろうが、1日に数十のアクセスがある学校ホームページは非常に少ない。私の現任校のようにブラウザを起動すれば自動的に自校のホームページにアクセスされるという裏技を使っているところ(授業でインターネットを使えば、それだけでパソコン台数分、アクセスカウンタがアップするという凄い学校も知っているが)でもなければ、開設後2・3年たってもアクセスカウンタが1万に達していない学校ホームページが大半である。
学校ホームページを見てくれるのは、大別すると次のようになるだろう。
「児童生徒の保護者」「他校の教職員や児童生徒」「地域の人や故郷を離れた卒業生」の3つである。
この中で、繰り返しアクセスしてくれるのは保護者だけであろう。他校や卒業生のアクセスは、よほど特別な事情でもないかぎり一過性と考えてもよいだろう。
したがって、保護者からのアクセスが増えればよいのだが、なかなかそれが増えないのには、2つの理由があると思う。
一つめは、インターネットを使っている人の絶対数が少ないということだ。
平成12年8月の調査では、全国のインターネット普及率が30%を超えたとのことだが、わが県は普及率が全国最下位だそうで、11%程度とか。これを数字どおりにあてはめると自宅から学校ホームページを見ることができるのは、保護者の約1割程度ということになる。現任校のPTA世帯数が300弱だからアクセス可能世帯は約30になる。(将来はもっと増えるだろうが)
さらに、この30世帯が、学校ホームページに常時アクセスしてくれるかというと、そうでもないだろう。一度も見たことがないという人もいるだろうし、1回見てそれきりという人もいるだろう。あまりかわりばえのしない学校ホームページを毎日みるよりも、インターネット上には、もっと面白くて有益なサイトが満載だからである(^^;)
そうなると、学校ホームページを定期的に見てくれる人は、数人程度になるのではないだろうか。
二つめは、学校ホームページを見ても、そんなにメリットがないということだ。
学校ホームページで紹介しているような情報は、保護者に対してはほとんど印刷物(学校だより等)で紹介している。そうでないと、インターネット接続できる保護者だけが有利になってしまうことになるので、片寄った情報提供ではまずいのだ。
そうなると、保護者にしてみれば印刷物で学校からの情報を見るほうがずっと便利である。わざわざパソコンの電源を入れ、接続料金を払って、印刷物と同じ内容のホームページを見るよりは、夕食時にビール片手に読むことができる印刷物のほうがずっとよい。
こういう理由で、保護者からのアクセスが増えないのだと考える。
だとすれば、誰も見てくれないような学校ホームページを作成したり更新したりするのに、多くの労力を費やすというのは、無駄な感じもする。
「学校ホームページを作って、どんな効果があるのですか?」と質問されても、「こんなに効果がありますよ!」と、自信を持って言えないのは、そういうわけである(^^;)
しかし、学校ホームページを作ることは、まるっきり無駄だというわけではない。
こうやったら効果があるということについて、私の考えを以下に述べてみたい。
まず、保護者に配布する「学校だより」等の印刷物と、学校ホームページの機能を明確に分けて考えたほうがよいと思う。
上でも述べたように、「学校だより」等は、印刷物で配布したほうが効果がある。(気軽に見てもらえるという点で)
それに、保護者(PTA)という閉じられた集団に配布するものであるから、児童生徒の実名を公開しても問題がない。ところがインターネット上に情報を公開するには、相手が不特定多数のため、プライバシー保護等の問題を考えると、実名記載を避けたり、顔がはっきり見えない写真画像を使ったりという配慮が必要となる。
保護者にしてみれば、誰が何をしたかもわからないような「学校だより」をインターネット上で見ても、全く面白くないだろう。
学校ホームページ作成者の負担を軽減するために、印刷物として配布された「学校だより」や「月行事表」などをHTML文書に変換して転用している学校もあるが、私には無駄なような気がする。その際に実名公開を避けるために、「佐々木彰君」のような部分を「S・A君」のように書き換えたりする作業を行っている例もあるが(中には無神経に実名を出している例もあるけれど)これも無駄な労力のようにも思える。
その学校に関係する人以外には、「学校だより」や「月行事表」を必要としている人はほとんどいないはずだからだ。
中には(かなり工夫した方法だとは思うが)それらの印刷物をそのまま画像表示したり、アクロバットリーダーで表示したりしているところもあるが、これまで述べたように「学校だより」等をホームページ上で公開する必要はないという考えから、あまり意味がないようにも思える。特にアクロバットリーダー方式は、パソコンやブラウザに関する知識がかなりないと読み込み・表示用のプラグインをインストールできないので、学校ホームページの内容のほとんどをアクロバットリーダー方式化するのは、逆に一般家庭からのアクセスを減らすことにもなりかねない。
それではどうしたらよいのだろうか。
私は、「学校だより」等の印刷物との連動を、積極的にとりいれていくのがよいと思う。
紙に印刷して配布するものでは、カラー画像や、音声、動画などの表現ができない。
それを補完するのに最適なのが学校ホームページではないだろうか。
例えば、「学校だより」で、「文化祭が開かれました」という記事を載せたとする。その中には写真も1〜2枚掲載されるかもしれないが、校内で大量印刷する場合、カラー印刷は無理だし、印刷機の性能もそれほどよくないので、画質の良くない白黒画像が掲載されるだけである。
その「学校だより」に、「学校ホームページでは、たくさんのカラー画像や、合唱祭の音声、パレードの動画等を公開しています。ご覧になりたい方は、http://‥‥にアクセスしてください」という一文を載せてみたらどうだろう。
印刷物の「学校だより」が配られるたびに、学校ホームページへのアクセスが急増すると思う。
(音声や動画のファイルは大きくなりがちなので、サイズを小さくする工夫は必要だが‥‥。しかし、今後、インターネット環境の改善等で、問題は解決されてくるはずだ)
現在のところ、「学校だより」等を作成する人(校長・教頭が多いだろう)と、ホームページ作成者は別になっていることが多いようで、「学校だより」担当者はインターネットに疎い場合が多いようだ。
そのためか、「学校だより」の中で学校ホームページをアピールすることが少ないように思えるが、ホームページ担当者との連携を密にして、相互に連動するような仕組みに改善することが、学校ホームページを盛り上げていくことになると思う。
前述したように、現在はまだインターネットに接続できる保護者は少ないが、いつも「学校だより」に「この行事の詳しい様子はホームページでご覧ください」という記事があれば、「インターネットができるようになったら必ず学校ホームページを見てみよう」という気になる人も多いだろうし、それがインターネット普及率を高めることにもなるかもしれない。
学校ホームページの改善についての私の考えは、以上のようなものだが、これまでも行われていたことでも、次のようなものは効果的だと思う。
まず、1つは、いわゆる「学校要覧」のような内容である。
学校所在地はどこで、児童生徒数は何人で、どんな歴史があって、学校教育目標はどうなっているかといったことである。
他校などにE・メールを送る際に、自校のホームページにこのようなことが載っていれば、名刺代わりに役立つ。実際、私なども他校からのメールを受け取ったときに、「どんな学校なんだろう」ということを知るには、これが役立っている。
この「学校紹介」ページは、一度作ってしまえば、そんなに更新するものでもないので、学校ホームページを開設する際には力を入れて作っても無駄ではないと思う。
それから、児童生徒の学習成果を発表したりするのも効果的である。
その内容を、いちいち担任教師がホームページ化するのは大変なので、あまり勧められないが、児童生徒が自分でページを作るのは良い活動だと思う。(小学校高学年あたりからは比較的簡単にできるはずだ)
学習成果の発表ページがあるからといって、アクセス数が増えるということはないが、「学習したことをまとめてホームページで公開しよう」という学習目標を立てて学習を進めていくのは有効である。「総合的な学習の時間」などでは、大いに活用できるだろう。要は学習の発表の場として学校ホームページを利用するということである。
これからは、いっそうインターネット普及率が高まるだろうが、「インターネット利用者が増えれば、学校ホームページへのアクセスが増えるだろう」という考え方は安易だと思う。
今、見ても、そんなに興味をひかれないようなホームページは、インターネット利用者が増えたからといって人気ホームページになるということはあり得ないのだ。
「インターネットで全世界に情報発信!」などと意気込むよりも、自校のホームページを見てくれる範囲をしっかりと見きわめて、それに対応したかたちで改善を図っていくことが必要である。
さて、私も自校のホームページを作っていて、自分の個人のものと2つのホームページを管理しているのだが、正直言って、個人ページを作るほうがずっと楽しい。
学校ホームページにもいろいろな可能性があることは確かなのだが、そこでは、自分の考え等を自由に述べることはできない。あくまでも学校全体としての考え方を述べるしかないのである。しかも、その考え方に対して他方面から苦情が来ないように配慮するなどとなると、どうしても万人向けな内容になってしまう。(学校ホームページは本来そういうものなのかもしれないが‥‥)
それよりは、教師各個人が、自由に発言できる個人ホームページを作っていくほうが、インターネット全体から見れば大きな財産になると思う。(極端に偏向した意見を書かない限りは、そういった個人ホームページに、いちいち目くじらを立てないという風潮も必要なのだが‥‥)
<00.10.10>
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