総合的学習に役立つ本
本当は「総合的な学習の時間」というのだが、ちょっと長いので、ここでは「総合的学習」という略称を使わせてもらう。
総合的学習は、平成14年度から完全実施されることになっていて、既に平成12年度から各校で移行措置としての取り組みが行われている。
この学習自体は、各校が創意工夫を生かして行うことになっており、具体的な内容は示されていないので、全く自由な発想で行うことができるのだが、私たち教師が授業の構想を立てるときに役立つよう、たくさんの参考書籍が発行されている。
総合的学習についての基本的な考え方を示したものから、先進校等の授業実践を例示したものなど、各種の書籍があるが、なかなか自分の学校での指導にぴったりくるものは見つけられないでいた。(私が探す努力を怠っているためだとは思うが)
ところが、「これは使えるぞ!」という本を見つけた。
農文協(社団法人農山漁村文化協会)が発行している「食農教育」という雑誌である。
99年夏から発行された季刊誌で、2000年秋現在で10号になるが、2001年からは隔月刊になるそうだ。
「『総合的な学習の時間』の総合誌」とサブタイトルがついているのだが、「食農生活」というタイトルといい、表紙のイメージといい、いかにも地味である。おそらく書店に並んでいただけでは、手にとって見る人は少ないような感じもする(^^;)

しかし、ページを開いてみるとびっくりする。印刷はやはり白黒で地味だが、中身は実に面白い。私に言わせてもらえば「全ページが面白い」のである。
ちなみに、2000年夏号の内容の一部をあげてみる。
○楽しい炭焼き教室「木酢液の採取法」
○麦飯をおいしく食べる生活の知恵「冷や汁」
○古代米・土器野焼き・かまど炊飯から「弥生人の食生活調べ」へ
○忍者道具をつくる
○鶏を解体する 等々

どれも、「これならやってみたい」と思うような面白い活動である。しかも、分かりやすい図解入りで、初めて挑戦する場合でもうまく行きそうだ。
タイトルが「食農教育」となっているように、生物を育てたり、食べたりする活動についての記事が多い。
総合的学習で食べ物づくりや栽培活動に取り組む例も多いが、教師が作った活動計画だと概念的なものになりがちで、「子供の何を育てるか」は明確だが、「具体的にどんな活動をするか」がはっきりしないこともある。
「食農教育」の記事は、一応、教育現場での実践を考えてはいるのだが、基本的に農業・林業・水産業の専門的な知識をベースにしているので、子供たちを活動させる上で役に立つものが多い。
学校教育の一環として行う総合的学習だから、教師が教育的配慮のもとに計画を立てるのは当然だが、なにしろ、これまでにやったことのない活動をやることも多い。
教師に全く知識のない状態で取り組まなくてはならないこともある。教師も子供も試行錯誤しながらやってみるというのも価値があるが、約1年をかけて行う学習活動が、基本的な知識不足のために結果的に失敗に終わるというのではしょうがない。
1年間活動することで、自主的に課題に取り組む態度は育成できるだろうから、教師側の目標は一応達成できたということになるかもしれないが、「○○を作ろう」といった子供側の活動目標が達成できないのはまずいと思う。最初から失敗させることを目標として取り組ませる教師はいないだろうから、結果が失敗に終わるということは、教師側の計画ミスである。
子供の活動を成功させるための、方法や技能等に関する知識を得るためには、行う活動についての専門家が書いた書籍が役に立つ。
例えば「ぼくたちのわんぱくログハウスを建てよう」などという活動なら、木材や建築についての知識が必要になる。
「餅は餅屋」という言葉もあるが、学校の教科学習の指導以外にはあまり知識がない私たち教師が、生半可な知識で活動に取り組んでも成功の確率は低い。きちんとした知識を入手するためには、きちんとした参考書籍を読まなければいけないと思う。
この「食農教育」は、そういう点で、実に役立つ知識が満載である。
総合的学習の指導計画を立てるには、細かい知識だけでなく、教育としての広い視野が必要だという考え方もあるだろう。
それは当然のことである。しかし、広い視野だけで、きちんとした知識がないのでは、どうしようもない。
子供たちが意欲的に取り組むような具体的な活動を先に設定して、それに教育的な意味を裏付けしていくという方法もあるだろう。総合的学習の場合は、むしろそういったアプローチのほうが良いようにも思える。
こうやって書いてくると、「食農教育」が、具体的な技法だけの切り売りの本のような感じを与えるかもしれないが、そんなことはない。
文部省関係者や大学教授などの教育専門家が、総合的学習について理論的に述べている記事も多く、この本だけでも、総合的学習のあり方について十分に学べる内容である。
ずいぶん、「食農教育」の宣伝をしているような感じがするかも知れないが、私が特別にリベートをもらったりしたわけではない(^^;)
ただ、これまでに見た総合的学習についての書籍が、理論はしっかり書かれているものの、実践面で少し具体性に欠けている感じがしたのに対し、「食農教育」は、具体的な活動についての記事がすぐれていたものだから、ついつい多くの先生たちに知ってもらいたくて紹介している次第である。
「食農教育」に限ったことではないのだが、これから私たち教師が総合的学習について研修をする際には、いわゆる昔からの教育畑の出版社の本だけではなく、農業とか建築界とかの各専門分野の本も大いに参考になるということを述べたかったのである(^^;)
ちなみに、農文協のメイン雑誌「現代農業」、これも見た目は地味だが、かなり面白い。表紙を開くといきなり「ドブロクの作り方」などがあったりして、びっくりする(もちろん合法的なものだが‥‥)栽培関係についての知識を得るのなら、むしろこっちのほうが役に立つかもしれない。
多種多様な専門分野の本について紹介できればよいのだが、ちょっとその余裕もなかったので(^^;)、インターネットで見ることができる、「食農教育」関係のホームページのご紹介だけで、ご勘弁いただきたい‥‥。(それぞれリンクし合っているので、どこからでも入れるが)
○「食農教育」のホームページ
○「農文協」のホームページ
○「ルーラルネット」のホームページ
<00.10.02>
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