教頭になっていちばんつまらないのは子供たちから名前を呼ばれなくなったことである。それまでは「あきら先生」と呼ばれることが多かったのだが、今はいつも「教頭先生!」である。
ところが1年生あたりだと「教頭」という言葉を文字では理解していない。ただ聞いたとおりに「きょうとう」と覚えているだけである。そこで似たようなひびきの「校長」と混同して「こうちょう先生!」と呼ぶ1年生もいる。いちいち違いを説明するのも面倒なので「ハイ!」と返事をしておくが、ちょっと面はゆい。
なかには「きょう」と「とう」の順序を入れ替えてしまって「とうきょう先生」と呼ぶ子も数人いる。これにも一応は返事をしておくが、なんだか恥ずかしい。生まれてこのかたずっと田舎に住んでいる私が「東京先生」でもあるまい。
(「頭狂先生」だったらうなづけるが・・・)
ただ「きょうと先生」と呼ぶ子はいない。東京も京都も似たようなものだが、言葉のひびきがまるで違うからであろう。