ヘッド・クリーニング



 私のカー・オーディオは、いまだにカセット・テープがメインである。



 ほんとうは自分で自由に曲目を編集できるMDを使いたいのだが、車に搭載するMDデッキは、まだ高価で手が届きにくい。

 CDも音質はよいのだが、どうも私の感覚では、市販のCDディスクを車の中に持ち込んで操作することには抵抗がある。なんだか、もったいないのである。

 パソコンにCD−Rが普及してきたこの頃なら、複製したCDを再生することもできるし、その気になれば、自分で好きな曲ばかりを集めたCDを作ることもできないわけではないが、これはかなりめんどうだ。



 ということで、音質的にはかなり落ちるし、曲の頭出し等の操作はめんどうなのだが、手軽さを優先するということで、カセット・テープを使っているというわけである。

 音質的に落ちるとはいっても、走行中の車の中で聞くのだから、CDやMDと、そんなに大きな差があるわけでもない。

 この頃のカセット・テープは、だいぶ音質もよくなっているので、新車についてきたカセット・デッキで聞く場合には、けっこう良い音が楽しめる。



 ところが、車を買って1年以上もたつと、カセットの音が、かなり情けない状態になってくる。



 これは、主に、カセット・デッキの再生ヘッドの汚れによるためなのだが、この音質の低下にお気づきの方はいるだろうか。



 車検を一度とるぐらいの車(使用3年)で、カセットをしょっちゅう再生していて、しかも、なんのメンテナンスもしていない状態であれば、確実に再生音の質は落ちているはずである。



 原因は3つある。



 1つは、再生ヘッドに磁性粉等のゴミが付着するためである。

 これによって、音飛びが起きたり、高域の伸びがなくなったりする。



 2つめは、ピンチローラーやキャブスタン等の走行系部分にゴミ等の汚れがつき、これによってテープの走行速度に揺れが出てしまうためである。

 いわゆるワウ・フラッター特性が悪化して、音程が一定しないという音揺れが生じるのである。



 3つめは、再生ヘッドが帯磁してしまい、音質が劣化してしまうためである。



 これらの問題に対して、一般の(車載でない)カセット・デッキ等では、次のような手入れをするように勧めている(取り扱い説明書に記載されている)



 1つめと2つめの問題(ヘッドや走行系の汚れ)については、専用のクリーニング液を使って、綿棒で清掃することが必要である。

 カセット・デッキの取り扱い説明書によって、清掃の間隔は異なるが、一般的には10時間ごとに行うのがよいとされている。(機種によっては『できれば使用のたびに』と書かれているものもあった)

 クリーニング液はアルコールを使うこともあるが、ピンチローラーのゴム部分に使うと、ゴムがひび割れることもあるので、「ヘッド・クリーニング液」として市販されている非アルコール系の液が望ましい。





 3つめの問題(帯磁)については、市販のヘッド・イレーサー(消磁器)を使う。

 消磁を行う間隔も、取り扱い説明書によって差があるが、短いものでは10時間ごと、長いものでも50時間に1回程度は必要とされている。



 一般のカセット・デッキやラジカセでは、ヘッドや走行系が目に見えるようになっているものが多いので、綿棒を使った清掃も、比較的容易にできる。(最近のスタイル優先のラジカセなどでは、できないものもあるが)



 しかし、カーステレオのカセット・デッキでは、構造上、ヘッド等を綿棒で清掃するのはできないことが多い。

 そこで、便利なのが、カセット・テープと同じ形をしたヘッド・クリーナーや、ヘッド・イレーサーである。

 ヘッド・クリーナーには、専用のクリーニング液をしみこませて使う「湿式」のものと、液不要の「乾式」のものがあるが、使ってみた感じでは「湿式」のほうが効果があるようだ。





 一般のカセット・デッキ等を綿棒で清掃する場合には、かなり汚れている状態でもきれいにすることができるが、車載のカセット・デッキの場合、上記のヘッド・クリーナーでは、汚れきったヘッドを元通りにするのは難しいようだ。

 ちょうど、人間の歯に例えると歯垢と歯石の違いのようなものである。軽く汚れがついた状態は、歯垢に似ていて、軽くこすってもきれいにすることができるが、汚れがこびりついてしまった歯石のような状態では、綿棒でゴシゴシこすらないと汚れはとれない。

 カセット・テープ型のヘッド・クリーナーは、綿棒ほどの清掃効果はないので、一度、汚れがこびりついたヘッドを元通りにすることはできないようだ。



 車のカセット・デッキの場合は、手遅れになる前に、新車のうちから、こまめにクリーニングや消磁をしておくのがよさそうだ。

 ちょうど、歯槽膿漏にならないようにするには、子供のうちからきちんとした歯磨きが大切なのと似ている。



 「ほんとに、そんなに音質が悪くなるの?」と疑う方もいるかもしれない。

 しかし、私の場合、趣味でやっている多重録音(カセットを使った4チャンネル・マルチ・トラック・レコーダー)では、ヘッドの汚れが如実に音質に現れる。

 しばらくヘッド・クリーニングをやっていなかったレコーダーで録音すると、「おやっ?」と思うほど、音の鮮明さがなくなるし、音程の揺れも気になる。

 普通のカセット・デッキの2倍の速度でテープを走行させているので、極端な変化が感じられるのだとは思うが、普通のデッキでも、これほど極端ではないにしろ、音質の劣化が生じているはずである。

 ただ、その変化が徐々に起きていることと、カーステレオの場合は、車の走行ノイズ等によって繊細な音がマスクされてしまうために気づかないだけである。



 カセット・テープによっては、テープのリーダー部分(先頭部分)にヘッド・クリーニング機能を持たせているものもあるので、こういうテープを使うことで、ある程度の効果は期待できるかもしれない。

 しかし、新品同様の音質を維持するためには、少なくても月に一度ぐらいは、専用のヘッド・クリーナーやヘッド・イレーサーを使うことをお勧めしたい。


(かく言う私は、ほとんど実行していないのだが‥‥‥)
<00.03.29>



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