一度で聞けっての



 「人の振りみて我が振りなおせ」などとよくいわれるが、自分の悪い癖はわからなくても他人の癖はよく目につく。

 そんな中で、自分も気をつけなくては‥‥と思ったことを書いてみる。



 相手の話を一度で聞き取れずに、もう一度言わせる人がいる。

 さすが1対1で話をしているときにはそういうことが少ないが、自分が何かしているときに他の人から話しかけられたりすると、最初に話しかけられたときに、その内容を聞き取れないというのがそうである。



 例えば次のようなことがある(あくまでも例であって、私の同僚や家族にそういう人がいるということではない)



(先生が職員室でテストの採点をしている)

子供「先生、教室の掃除が終わりました」

先生「えっ?」

子供「‥‥、教室の掃除が終わりました」



(居間で母親がテレビを見ている)

子供「お母さん、今日、給食でハンバーグが出たんだよ」

母親「ん?」

子供「給食でハンバーグが出たの!」



 どちらの場合も、そばで聞いていてもあまり感じがよくないが、聞いている人間が不愉快なぐらいだから、実際に二度も同じことを言わせられた人はもっと不快に違いない。



 ところが、こうやって聞き返す人は、そのことに気づいていないことが多い。自分が1回目に聞き取れなかったのだから、もう一度聞き返すことが当然だと思っている。

 そういう考え方をしているためか、このタイプの人は、しょっちゅう聞き返しをする。その結果、話しかけた人からは「どうもあの人は感じが悪い人だなぁ」という印象を持たれる。(このことにも気づいていないことが多いようだ)



 聞き返しをするだけでも不快感を持たれるのに、さらにその聞き返しのときに使う言葉によって、もっと悪印象を増大させているということもあるようだ(^^;)

 「すみませんが聞き逃してしまいましたので、申し訳ございませんがもう一度おっしゃっていただけないでしょうか」などと言うのなら(英語なら、I beg your pardon.だろうが)悪い印象はないが、そんな気のきいた物言いをする人はいない(そう言えるくらいなら、とっくに聞き返しをしなくなっている)

 「え?」とか「はい?」程度なら、まだいいだろう。これが「は?」とか「ん?」になるとだいぶ感じが悪くなる。さらに「なに?」とか「なにぃ?」になると最悪で、話しかけた人は言い直しをしたくなくなってしまう。

 秋田の方言では「あ?」というものあるが、これも最悪の部類に入るように思う。



 このタイプの人は、この癖のために自分が悪印象を持たれていることに気づいていない。(意図的にやっているとしたらイヤなヤツである)



 そういう人間関係の機微にも鈍感なのであろうが、要は周囲の人の動きに無頓着なのである。

 誰かが自分に近づいて来たら、「自分に話しかけてくるのではないだろうか」とか、誰かが声を出したら「自分に話しかけているのではないだろうか」と、周囲に気を配っていれば避けられることである。



 これが戦場ならば、人の気配はもちろんのこと、風で揺れる草木にも注意を払うはずである。

 周囲のことに気をつかわずに自分のことにだけ集中できるというのは、ある意味では幸せなことだし、他の人を信頼しきっているというふうに考えられないこともないのだが、職場や子育てでの会話というのは、考えようによっては戦場のようなものである。

 無防備に自分のことにだけ集中しているというのは、やはり神経が緩んでいるような気がする。



 もちろん、いつも周囲に神経をはりめぐらしてばかりいては気持ちの休まる暇がないし、身体ももたないのだが、あたりに気をつかって疲れた気持ちを休めるのには、もっと別の方法もあるように思える。

 と言って、パチンコ台やパソコンに向かい、自分だけの世界に浸る私であった‥‥(^^;)

<00.02.14>


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