今年(2000年)から、成人の日と体育の日が、それぞれ各月の第2日曜日に変更された。いわゆる「ハッピーマンデー法」である。
成人の日の変更によって、全国的には小中学校の冬休みが長くなったという傾向があるようだが、私の県のように冬休みが1月13日までのところでは、これまで1月15日が祝日だと、なんとなく気分的に楽だったので、今度はちょっと損をしたような気になってしまう。(冬休み等の長期休業の期日は、各都道府県の「市町村立小中学校管理規則準則」によって決まるので、地域によって異なる)
当然のことながら、こういった祝日は法律によって制定されている。
略称では「祝日法」と呼ばれる「国民の祝日に関する法律」がそれである。そんなに長い法律でもないので、一度目を通しておくのもよいだろう。
よく読んでみると、「ほう!」と思うようなこともあるので面白い。(「ほう!」と「法」のダジャレではない ^^;)
昭和23(1948)年7月23日制定・即日施行のこの法律は、その後6回の改正が加えられ、現在にいたっている。
第1条は次のようになっている。
自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。
これは、「なるほど‥‥」という感じで読めばよいだろう(^^;)
第2条は、「『国民の祝日』を次のように定める」として、それぞれの祝日の期日と意義を述べている。これを下のように一覧表にしてみた。
祝日名
期 日
祝日の説明
備 考
元日
1月1日
年のはじめを祝う。
成人の日
1月の第2月曜日
おとなになったことを自覚し、
みずから生き抜こうとする青年
を祝いはげます。
もとは1月15日
新期日は2000年に
施行
建国記念の日
政令で定める日
(2月11日)
建国をしのび、国を愛する心を
養う。
1966(昭和41)年
6月25日制定・施行
春分の日
(注1)
春分日
自然をたたえ、生物をいつくし
む。
みどりの日
4月29日
自然に親しむとともにその恩恵
に感謝し、豊かな心をはぐくむ。
もとは天皇誕生日
1989(平成元)年
2月17日制定・施行
憲法記念日
5月3日
日本国憲法の施行を記念し、国
の成長を期する。
こどもの日
5月5日
こどもの人格を重んじ、こども
の幸福をはかるとともに、母に
感謝する。
海の日
7月20日
海の恩恵に感謝するとともに、
海洋国日本の繁栄を願う。
1995(平成7)年3月
8日制定。翌年1月
1日施行
敬老の日
9月15日
多年にわたり社会につくしてき
た老人を敬愛し、長寿を祝う。
1966(昭和41)年
6月25日制定・施行
秋分の日
(注1)
秋分日
祖先をうやまい、なくなった人
々をしのぶ。
体育の日
10月の第2月曜日
スポーツにしたしみ、健康な心
身をつちかう。
1966(昭和41)年
6月25日制定・施行
新期日2000年施行
文化の日
11月3日
自由と平和を愛し、文化をすす
める。
勤労感謝の日
11月23日
勤労をたつとび、生産を祝い、
国民たがいに感謝しあう。
天皇誕生日
(注2)
12月23日
天皇の誕生日を祝う。
1989(平成元)年2
月17日制定・施行
(追加)
注1:「春分の日」および「秋分の日」の日付は、前年2月1日の官報で発表される。
注2:天皇誕生日は平成元年から12月23日。それ以前は4月29日(現みどりの日)
上の表でピンク色なのが、祝日法の制定時点(昭和23年7月23日)からあった祝日で、全部で9日ある。(天皇誕生日は昭和から平成にかわった時点で期日が変更されている)
その後、1966(昭和41)年に「建国記念の日」「敬老の日」「体育の日」、1989(平成元)年に「みどりの日」、1995(平成7)年に「海の日」が追加され、現在では合計14日となっている。
途中に説明をはさんでしまったが、この後に、もう1条ある。
その第3条は、次のようになっている。
1.「国民の祝日」は、休日とする。
2.「国民の祝日」が日曜日にあたるときは、その翌日を休日とする。
3.その前日及び翌日が「国民の祝日」である日(日曜日にあたる日及び前項に規定する
休日にあたる日を除く。)は、休日とする。
上の第2項のいわゆる「振替休日」は、1973(昭和48)年4月12日に制定・施行された。また第3項の「国民の休日」(5月4日)は、1985(昭和60)年12月27日に制定・施行されている。
第2項では、「祝日が日曜日にあたるとき」は翌月曜日を振り替えとしているので、土曜日が休みという人が増えてきた現在では、土曜日に祝日があたっても振り替えがなく、損をしたような気持ちになる。
第2項を「祝日が土曜日・日曜日にあたるときは、次の月曜日を休日とする」というように書き換えてくれれば、いちばん良いのだが(^^;)、実際には全ての業種で土曜日が休みということでもないので、「損をした」という気持ちが少しでもなくなるように配慮したのが、祝日そのものを月曜日に移してしまうという、今回の「ハッピーマンデー法」なのである。
欧米では1年のうち4、5日の祝日を月曜日にしているという例も多いので、日本でも、もっと多くの祝日が月曜日に変更されるかもしれない。ただ、特定の出来事を記念している性質の祝日の場合は、変更できないものもあるだろう。
さて、ここから若干、うんちくを垂れたい(^^;)
まず、期日のことだが、条文の中にはっきりと「○月○日」と規定したものと、そうでないものがある。
上の表の注1にも書いたが、「春分の日」と「秋分の日」は期日が明示されていない。これはその年によって「春分日」「秋分日」が変動するためなのだが、それぞれの年の期日は前年2月1日の官報で発表されることになっている。
官報で発表するというと、いかにも政府が春分の日や秋分の日を決めるみたいだが、実際には国立天文台の計算をもとにして決定されるようだ。
前年の2月1日に発表されるのだから、1年以上前にわかることになるが、学校などのように年度単位で計画を立てる場合などには、例えば今年の1月中に再来年の3月末までの計画を立てなければならないということになる。その際、再来年の春分の日のはっきりした期日は、まだ発表されていないことになるから、3月20日あたりの行事予定などはあいまいになってしまう。
事実、年度単位で作られているカレンダーやスケジュール表等には「春分の日はこのあたり」という表記をしているものもある。(前々年の秋頃には作られているので)
太陽の動きという天文学上のデータがもとになるのだから、べつに政府の発表を待つまでもなく、天文計算によって日付はわかりそうなものだが、1993(平成5)年の春分日の場合、太陽が春分点を通過するのが3月20日午後23時41分という微妙な時刻であったために、いろいろな判断が出て、結局は官報の決定を待つしかなかったという例もある。
1960(昭和35)年以降、1992(平成4)年まで、たまたま「春分の日は、閏年では3月20日、平年では3月21日」という現象が続いたため、平年である1993(平成5)年も3月21日なのではという誤解を持った人が多かったようだが、この場合は3月20日に決定された。
ちなみに「秋分の日」は、ここしばらく(具体的には2011年まで)ずっと9月23日である。
もう1つ、条文中に期日が明示されていないのが「建国記念の日」で、これは「建国記念の日となる日を定める政令」によって決まるということになっている。(附則の2で触れられている)
1966(昭和41)年12月9日に制定された「建国記念の日となる日を定める政令」では「2月11日」と制定されているので、現在はこの日が「建国記念の日」ということなのだが、これも内閣総理大臣によっては別の日に制定したいということも、可能性上はあるので、期日が変わるということも考えられる。
ここまでは期日の決定に関することを述べてきたが、それぞれの祝日の意義を説明した文章も、よく見てみると面白い。
特に興味深いのが、「春分の日」と「秋分の日」のニュアンスの違いである。
私などは、どちらも「昼と夜の長さが同じになる日」だと思っていたし、仏教の「彼岸の中日」という意識があったのだが、さすがに「信教の自由」の国だけあって、「彼岸の中日」という説明はできなかったのだろう(^^;)
「春分の日」は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日であり、「秋分の日」は「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」日であって、だいぶその趣旨は異なる。
私のように「季節の変わり目に病気などしないように、身体を休める日」というようなものではないようだ(^^;)
ほかにも、「こどもの日」は、「こどもの幸福をはかる」だけではなく、「母に感謝する」日であるとなっていたり(父はどうなのかな?)、「成人の日」が、「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする」青年を「祝いはげます日」であって、「成人式で酒をラッパ飲みして騒ぐようなバカな20歳」を祝う必要はないということがわかったりするなど、よく読んでみると楽しい法律である(^^;)
「『国民の祝日』は休日とする」となっているわけだが、「祝日の他の休日は?」となると、具体的には、祝日が日曜日にあたった場合の「振替休日」(月曜日)と、5月3日(憲法記念日)と5月5日(こどもの日)にはさまれた5月4日の「国民の休日」がそれにあたる。
私のような地方公務員の場合、地方公務員法第24条第6項(職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は条例で定める)に基づき、「職員の勤務時間、休暇等に関する条例」によって休日も決められている。
これによると秋田県では(おそらく他の都道府県も同じはずだが)上記の休日の他に、「年末年始の休日」として、12月29日から1月3日までの期間が定められている。
したがって、私の場合、休日は、祝日法に基づく休日15日(祝日または振替休日の14日+5月4日の国民の休日)と、年末年始の休日5日(12月29・30・31日と1月2・3日)の、合計20日ということになる。
「日曜日や土曜日は休日じゃないの?」という疑問も出そうだが、厳密にいうと、日曜日・土曜日は「週休日」といい、「勤務を割り振らない日」であって、休日ではない。
休日も週休日も、仕事がない日なのだから同じじゃないかと思われるかもしれないが、休日は有給の休みであり、週休日は無給の休みである。したがって、祝日と週休日が重なった場合は、週休日であるという判断が優先するので、この日は無給となる。
月給をもらっている場合は、あまり気にならない問題かもしれないが、細かい点では諸手当の算出など、給与計算に微妙に影響してくる。自分の権利を主張したり守ったりする場合に役に立つこともあるので、覚えておいてもよいかもしれない。
<00.02.06>