デジタル電話で#を押す



 インターネットの普及に伴って、電話をアナログ回線からISDN等のデジタル回線に切り替えた方も多いようだ。



 インターネットで回線を使っていても一般の電話を使えるなど、デジタル回線に切り替えるメリットは多いのだが、「切り替えてから、どうも普通の電話の具合が悪い」という話も聞くことがある。

 具体的には、通話の音質が変わったとか、番号をダイヤルしてから呼び出し音がするまで時間がかかるとかいうことである。




 音質が変わるのはデジタル通話の特性によるもので、これはしかたがないらしい。



 ダイヤル後の接続が遅いということは意外に気づかない人も多いかもしれないが、アナログ回線の場合、ダイヤル(またはプッシュ)後、すぐに呼び出し音が鳴るのに対して、デジタル回線では、4〜5秒程度、無音の状態になり、その後で呼び出しの状態になる。

 この理由については調べていないのでわからないが(注参照)、職場の電話回線をISDNに切り替えた際に業者の人がその旨の話をしてくれたので、おそらく全国どこでも共通な現象なのだろう。



 実際に試してみたが、同一地域内で市外局番を省略してダイヤルした場合・遠距離通話で市外局番も含めた10桁の番号(携帯では11桁)をダイヤルした場合・短縮ダイヤルを使った場合の全てで同様の現象が見られた。特に携帯電話にかけた場合は10秒以上の空白時間があった。



 この空白時間をなくす方法がある。これは職場の電話をISDNに切り替えた際に業者の人が教えてくれたのだが、番号をダイヤル(プッシュ)した後に、「#」ボタン(右下にある。0ボタンの右脇)を押すという方法だ。

 これによって、空白時間がなくなり、すぐに呼び出し状態になる。



 この方法もいろいろな状況で試してみたが、市外局番のあるなし、短縮ダイヤルの利用、携帯電話への呼び出し等の全ての場合で改善が見られた。

 携帯電話への呼び出しの場合は、その特性のためか5秒程度の空白時間は生じるが、「#」ボタンを押さない場合に10秒程度の空白時間があったのに比較して、約5秒程度の時間が短縮される。

 他の通話の場合は、待ち時間がゼロになって、すぐに呼び出し状態になった。



 この方法は、電話業界の人(?)には常識のようだが、一般的にはあまり普及していないのではないだろうか。



 私の場合は、幸いにも職場の電話を切り替えに来てくれた業者の人が教えてくれたので知ることができたのだが、その前に自宅の電話回線を切り替えたときには、そういった説明がなかったように思う。もしかしたら説明してくれたのかもしれないが、それを聞き落としたか、あるいは家人が説明を受けたのだが、それをよく理解できなくて家族に伝えることができなかったのかもしれない。



 いずれにしろ、知っておいて損はないし、使うと便利な機能である。

 知らなかったのは私だけなのかもしれないが、もし、私同様にご存じなかった方には、ぜひお試しいただきたい方法である。

<00.01.29>





(注)

 この文章を公開したあとで、「Gabacho-Net」の浅見さんから、次のような情報をいただいた。



 アナログ電話では、電話から出るダイヤル信号を電話局の交換機が受信し、何桁の番号で完結するかを交換機が判断しています。1で始まれば3桁(117、177など)、2〜9で始まれば市内通話なので地域によって4〜8桁、01〜09で始まれば市外通話なので10桁(ただし、070のPHSと090の携帯なら11桁)という具合です。だから、規定の桁数のダイヤルボタンを押せばすぐに接続が始まります。

 しかし、規定の桁数をダイヤルしてもしばらく無音が続くことはあります。9桁しかない番号への市外通話で、その接続先の地域が例外的に9桁であるということを交換機が知らない場合です(今もそういうことがあるかどうかはよく知りませんが)。この場合は、タイムアウトによって番号が完結したとみなして接続動作に入ります。

 ISDN(ディジタル電話回線)の場合は、アナログ電話機が出すプッシュホン信号をTA(ターミナルアダプタ)が受信し、番号が完結してから電話局の交換機に接続要求を送ります。TAは、「何番で始まるから何桁」と判断する機能を持っていません。そのルールは変更されうるので、TAに判断機能を持たせるのはかえって不都合なのです。そのため、最後に#を押さない限り、5秒ほどのタイムアウトまで番号の完結と判断しないのです。

 なお、TAにつなぐアナログ電話機の短縮ダイヤル機能を利用する場合は、最後の#を含めてメモリーさせておくと便利です。

(以上、引用)



 なるほど、電話局には頭の番号で何桁番号なのか判断する機能があり、そのために番号入力後すぐに接続されるという便利な機能があるのだが、デジタル回線では自分のターミナルアダプタ(TA)の中で番号入力が完結しないと電話局につながないという方式のため、入力完結をタイムアウト(5秒程度の空白時間)によって判断するので、接続が遅くなるということのようだ。

 タイムアウトを待たずに入力完了を決定するのが「#」の入力であるという仕組みのようである。これで、この「うんちく」も無事に完結したわけである(^^;)

<00.01.30>


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