TCP/IPが2つ



 このページをご覧の方は、当然のことだがインターネットに接続しているはずだ。

 では、コンピュータを買ってから、インターネットに接続できるように設定したときの手順を覚えているだろうか。





 「よく覚えていない」という方も多いのではないだろうか。

 最近ではコンピュータを使い始めると同時にインターネットも始めるという人が増えたので、全くの初心者の状態でインターネット接続の設定作業をしなければならないということもあるだろう。

 設定マニュアルの指示通りにやればできるとはいうものの、コントロールパネルだのダイヤルアップネットワークだのプロトコルだのというわけのわからない言葉が出てくるし、初めて体験する操作も多いだろうから、暗中模索での作業となる。実際、これらの作業は、コンピュータ歴の長い人にとっても簡単なものではないので、全くの初心者となると大変だ。



 最近では、業者の人も心得ていて、販売業者やプロバイダ、あるいは電話会社の人が自宅まで出張してくれて、全ての設定を行ってくれるサービスも増えてきている。

 あるいは、コンピュータに詳しい友人などに頼んでやってもらったという人もいるだろう。



 こうなると自分で設定した経験がないわけだから、「手順を覚えていますか」と言われても、「NO!」ということになってしまう。



 あるいは自分の力でやったという人も、マニュアルと首っ引きで、なんとか設定できたというような場合は、設定手順を完全にマスターしているというわけではない。

 インターネット歴が長いほど、設定をやったのは昔ということになるので、どうやって設定したかということは、記憶の彼方に忘却‥‥ということもあるだろう。



 自分のコンピュータの再セットアップを何度もやったとか、自分のコンピュータの他にも職場のコンピュータでセットアップを何度かやったなどという人は、手慣れているかもしれない。

 余談になるが、コンピュータを扱う業者の人が、機器の設定やトラブルの修復に堪能だというのは、専門的な知識を学んでいるということもあるが、それよりも実際の作業の経験が多いということが大きな理由である。

 何度も同じような作業を繰り返したり、似たようなトラブルに対応したりして、場数を踏んでいると、トラブルの症状を見ただけで、「ああ、この症状の原因はこれだな」と、経験的にわかるものである。(医者と同じである。学校の教師もかな?)LANの接続具合が悪いときなどは、IPアドレスがぶつかっていることも多いが、それよりもハブのところでコードがきちんと差し込まれていないなどということのほうが多いものだ)



 それはさておき、自分がインターネットをある程度やっていることが知られるようになると、知人などから「インターネットの設定をして」と頼まれることもあるだろう。

 設定作業に全く自信のない人は断ればよいのだが、一応、自分で設定した経験のある人は依頼に応えることもあるかもしれない。



 さて、ここでうまくできるかどうかが問題だ。うまくできれば「コンピュータのプロ!」と高く評価されるが、失敗すると評価はがた落ちである(^^;)



 買ったままのコンピュータにインターネット接続を設定するのは難しくはない。プロバイダに契約すれば、契約書類といっしょに接続マニュアルがついてくるから、それにそってやれば、だいたいOKである。

 Windows自体にも「接続ウイザード」ソフトがあるので、その指示通りにやれば、できることが多い(若干の例外もある。それについては後述)



 大変なのは、「マニュアル通りにやってみたのだが、うまくいかない!」と相談を持ちかけられたときである。

 この相談にうまく答えられれば、あなたの評価は急上昇となるのだが、実はこれから紹介するトラブルの場合、なかなか原因を見つけられずに、結局、「業者を呼んだほうがいいかも‥‥」という結果になってしまうことが多いのだ(^^;)



 そのトラブルは、コンピュータは初心者だが、オーディオ機器とか電気機器など理数系の方面には少し自信があるという人によく起こる(若い男性に多い)

 メカ類に自信がない人は自分で設定するのが不安で、他の人に頼むのでトラブルは起こりにくいが、自分でやってみようという人(これは大事なことなのだが)は、よくわからなくても作業を進めてしまう。

 そうして、途中でつまずいて、もう一度最初からやり直しをしたりなどということを繰り返す。

 その結果、このトラブルが発生する。またWindows95よりもWindows98で発生するのが多いようだ(もっとも、最近発売されたパソコンとなるとWindows98インストールモデルがほとんどなのだが)



 そのトラブルの症状は、次のようなものだ。



 ブラウザ(Internet ExplorerとかNetscape Communicator)を起動する。この時点では正常にブラウザが開く。

 どこかのサイトを開こうとしてURLを入力する。ダイヤルアップ接続が起動して、プロバイダのアクセスポイントに接続される。

 アクセスポイントに対するIDやパスワードが認証されて、モデムの接続が成立する。

 しかし、ブラウザでは「ホストを探しています」等の表示が出たままで、いつまでたってもサイトが開かない(ホームページが表示されない)

 しばらくすると、接続できない旨のメッセージが出て、サイトへの接続が失敗したことがわかる。(しかし、アクセスポイントへの接続は続いたままである。当然、電話の使用料金もかかっている)



 サイトのURLに間違いがあるのかと、いくつかのURLを入力してみるが結果は同じ。サイトのURL手入力では大文字小文字の区別が違ったり、1文字でも間違いがあったりするとつながらないので、確認のためにブラウザの右上のマーク(Internet ExplorerではWindowsのマーク、Netscape CommunicatorではNの文字のマーク。どちらもクリックすると本社のサイトにつながる)をクリックしてみるのだが、やはりつながらない。



 プロバイダのアクセスポイントにはつながっているようなので、その点は問題がないはずなのだが、念のために、「プログラム」→「アクセサリ」→「ダイヤルアップネットワーク」→(使用する接続を選んで)「プロパティ」→「サーバーの種類」→「TCP/IP設定」と入っていって、「ネームサーバーアドレスを指定」のところの「プライマリDNS」や「セカンダリDNS」(210.179.145.1のような数値)をチェックしてみるが、ここにもプロバイダが指定した数値が入っているし、ユーザー名やパスワードも正しく入力されている。



 こうなると、迷路に入り込んだようなものだ。

 もう一度、最初から接続の設定をやってみたりするが、解決しない。

 かたわらでは、自分に依頼した友人が心配そうにのぞき込んでいるが、解決の方法に心当たりはない。時間ばかりが過ぎていき、「コンピュータのプロも権威失墜だぁ!」とあせってくる‥‥。



 このときは、次のようにするとよい。



 「設定」→「コントロールパネル」→「ネットワーク」をクリックする。

 すると下のような窓が開くはずだ。(使用環境によって表示は若干異なる)



 前述のようなトラブルが起きている場合、この「TCP/IP」が2つ登録されているのではないだろうか。
(ただし、イーサボード等を使ってLANを組んでいる場合は最初から2つある場合もある。その場合はLAN用とダイヤルアップ用の説明が付加されているはずだ。そういうときは、このトラブルが起きている場合はTCP/IPが3つ登録されているはずである)



 これがトラブルの原因なのだ。

 プロトコルなどについて説明するとくどくなるので省略するが(私もあまり詳しくないし)、いずれ何かの手違いで「TCP/IP」というネットワークプロトコルが2つ登録されたために、前述のようなトラブルが生じたのだ。

 対応は簡単。1つを削除すればよい(どちらを削除しても同じようだ)



 これで、先ほどまでのトラブルは嘘のように解消する。

 心配そうな顔の友人の前で、今度はスムーズにブラウザにサイトが表示され、あなたは「コンピュータのプロ!」として、益々名声を得るわけである(^^;)



 このような事態が起きた原因については、いくつか考えられるが、1つは、設定作業を途中でやめて最初からやりなおしたなどということもあるだろう。

 しかし、いちばん考えられるのは、Windows98の場合に必要がない「ネットワークプロトコルの追加」という作業をしてしまったことだろう。



 プロバイダで準備した「インターネット接続マニュアル」には、Windows95を前提としたものもある。

 Windows95では、標準セットアップされた状態では、ダイヤルアップネットワークやネットワークプロトコルがインストールされていない状態のものが多かった。(アプリケーションをプレインストールしている機種ではインストールされていることもあったが)

 そういう場合は、インターネットをやるために、それらの機能をインストールする必要があるため、マニュアルにもその記載がある。



 しかし、Windows98では、既にそれらの設定が済んでいる状態である。

 したがって、Windows95を前提としたマニュアルを見て作業を進めると、前述のように「TCP/IP」が重複してインストールされるということになってしまうのであろう。



 マニュアルを詳しく見てみれば、たいていは「Windows95の場合」というのと「Windows98の場合」という2通りが載っていたり、「Windows98では、この作業は必要がありません」などと注意書きがあったりするはずなのだが、コンピュータ初心者の場合は、そこまでわかる人も少ないのかもしれない。(説明が不十分だったり、古かったりというマニュアルもあるようだし)



 今回の「うんちく」は、かなり一部の人だけを対象にしたような内容になってしまったが、もしかしたら、そのうちにこういう事態に直面することもあるかもしれない。

 そのときは、この文章を思い出して、やってみていただきたい。「さすが○○さん。コンピュータのプロ!」と面目躍如かもしれない(^^;)

<99.10.09>



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