シャンプーとリンスの差別化



 「リンス」なるものを使い始めたのは、いつ頃からだっただろうか。



 私がまだ小さかった昭和30年代の初めの頃には、頭を洗うのにも浴用石鹸ですませていたように思うから、小学校の高学年か中学生の頃かもしれない。

 思春期になって髪の毛にも気を使うようになり、シャンプーの二度洗いなどをやるようになったあたりで、リンスを使うようになったのだが、おそらく全国的にもその頃(昭和40年代前半)にリンスが急激に普及したのではないかと思う。



 昔話はさておき、洗髪をしているとき、シャンプーとリンス(この頃ではコンディショナーと呼ぶことが多いが)を間違えると、まことに具合が悪い。



 シャンプーのつもりでリンスを手のひらに出してしまうと、もとに戻すわけにもいかないから洗い流すしかないし、「最後の仕上げにリンスを‥‥」と思って、ボトルのポンプから押し出したのが、実はシャンプーだったりしても具合が悪い。

 まして、それを頭に塗りつけてから気がつくなどということになれば最悪である。

 近頃は、シャンプーもリンスも、白い半透明の液体のものが多いので、手のひらにとっただけでは判別できないことも多い。



 下の写真が、我が家の風呂場にあるシャンプーとリンスである。



 実は、右がシャンプーで、左がリンスなのだが、ボトルの表示を見ないことには全く区別がつかない。



 シャンプーとリンスの銘柄を別々にすれば区別がつくのだろうが、使用感や匂いのバランスから、同じ銘柄の製品を使ったほうがよいのでは‥‥という感じがあるので(実はそうでもないのかもしれないが)、我が家のように同じ銘柄で揃えているという方も多いだろう。



 こういう場合は、ボトルのデザインも共通化されているので、区別をするにはボトルにプリントされた表示を見るしか方法がない。

 これも「エメ☆ンシャンプー」「エメ☆ンリンス」のように商品名も同じになっていることが多いので、文字のデザインも共通だから、ちょっと見ただけでは区別がつきにくい。

 若干、ボトルの色に変化をつけている製品もあるが、これもかなり慣れないと覚えられない。ホテルや他人の家などで、自分が普段使っていない銘柄のシャンプーを使うときなどは特にわかりにくい。

 結局、ボトルの側面にあまり大きくない文字で書かれている「シャンプー」「リンス(コンディショナー)」という文字を確認するしかない。



 というようなことを、いつも考えて不満になっていたのだが、この頃では、若干の工夫をしている製品も出てきたようだ。

 具体的には、ボトルのポンプの頭の部分を少し変えているのである。

 シャンプーのほうは、ポンプの上のたいらになっている部分に、3〜5個程度の小突起をつけて、指先で触ったときに、ざらざらした感じで判別するようにしているのである。



 スーパーマーケットに行って調べてみたら、現在、販売されているシャンプー・リンスの半分以上の製品には、この工夫が採用されていた。しかも、どの製品の場合も、小突起がついているのはシャンプーのほうである。



 我が家のシャンプーのように、まだリンスと同じデザインになっているものもかなりあったので、これがシャンプー&リンスの統一規格ということではなさそうだが、いずれにせよ若干の進歩ではある。



 しかし、これでもかなりわかりにくい。

 違いを確かめるのに、いちいち指先で触らなくてはならないのでは、ボトルの側面の文字を見て確認するのと、手間の面では大きな違いがない。

 それに、こういう小さな違いでは、少し離れると見ただけではわかりにくい。自分で使っているシャンプーについている小突起に気づいていなかった人も多いのではなかろうか。



 シャンプーとリンスのボトルが共通(ポンプ部分も含めて)なのを見たとき、最初に考えたのは、製品を作る工程を共通にして、コストパフォーマンスを上げるためだろうということだった。

 しかし、現実に、小さな違いながらも、シャンプーとリンスのポンプに差をつけているところを見れば、コストパフォーマンスのためだけではないということなのだろう。

 やはり、シャンプーとリンスのデザインに統一性を持たせて、見た目にセンスのよさを感じさせるというのがねらいかもしれない。



 しかし、これはあまり使う側に立った発想ではないように思う。

 そこで、私が考えたのが、下のデザインである(^^;)



 右がシャンプー、左がリンスである。色はこんなのでなくてもよいのだが、シャンプーのほうは角のある直線的なデザイン、リンスは角を落とした丸みのあるデザインにする。

 あまりセンスのよいデザインではないが、これにキャッチコピーをつける。

 「シャンプーすっきり。リンスはまろやか!」



 私がメーカーの社長であれば、社の全製品を統一規格にして、このコピーとともに売り出すのだが‥‥

 そういう製品が出たら、私なら買いたい。(これって、私の特許とか実用新案にならないかなぁ‥‥。メーカーさん、アイディア買いませんか?)

 シャンプーとリンスが1つになった「リンプー」とか「リンスインシャンプー」などを使っている人には関係ないかぁ。その場合のポンプのデザインも微妙だなぁ‥‥(^^;)



 シャンプー&リンスに限らず、使い途はかなり違うのに、デザイン重視のためか、ちょっと見ただけでは区別がつかないようなものが他にもあるようだ。

 エレベーターのドアの「開」「閉」ボタンなどもそうだ。(最近では改善されたタイプも出てきてはいるが)

 男女の差別をなくすための様々な取り組みも出てきているが、時としてシャンプーとリンスのボトルのような感じを受けることも、私にはごくまれにあるのだが。

<99.09.27>




 この文章を読んでくださった西尾さんから、シャンプーのボトル上部のギザギザを「キザミ」というのだという情報をいただきました。1991年に花王がエッセンシャル・シャンプーで最初に採用したとのことです。

 このことについての、花王のホームページも紹介していただきましたので、詳しくお知りになりたい方は、こちらのページをご覧ください。


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