こち亀はエライ



 TVアニメのポケモンの「パカパカ」(画面の点滅)で失神者などが出て以来、アニメ番組の最初には「部屋を明るくして、テレビから○m以上離れて見てください」というような内容のテロップが出るようになった。



 しかし、よく考えてみると、アニメ番組を見ているのは、あまり文字も読めないような幼児も多い。ああいう大人向けのようなテロップでは、意味を理解できない子供も多いだろう。



著作権対策で手描きしたら全然似てない両津勘吉


 その点、フジテレビ系で放送している「こちら亀有公園前派出所」は立派である。

 登場キャラクターが総出演で、「♪テ・テ・テレビを見るときは、部屋を明るくして、離れて見てネ!」と歌って呼びかける。



 これなら、小さい子供も歌いながら後ずさりして、テレビから離れるだろう。

(余談だが、テーマソングの「葛飾ラプソディー」が別の曲に変わって残念‥‥)



 文字だけの注意テロップを出している番組では、番組全体の流れなどの関係もあって、そうしているのかもしれないが、私から言わせると、「とりあえず、注意の表示だけはしましたよ!」という姿勢にも感じられる。



 こういうことは、私にもあるような気がする。



 学校関係で大きな事故や事件があると、それについての指導を呼びかける文書が学校に届いてくる。

 全国的な問題の場合など、文部省から県教委、地教委と経由して学校に届く。(コピーや同じ内容の繰り返しが多いが)

 その場合、私は、その文書にいくつかの書き込みやアンダーラインを加えて印刷し、校内の職員に配布するというのが普通である。

 さらに、いつ配布したのかというメモをつけて、ファイルに綴じて保管する。



 まあ、教頭としては、これが一般的な処理のパターンなのだが、指導した文書の保管などは、万一、自分の学校で、そのような事故や事件が起きたときに、「こういう指導をしてきました」という証拠を残すためのものであり、考えようによっては、やや保身的な性質もある。



 もちろん、学校で指導した記録は残しておかなければいけないのはもちろんなのだから、それ自体は悪いことではない。

 不幸にして事故や事件が起こった場合、事故報告書には「本校では、○月○日にこのような指導をした。その内容は別紙資料の通りである」のように書くのだが、その際に資料が多いほど学校できちんと指導したことが証明されるわけである。「指導はしたはずですが、資料はありません」ではまずいのである。



 その報告によって、「学校では繰り返し指導を行ってきており、大きな落ち度はないが、不幸にして事故が起きてしまった」という判断をされるのだが、これも考えようによっては、「学校の責任はないので、事故は児童生徒の不注意による」という意味にもなってしまう。

 それも変なハナシである。実際に事故や事件が起きたのなら、指導の効果は完璧でなかったということである。ただ、指導を全く行わなかったか、ある程度行っていたかということの違いだけである。



 テレビの見方の注意テロップも、それを表示したからといって、全ての子供がテレビから数m離れて見るとは限らない。まして幼稚園児が見るような番組に漢字の多い文字表示をしただけならなおさらである。

 効果を上げたいと考えるなら、「こち亀」のように方法を工夫しなければならない。



 我々の仕事も同じだろう。ただ、上からきた資料をコピーして配布するだけでは、効果が薄い。児童生徒に徹底できるような方法を工夫した上で指導にあたらなければならない。

 大事なのは、「指導したという事実」ではなく、「指導の効果」なのだからである。

<99.09.15>



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