語源で遊ぶ


 きちんと文節変換ができるワープロを使い始めた頃、なにげなく「くたびれた」と入力して変換キーを押したら、「草臥れた」と表示されて驚いたことがある。何かの間違いかと思って国語辞典を引いてみたら確かに▽マークなどがついてそのような表記がついていた。

 なるほど!である。草がしおれて臥してしまうという様子は、まさにクタビレタそのものである。「クサヒレタ」が「クタビレタ」になっていったのであろう。これが語源であると気づいたとき、とても得をしたような気分になった。

 ものごとを簡単にすませてしまうという意味の口語の「はしょる」も、端の方を折って短くしてしまうという「端折る」だと気がつけば納得する。(これもワープロで変換される)

 「テストでこんな問題が出るだろう」などと予想するときに使う「山を張る」という言葉は、普通の辞典などでは「鉱山」という意味の「ヤマ」で、うまく鉱脈や金塊などを掘り当てたりすることを 「山が当たる」というなどと書いているが、これはなんだか当たり前すぎて面白く思わなかった。ところがラジオの番組を聴いていたら、「漁師が海に出たとき、自分の船の位置を知るために、陸地の二つ以上の山を目印として、その見た目の角度を測ることが語源」という識者がいて、私はこの説がすっかり気に入ってしまった。

 確かに辞書に出ている語源の方が正しいのだろうが、自分でいろいろとこじつけてみることも自由であるし、意外にその方が当たっていることもあるかもしれない。

 私は一人でやることもなく退屈な時は、頭の中でいろいろと(人から見れば)くだらないことを考えて遊ぶことが得意なのだが、このこじつけ語源で遊ぶのも、かなり好きである。



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