ラジオ体操は正確に
運動会などでは、まだラジオ体操を行っているところも多いと思う。
ところが、その様子を見ると、細かい部分の動きが、かなりいいかげんである。ラジオ体操をしている子供たちの動きも不正確だが、その指導をしている教師の動きも、私から見ると不正確なものが多い。
教師自身が正しいラジオ体操のやり方を知らないのだから、それを真似て動いている子供たちがきちんとラジオ体操ができないのは当然のことである。
ラジオ体操(ここではラジオ体操第1)は、大正14年(1925)に、逓信省(現在の郵政省)が、簡易保険加入者の健康増進のために、アメリカの生命保険会社が広告放送で流していた体操を日本に紹介したのが最初とされ、実際に全国放送が始まったのは昭和4年(1929)である。
最新のスポーツ医学から見ると不合理な動きもあるとも言われているが、運動会などで行う以上、正しい動きをすることが必要であろう。私たち教師も、小さいときからなんとなくやってきているという傾向があり、正式に動き方を学ぶという機会が少ないため、我流で習い覚えた動きを、そのまま子供の前でやってしまうのかもしれないが、「嘘」を教えてはいけない。
私がよく目にする、「間違ったラジオ体操の動き」の代表的なものを、以下で述べる。(ラジオ体操第1には13の体操があるのだが、特に間違いの多い7つについて説明する)
1番目の体操(背伸びの運動)

これでいちばん多い間違いが、上に振り上げた手をおろすときに、水平位置でいったん止めて、手のひらを下向きにする例である。振り上げた手は途中で止めないで自然に下におろすのが正しい。
振り上げるときの手は、軽く握るのだが、その場合、手のひらが正面に向くかたちで振り上げる。最後の運動の深呼吸で手のひらが内側に向くように上げるのとは異なる。(深呼吸の場合も振り上げた手は止めないで自然におろす)
また、背伸びをするときに、かかとを上げてはいけない。ただし、この運動の最後の部分では、次の運動へのつながりをスムーズにするため、腕を交差しながら、かかとを上げるのがポイントとなる。
2番目の運動(腕を振って脚の曲げ伸ばし)

この運動のチェックポイントは、ただ1つ。かかとを上げるということである(あげないでやる人が、かなり見られる)
3番目の運動(腕をまわす)

この運動でかかとを上げる人がいるが、それはまちがい。かかとは地面につけたままで行う。また腕の交差をできるだけ高い位置(頭のあたり)で行うのがよい。身体によいとは思えないが「腕を素速く振って、指先まで血液を送り込むような感じで」というのもポイントである(^^;)
4番目の運動(胸をそらす)

この運動は「胸」の運動である。腕や胴体の運動ではない。したがって腹を前に出したり、胴体を後に反らせる必要はない。手のひらを上に向け、腕全体を斜め上に伸ばし、胸筋から腕の内側の筋肉が十分に伸びるのを感じるようにする。
7番目の運動(身体をねじる)

うっかりするとだらだらした動きになりやすいので、最初の4呼間は、腕を身体に巻きつけるような気持ちで小さく回す。頭と肩の腺は腕の動きに合わせて回転する。その後、腕を後方にやや高く振り上げ、その指先を見るように身体全体をねじる。
最後の動きは、振り上げた腕を戻しながら、腕を下におろし、開いていた脚も閉じて「気をつけ」の姿勢になることもポイント。
8番目の運動(腕を上下にのばす)

ラジオ体操の中で、いちばん動きが不正確なのが、この運動。
まず最初の動きで、ひじは体側にぴたりとつくようにし、肩を後に引いて、腕と胸で平らな面をつくるようにする。このときに腕と肩を前に出し脇の下を開けるようにする人が実に多い。
次にかかとを上げながら、手をまっすぐ上に伸ばす。手のひらを内側に向ける。このときに腕をだらしなく斜め上に上げる人が多い。
次にかかとをおろしながら、最初の体型に戻り、さらに手を体側上で直線的におろす。このときにも手を広げるようにしておろす人が多いが、それは間違いである。
9番目の運動(身体を斜め下にまげる)

これは下にまげるのは、それほど難しくないが、後に反るときの動きがおかしい人が多い。腕を斜め下にして、胴体ではなく、胸を反らせるのが正しい。
他の運動にも注意すべき点はあるが、特に間違いが多いのが、以上の7つの運動である。
これまで述べたような点に注意して、きちんと運動するならば、ほんの数分間の運動ではあるが、けっこうきつい。まじめにやると汗も出てくる。しかし、いいかげんな動きで、適当に手足を振り回している程度だと、あまり運動にはならない。
他のスポーツ種目を行う前の準備運動としては、あまり適当ではないという説もあるし、実際に準備運動として行うならばストレッチ運動等のほうが効果的だが、毎朝、身体をほぐすために行うのであればラジオ体操にもそれなりの効果はあると思う。
ある程度の筋力も必要とするので、中高年になって筋力が落ちることを防ぐという効果もあるようだ。
きちんとした動きを、目で確認するには、NHKテレビで早朝に放送している「テレビ体操」の中で行われる「ラジオ体操第1・第2」を見るのがよい。
学校で指導するならば、それを録画したビデオをとっておくことも良い方法である。
朝起きて録画するのが大変だという方には、インターネットでラジオ体操のことを知ることができる、こちらも効果的である。
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