ABCの歌の区切り方



 この「うんちく」は、「情報ください」ネタである。私自身もはっきりした結論を出せない。「本当はこうだ」とか「うちのほうではこうだ」という情報をいただければ幸いである。いただいた情報は今後、随時追加していく予定である。



 「ABCの歌」というのがある。その名の通り、「A,B,C,D,E,‥‥」と、順にアルファベットを歌っていく歌で、おそらくほとんどの方はご存じだろう。メロディーを確認したいという方は、下のプレーヤーの再生ボタンをクリックして、聞いていただきたい。





 お気づきの方もいらっしゃるだろうが、このメロディー、「キラキラ星」という別の題名でもおなじみである。

 英題は「Twinkle, twinkle, little star」で、歌詞は次の通りである。


 Twinkle, twinkle, little star,

 How I wonder what you are!



  Up above the world so high,

  Like a diamond in the sky.



 Twinkle, twinkle, little star,

 How I wonder what you are!



 この曲は「マザーグース」の1つである。マザーグースというのは、英米の伝承童謡の総称で、アメリカでは「マザーグース」と呼ぶことが多いが、イギリスでは「ナーサリーライム」と呼ぶのが一般的なようだ。

 英米の伝承童謡とはいっても、「Twinkle, twinkle, little star」のメロディーそのものは「フランス民謡」からとったものらしい。歌の本などでは「フランス古謡」としているものも多い。(それがもともとどんな歌詞だったのかはわからない)



 まあ、マザーグースについてのうんちくは、今回の主な話題ではないので、これぐらいにしておこう(^^;)

 この「Twinkle, twinkle, little star」に、どういうわけかアルファベットを音読する歌詞がついて歌われるようになったのが「ABCの歌」ということらしい。



 振り返ってみれば、私も小学生の頃から「ABCの歌」を歌っていたように思う。

 ただし、この歌をきちんと教わったという記憶はない。教科書などの音楽の本に載っていたのを見たわけでもないし、ラジオやテレビで演奏されるのを聞いたということでもない。

 年上の友達や同年の友達が歌っているのを聞いて、なんとなく自分もアルファベットの順番をなぞりながら歌っていたように思う。



 そういうときに、私が(あるいは私の友人たちが)歌っていたのは、次のようなものだった。


 A,B,C,D,E,F,G 

 H,I,J,K,L,M,N 



 O,P,Q,R,S,T,U 

 V,W,and,X,Y,Z 



 A,B,C,D,E,F,G 

 H,I,J,K,L,M,N 



 歌詞の表記の構造(赤青の色分け)は上記の「Twinkle, twinkle, little star」に対応している。この曲のつくりは、赤青で表示したように、Aの旋律(青)−Bの旋律(赤)−Aの旋律(青)というようになっており、アルファベットの26文字は、A−Bまでの部分で終わるようになっている。

 最後のAの部分は、本当は別の歌詞になっているらしく、ちょっと気のきいた友人などは「ハッピー、ハッピー‥」などと英語のような歌詞で歌っているものもいたが、英語ができない我々ほとんどの少年(^^;)は、「Twinkle, twinkle, little star」の例にならい、最初のAの部分(A,B,C‥‥L,M,Nの歌詞)を繰り返して終わるという歌い方をしたのである(^^;)



 当時は、これで十分に英語の曲を歌っているような気分になり、歌詞もこれでよいのだというつもりでいたが(後半のAの部分が違うことは薄々気づいてはいたが‥)、近年になって、「衝撃の事実」に気づいてしまった。

 自信を持って歌っていたはずの「アルファベットの部分」も、実は怪しかったのだ!



 このことに、最初に気づいたのが9年前。当時、TVアニメ「ちびまる子ちゃん」のテーマソング「おどるポンポコリン」を歌った「B.B.クィーンズ」のアルバムを聞いたときだった。

 このアルバムの8曲目に「ABCのうた」が収録されている。これでは、次のように歌っていたのだ。


 A,B,C,D,E,F,G 

 H,I,J,K,L,M,N,O,P 



 Q,R,S,and,T,U,V

 W,X,and,Y,and,Z 



 I've just said my ABC's

 Now it's your turn follow me.

(2番では下の通り)

 Happy happy all are we

 Now we've learned our ABC's.





 後半が「I've just‥‥」と英語になっているのは、昔から予想した(^^;)通りなので驚かなかったが、2行目の部分のアルファベットの区切り方が、全く違っていたのだ。(そのため、当然のことながら、その後も違ってくる)

 私は2行目を「H,I,J,K,L,M,N」というように、4分音符できちんと歌っていたのだが、このCDでは「H,I,J,K,L,M,N,O,P」と、2文字も多く歌い込んでいる。(耳で聞いた感じでは「H,I,J,K,えられのぴー」というように聞こえる。「L,M,N,O」の部分は8分音符で歌っているのである)

 このCDでの演奏はロックっぽいアレンジになっているので、もしかしたら演奏のノリをよくするために意図的にそういうリズム割りで歌っているのかもしれない‥‥と、自分なりに理由づけをしてみたが、プロのミュージシャンが歌っているのだから、英語圏ではこの歌い方が本当なのかもしれないと、少々不安になったものだ。



 この不安は現実のものだったらしい。先日、NHK教育テレビの「英語であそぼ」を見ていたら、出演していたクリスおねえさん(この人、本名は「クリステル・チアリ」さんで、実はギタリストのクロード・チアリ氏のお嬢さん)が、B.B.クィーンズと同じように歌っていたのだ。

 まさか、教育テレビの子供むけ英語番組で、崩した歌い方をするわけがないから、「えられのぴー」が正しい歌い方なのだろう。

 私は、この年になるまでずっと間違った歌い方をしていたことになる(^^;)



 なぜ、このようなことが起きたのだろう。

 まずは、原曲をきちんと聞いたことがないというのが、一番の原因だろう。「A,B,C,D,‥‥」という部分を聞いただけで、あとは自分でも「アルファベット順に歌えばいいのだな」と思いこんでしまう。

 日本人の感覚では、歌というものは音符1個に対して音1個(かな文字1個)だから、4分音符がきれいにならんでいるこのメロディーに対しては「H,I,J,K,L,M,N」が自然である。そこで私のような歌い方になってしまったのだろう。

 ところが英語圏の人にとっては、1つの音符に乗るのは1つの音節なのだから(「H,I,」のところに「I've just」が入るように)、私が「L,M,N」と歌っていた部分が「LM,NO,P」でもおかしくはない。



 日本にこの歌を持ち込んだ人が、原曲では「LM,NO,P」となっているのを知りながら、意図的に「L,M,N」と変えたということも考えられなくもない。

 ただ愛唱するのが目的ではなく、この曲を歌いながら、アルファベットの綴りを書いていくという「英語の初歩学習」が目的であるとすれば、「LM,NO,P」では、1音1文字感覚の日本人には馴染まない(実際「えられのぴー」にしか聞こえないのだから)

 まあ、今さら、この曲を歌わないとアルファベットが書けないという人もいないだろうから、これからは本来の英語的な音の割り方で歌うようにするのもいいだろう。日本人にも英語的な1音符1音節の歌い方をするアーティストも増えてきたことだし‥‥(ミスター・チルドレンの桜井氏などは、まさにそうである。もっとも何を言っているのか聞き取れないことのほうが多いが ^^;)



 音の区切り方の話題からは少しそれるが、この「ABCの歌」というのは、日本ではいつ頃から歌われているのだろう。戦後からだと思っていたら、そうでもないようである。

 戦争中に育った私の父(昭和5年生まれ)も、子供の頃に「ABCの歌」の替え歌で「海老(えび)死んで、蟹(がに)生ぎだ〜♪」(秋田の田舎なのでなまっている)と歌っていたそうだから、戦前からあったもののようだ。

 このことについての情報がある方も、教えていただけると嬉しい。

 また、英語ではなくドイツ語とかフランス語などを話す国の人たちはどうだろうか。まさかドイツでは「アーベーツェーデー、エーエフゲー」ではないだろうが‥‥(^^;)

 このことについても、情報をいただきたい。




 さっそく「ちっぷ」さん(HPはこちら)から、情報をいただきました。(99/05/16)

−−−(メールの一部を紹介します)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 わたしは中学生時代、以下のように習いました。

A,B,C,・・・(中略)
・・・えられのぴー(笑)
Q,R,S,T,U,V,W
Q,R,S,T,U,V,W
X,Y,Z,Oh,do you see?
How I can say my ABC!

「習いたてのABC,ちゃんと言えたでしょ、ね、ね!」
って感じですね。
でもQ,R,S・・・を2回繰り返すあたりが、
いかにも帳尻あわせのためのようで、ちょっとうさんくさいですね。

以上、ご報告まで。

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 なるほど、確かに、アメリカ人が歌う本場の歌という感じはしませんね(^^;)



 続いて、田中正平さん(HPはこちら)からの情報です。(99/05/18)

−−−(メールの一部を紹介します)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ところで、ABCの歌の話がありましたが、私は佐々木さんと同じく、

A,B,C,D,E,F,G 
H,I,J,K,L,M,N 
O,P,Q,R,S,T,U 
V,W,and,X,Y,Z 

という風に歌っていました。

ただし、Zの後の2回目のAメロは、何か簡単な英語の文章になっていたはずで
すが忘れてしまいました(申し訳ありません)。
個人的には"and"が入るのが本物っぽいと思っていたので、今回どうやら間違っ
ていたらしいと知ってショックを受けています(笑)。

ところで、私はこの歌を中学1年生の時に(1988年です)、教科書で憶えたと記
憶しています。
教科書に譜面が載っていて、授業中にテープを聴いてみんなで合唱したはずで
す。
正しくは「えられのぴー」だとするなら、僕が憶えたABCの歌の楽譜は誰が書
いたのかということが気になりますし、その間違った歌を楽しそうに歌っていた
ネイティブの俳優(だと思うんですが)はどう思いながら歌っていたのかという
ことも気になります。

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 教科書に載っていて、しかもテープがあったということになると、この歌い方も「まちがい」ということではないかもしれませんね。

 この情報のように○○で聞いたという例があると、わかりやすいです。○○社の○○○というCD(カセット等も)では、こうだったという情報があるとありがたいです。



 今度は、このホームページの最初からの常連の繭奈美さんからの情報です。
(99/05/19)

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 この唄は入門期の幼児用の教材からテープに組み込まれていますが、やっぱり私たちがむか〜し習ったのとは違って、「え〜れむえのぴ」てな感じですね。

 運筆と同時に教えることもあるので、最初は調子よく唄と同時進行していたのが、いきなりここで、大きくこけます。

 子供達も「何言ってんの?」という顔するし、弱ります。でも慣れればおもしろがって、「え〜れむえのぴ」と歌いますけどね。

で、最後の歌詞ですが最近までは

  Happy,happy,shall we be,
  When we learn our A B C.

だったのですが、今年改訂された教材では

  I can sing my ABCs.
  Next time won’t you sing with me?

となっていました。よくネイティブのチェックが入るのでこっちの方がいいぞと指摘されたのだと思います。

 それから、NHKラジオの基礎英語では講師の先生が「私が作った歌です。」なんて自慢しながら、まったく新しいABCの唄を作曲して、放送で何度も流しまくっています。不思議なことに洗脳されたかのようにこっちの方をついつい口ずさんでいます。

 これは、L M N の部分をゆっくりさせているので、きっと運筆のことを配慮しているのでしょうね。

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 英語教室の指導をしている繭奈美さんならではの、現実に即した情報、ありがとうございました。そういうところで使われている教材のテープということになると間違いはないでしょう。

 やはり「L・M・N・O・P」と歌うのが本物のようですね。私も今度は「ハッピー、ハッピー‥」ではなく「アイ キャン シン‥‥」と歌うようにします(^^;)



この話題に関するメールはこちらに(assoonas@chokai.ne.jp)




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