募金の羽根



 この文章を書いているのは5月のはじめである。毎年恒例の行事として、緑の募金が始まった。

 この募金をすると緑の羽根が渡される。この時期の緑の羽根のほかにも、年の暮れには赤い羽根の募金運動も行われる。

 この「羽根の募金運動」について、周囲の人と話をしたら、「緑や赤の他にも青い羽根を見たことがある」とか「あの羽根の材料は何の鳥の羽根なのだろう?」などと、盛り上がったので、そのことについて調べてみた。






 まずは代表格の「赤い羽根」

 これは、社会福祉事業法に基づいて行われる民間の募金活動である「共同募金」のシンボルとして使われている。

 もともと、共同募金は、アメリカのクリーブランド市で、1913年に始まったのだそうだ。これが世界に広まったということだが、そのときにアメリカでは寄付の領収書の代わりに「勇気と善行のシンボル」である水鳥の羽根を渡したのだそうだ。(実際に胸に赤い羽根をつけたのは1928年ニューオーリンズ市とダルース市のときからという資料もある)

 日本では、昭和22(1947)年11月25日に「国民助け合い共同募金運動」として共同募金がスタートしたのだが、赤い羽根が使われたのは、その翌年の昭和23(1948)年からだという。

 日本では水鳥の羽根でなく、ニワトリの羽根を使って、これを赤く染めているのだそうだ。(他の色の羽根の場合もニワトリの羽根を使っている)

 別の資料によると、わが国の共同募金は、大正10(1921)年10月に長崎県社会事業協会によって長崎市内で行われたのが最初であるということだ。募金に応じた人には造花の徽章(きしょう)つまりバッジが贈られたそうだ。これは羽根ではないが、社会奉仕のしるしに胸につけてもらうという点では、アメリカで赤い羽根が始まったのに先んじているともいえる。(この年1回だけの実施であったとのことだが)

 「赤い羽根」募金(共同募金)は10月から12月の間に行われるが、これと平行して、年末12月には「歳末たすけあい募金」も行われている。



 次は「緑の羽根」

 これは、国土の緑化と、緑化思想の高揚のために、昭和25(1950)年から行われており、募金期間は、2〜5月および9〜10月となっている。

 緑に対する国民的エネルギーを募金という形に結集していこうと、これまでの「緑の羽根」の基本理念を継承し発展させた「緑の募金」法が平成7年4月に成立して、現在に至っているのだそうだ。



 他の色の羽根はないかと調べてみたら、2つ見つけた。



 まずは、「青い羽根」

 これは、海難救助活動を援助するための募金で、海難救助のボランティア団体である社団法人日本水難救済会が、昭和25(1950)年に「青い羽根募金」として発足させ現在に至っている。



 もうひとつが「黄色い羽根」

 これは、全国的に行われている募金活動ではないようだが、石川県腎友会が、「腎臓移植の啓発促進」と「石川県腎臓バンクの基本金造成」のために「黄色い羽根募金」として実施しているようだ。(他県でも実施しているところがあるかもしれないが、私が入手できたのは石川県の資料だけである)

 古い資料を調べてみると、昭和30(1955)年8月に広島で行われた「第1回原水爆禁止世界大会」で、福島県代表が「被爆者救済と世界平和の運動のため、8月6日から1週間を国民募金運動期間に定め、黄色い羽根募金運動を展開し、世界に広めよう」と提唱しているようだが、この大会では決議されず、検討委員会を設けるということにとどまっているようだ。その後、実現されたという資料が見つからないので、このアイディアは提案のみで終わったようである。



 ここまでの資料は、ほとんどインターネットだけで調べたので、もしかしたら私の知らない「○○の羽根」という募金活動もあるのかもしれない。

 ただ、「白い羽根」とか「黒い羽根」というのは、どうも見栄えがしないようだし(黒い羽根ならカラスの羽根でまにあうかもしれない^^;)、「水色の羽根」「ピンクの羽根」「オレンジの羽根」「茶色の羽根」などもありそうにもないから、今のところ日本にあるのは「赤・緑・青」(コンピュータのディスプレイの3原色と同じだなぁ‥‥)と「黄色」の4つで、その材料はニワトリの羽根というのが、結論になるだろう。

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