「かく」という動詞がある。
「文字をかく」「背中をかく」「あぐらをかく」「べそをかく」‥‥
いろいろあるのだが、全部が同じ動きを表すものではないようだ。漢字で書いても別の字になるようだし‥‥
ということで疑問の虫が騒ぎ出したので、調べてみると、文字の種類にして5つのグループがあることがわかった。
以下、整理して簡単に整理してみる。(主に小学館の「日本国語大辞典」による)
- 1.欠く(欠・缺・闕)
- 物の一部をこわす、不足する、そろっているはずの物の一部を抜かす、など。
- 2.舁く
- 物を肩にのせて運ぶ、かつぐ、あざむく、だます、など。かごかきなどはこれ。
- 3.書く・描く
- 絵や図をえがく、文字をしるす、文章に作る、など。
- 4.掛く(懸く)
- 掛ける、組み立てたり編んだりして作る、結ぶ、締める、足を組んで座る(あぐらをかく)
- 5.掻く
- 私が調べたかったのは、実はこれであった。この「かく」については、かなり多様な内容があるので、下でさらに詳しく整理する。
- (1)
- 手、爪、またはそれに似たもので物の表面をこする。また、そのような動作をする。
- ○背中をかく。○くしで髪をかく。○ギターをかき鳴らす。
- ○鰹節をかく。○落ち葉を熊手でかき集める。○お茶漬けをかきこむ。等
- (2)
- 手や道具で、左右に振るようにして押しのけたり、回すようにしてまぜたりする。
- ○クロールで水をかく。○風呂の湯をかきまぜる。等
- (3)
- 外に現す
- ○体の外に出す。(汗をかく、いびきをかく)
- ○身に受ける。(恥をかく)
- ○顔つきなどに、ある様子を現す。(ほえ面をかく、べそをかく)
以上が、「かく」という動詞の全てなのだが、どうも最後の「かく」だけがすっきりしない。
他の「かく」が、体を使った具体的な動作が思い浮かべられるのに、最後の「かく」は動きが見えない。
辞典でも「かく」の最後の部分に書かれているのは、動詞としての性質があいまいだからなのだろうか?
「汗をかく」「いびきをかく」「恥をかく」「ほえ面をかく」「べそをかく」‥‥、不思議な動詞である。