遠くを見る2題



「遠くを見る」その1


 仕事をやっていて「多忙感」がある。そう思うのは私だけではないようで、いろんな人から「忙しい、忙しい」という声を聞く。

 ひとつの仕事を終えても、次から次とやらなければならない仕事が出てきて、気持ちの休まるヒマがないということを、多くの人が感じているようだ。

 なぜ、こんな感じがするのだろうと、しみじみ考えてみると、「常に目先の仕事ばかり見ているからだ」という結論に達した。

ブゥーン、ブゥーン!

 車の運転をするときのことを考えてみるとよい。

 車の直前の数メートル先だけを見て運転すると、実に大変である。突然、目の前に障害物やカーブがあらわれ、それを切り抜けたと思ったら、また急カーブが迫ってくる。

 運転の上手なドライバーは、もっと遠くを見て運転する。すると自分に近づいてくる障害物やカーブを、前もって知ることができ、余裕のある運転ができる。

 遠くを見て運転したからといって、近くのものが目に入らないということはない。遠くを見る広い視野の中に、目の前の様子も自然と入ってくるものだ。ところが近くだけを見ている人には遠くの様子は見えない。

 仕事も同じような気がする。数日先のことだけを見ているのではなく、数週間、数ヶ月先のことを見越して、それに応じた準備をしていれば、そんなに慌てふためいて仕事をすることもなくなるだろう。

 そういう長期的視野を職員に提示するのが、私の仕事なのだが、自分自身も今日のことしか見ることができないで、あたふたとしているのだから、若い人たちには申し訳ないことである(^^;)




「遠くを見る」その2


 テレビ放送の今後について聞く機会があった。

 私が小学生の頃にテレビ放送が一般化して以来、そんなに大きな変化がなかったようなので、これからもこんな感じでずっと続いていくのかと思ったら、そうでもないようである。

 もう10年くらいのうちに大きな変化が起こりそうだ。現在のアナログ放送がデジタルに変わるのもそんなに先のことではないらしい。(アメリカではその構想が具体化しているそうだ)

 そうなるとテレビ塔から発信された電波をアンテナで受けるという地上波の仕組みもなくなっていくのだろう。

 公共の電波は衛星放送によって空からふりそそいでくることになるし、パーソナルな情報は地下にはりめぐらされた光回線などで高速送受信ができるようになる。インターネットとケーブルテレビの境界がほとんどなくなるだろう。

 そうなると、現在の地方テレビ放送局というのは存在価値がなくなる。衛星放送で日本中が同じ電波を受信することになれば、今あるような地方企業のテレビCMは存在しなくなるだろう。

 どうも2010年頃には、そんな具合になるらしい。そのための受像機の買い換えなどの問題があるので、そんなにきっぱりと変化するわけでもないだろうが、まず20年後には完全にそうなるだろう。

 となると、地方のテレビ局や広告関係業者などは、それを見越して戦略を立てていかないと、40歳くらいで失業して路頭に迷うなどということになるのかもしれない。

 「遠くを見る」と言ったが、これはそんなに遠くのことではない。しかし、今だけを見て安心していると、とんでもない目に遭う時代がやってくることは確かなようだ。


ホームページに戻る前のページへ