略すなほうれんそう



「マカロニほうれん荘」(作:鴨川つばめ)は好きだったけど
略してほうれんそうは好きじゃないというお話です(^^;)




 この頃ラジオで耳にするCMで「とうそうしん」というのがある。

 確か「東京総合信用株式会社」というのが正式名称で、意図的に「とうそうしん」と略しているようだ。

 そのCMの中で女性が「アメダス」と言うと、「どうして略すの?」という男性のナレーションが入り、それに応えて女性が「自動地域気象データ観測システム(Automated Meteorological Data Acquisition System)」というような正式名称(ちょっと違うかもしれないが)を言うと、今度は男性が「どうして略さないの?」と言うようなかけあいがある。

 このCM自体は社名を略して「とうそうしん」と呼ばせるということに結びつけているので、これはこれで面白いのだが、この頃は世間一般に略称を使う傾向が多いようだ。

 中にはセンスの良さに感心させられるものもあるが、大半は「正式名称をきちんと言えば良いのに‥‥」と思うようなイモっぽいものである。


 前述の「アメダス」などはうまくいった例だろう。日本地図の上に雨の降っている地域などが表示されると、もともと「雨ダス」という愛称なのかと思ってしまう。

 「トピックス(Topix、東京証券取引所株価指数:Tokyo Stock Price Index and Average)」も、「Topics」(話題、今日の時事問題)を連想させる上手いネーミングだと思う。


 「ユニセフ」「ユネスコ」「ナトー」「エイペック」などは、頭文字をつないで読んだだけだから、まあこんなものだろうと思う。

 「P・D・S」なんていう略語もよく使われている。これは頭文字を並べて、それをアルファベット読みしただけだからほとんど芸がない。

 私のようなパソコン大好き人間だと「パブリック・ドメイン・ソフト」の方を思い浮かべてしまうが、一般的には「Plan・Do・See(プラン・ドゥ・シー)」ということで、「計画・実行・反省」なのだそうだ。企業のトップなどがプロジェクトをきちんと行うために、部下に「P・D・Sをきちんとやること!」などと言うわけだが、この略語、どうも日本人的発想という感じがする。はたして英語を使っている人に通じるのだろうか?


 前置きが長くなったので、そろそろ本題に入ろう。

 そんな略語の中でも、私が1番センスがないなぁと思うのが「ほうれんそう」である。

 「報告・連絡・相談」を略したとのことだが、かなり格好悪い。「P・D・S」の場合は、計画・実行・反省という時間的流れにそっているので、まだ共感できる部分もあるのだが、「報告・連絡・相談」というのは、3つの言葉の並び方に何の系統性もない。

 組織の上部にいる人間が、部下の人間に、このような活動をきちんとやらせたいという発想で、野菜の「ほうれん草」にこじつけたのだろう。

 あるものの名前にこじつける場合、アメダスのように本来のものが持つ意味と、略称の意味がうまくつながるとしゃれた名称になるというのが原則だと思うのだが、「ほうれんそう」と組織がどう関係があるのだろうか。ほうれんそうは体によいので組織にも効くというのだろうか。私はポパイやきんどーちゃんやトシちゃんを思い浮かべるだけだが‥‥‥


 たぶん何かの講演会などで誰かが言い始めたのが流行ったのだろうと思うが、講演会では受けるかもしれないが、これを一般的に使うのはセンスがない。

 社長が社員への訓辞で「『ほうれんそう』をきちんと行い、会社の経営方針に対して全員が共通理解を持とう!」などと言うのは格好悪い。きちんと「報告・連絡・相談」と言えばよい。

 教育界でも組織の上にいる人が真顔で「ほうれんそうを徹底して‥‥」などと言うのを耳にしたことがあるが、その人の言語感覚の鈍さに、聞いている私の方が恥ずかしくなってしまう。

 「ほうれんそう」と言う人は自分ではいつも使っているので、それが当たり前の言葉だと思っているのかもしれないが、その言葉を知らない人が聞いたらどうだろう。八百屋にほうれん草を買いに行くかもしれない。

 指導的立場にある人は、そこらへんをわきまえて、きちんとした日本語を話してもらいたいものだ。


 自分たちしかわからない言葉を使うという例は、学校の教師にもよくみられる。

 「そのことは委員会に相談して‥‥」
  (本人は教育委員会のことを言っているのだが、聞く人には通じない)

 「まもなく公開があるので忙しくて‥‥」
  (公開授業研究会と言わないと、何のことやらわからない)

 まあ、実際に学校の中の世界しか知らない世間知らずなのだからしかたないかもしれないが‥‥


 では最後に、あなたの言語感覚をテストする話をひとつ。

 インターネットが普及する前、パソコン通信が主流の頃は、電話代がかなりかかった。

 チャットのときは、少しでも時間をかけないために、文字のつづりを省略することが多く行われた。日本語の場合は難しいが英語だと次のような表現が使われた。(主にアメリカで)

 「I see(わかりました)」の場合は「IC」
 「I owe you(お金を借りる)」は「IOU」

 アメリカでは、このやり方で数字を使うこともある。

 「Thank you(ありがとう)」を「39」と書く。

 わかりましたか? わかった方は正しい言語感覚を持っています(^^;)

 わからなかった方は、おかしな略語などで言語感覚がおかされてきていますよ。よーく考えてみてくださいね!

 それでもわからない方は下の箱の中をマウスでドラッグしてみてください(^^;)

 「3」を「さん」と読むのは英語じゃないですよね(^^;) 




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