けつぺた



 学校の健康診断のひとつとして「蟯虫(ぎょうちゅう)卵検査」が行われる。蟯虫卵検査用紙

 経験のある方も多いだろうが、右のような検査用紙を使う。

 これは内側がセロハンテープのように粘着性になった透明なシートが2枚合わせになっている。
(2枚が互いにくっつかないように、中にもう1枚のシートがはさまれている)

 蟯虫は、人間が睡眠中に肛門から出てきて、肛門周辺に卵を産み付けるので、検査をする場合には、朝、目を覚ましたらすぐに(起き上がらないうちに)このシートを開いて、粘着部分を肛門に押しつける。

 すると、もし蟯虫の卵が産み付けられている場合には、それがこのシートに付着するわけである。

 検査の正確を期するために、1日だけでなく、2日にわたってシートを肛門に押しつける。最初の日に片側のシートを使い、翌日は反対側のシートを使う。最後に中にはさまれていたシートをとり、2枚の粘着面をぴたっと合わせて、学校に提出するのである。

 お尻にシートをペタッとつけるので、私はこれを「けつぺた」と呼んでいる。

 最近では一般的な検査法になってきているので、やり方を間違える子はいなくなったようだが、この検査法が最初に取り入れられた頃には、いろんなことがあったようだ。

 まずは「検便」と勘違いしたという例である。「検便」はこの検査法が始まるずっと前から行われていたので、寄生虫の検査というと「ウンチ」を持ってくるものだと思った子供もいたらしい。

 学級のほとんどの子がペラペラの軽い検査用紙を持って来ているのに、重みのあるものを提出した子がいたので、袋から出して見てみると、2枚のシートの間に、ていねいに「ウンチ」が入れられていたという話を聞いたことがある。

ワンワン
 次の例は、現在でもたまにあるとのこと。

 この検査法、家族が子供にきちんと声をかけてやらせるとよいが、中学生ぐらいになると自分ひとりでやることが多い。

 きちんとした子だと問題はないのだが、検査(朝の「けつぺた」)をするのを忘れてしまう子もいる。

 ちょっと気のきいた子なら、1回で2日分の「けつぺた」をやってしまうなどという芸当もできるが、それも忘れて、登校途中にカバンの中にある未使用の検査用紙に気づくという子もいるようだ。

 登校途中だから、ズボンをおろして「けつぺた」をやるわけにもいかない‥‥‥。

 困ってしまったこの子の頭に、ふと良い考えが浮かんだ。



 検査用紙を提出してから数週間が過ぎ、学校に検査結果が送られてきた。その中に1人だけ、人間の腸内には存在するはずのない、「犬の寄生虫」の卵が検出された子供がいたそうだ。




ホームページに戻る前のページへ