前の学校では、ここの学校では
教職員につきものなのが転任。短ければ2年(まれに1年ということもあるが)、長い人でも10年も同じ学校にいると、春には他の学校に転任になる。
転任した教師が、行った先の学校で、いちばん嫌がられるのが「前の学校ではこうしていました」という発言。特に大規模校から小さい学校に転任して行ったときなど、これを言おうものなら、「大きい学校から来たからといって、何様のつもりでいるのよね!」などと総スカンをくってしまうこと間違いなしの禁句と言われている。
管理職の場合は特に禁句だと言われている。確かにそうかもしれない。新しく来た校長が、「前の学校ではこうやっていたのだが‥‥」を連発したのでは、前からその学校にいた教員たちが、「なんなんだ、あの校長は!」と反発するのは必至である。事実、(私も教頭会などで)「『前の学校では』という発言はつつしんだほうがよい」という助言を受けたこともある。あまり「前の学校では」発言が多くなると、「ここの学校ではこうなんです!」とも言われかねない。
でも、ここで落ち着いて考えてみてほしい。
(このホームページをご覧の方は教員の方が多いと思うので、経験的に分かるかもしれないが‥‥)
自分が新しい学校に転任したとき、その学校の全てにすぐに慣れてしまうことはないはずで、いろいろなことに違和感を感じるはずである。
長い間、馴染んできた前任校のやりかたと違えば、全てのことに違和感を感じることになるのだが、特に強い違和感を感じるのは、前の学校と比較して、「やり方が非合理的なもの」とか、「遅れているもの」に対してなはずである。
新しく転任してきた教師が、「どうもここの学校のこのやり方はおかしい」と感じたことは、客観的に見てもおかしいことなのである。私も転任した際に、「ここの学校の教具の整理の仕方が良くない」とか、「校内が乱雑で汚れている」とか、「教師の言葉遣いがきちんとしていない」などと感じたことが多くあった。(別に現任校がそうだというのではなく、何度か転任したときの経験です)
自分のできる範囲で改善は図ってきたつもりだが、実際に改善できたのは気づいたことの20%にも届かない。
ところが、転任して半年もたつと、「おかしい!」と感じたことが、「それほどでもないな」と感じるようになってくるのである。これを良く言えば「その学校に慣れた」ということになるのだが、実際には自分の感覚が麻痺してしまったということになるのだろう。
そして、新年度をむかえたときには、新しく来た人が「ここの学校ではこのようにやっているようだが、私が前にいた学校では、こんなふうにやっていた」などと言うと、「そうおっしゃっても、ここの学校では、ずっとこのようにやっているのです」などと反論するようになってしまう。
これでは良い学校になるわけがない。学校を改善していくには、客観的な見方で、その学校の問題点を指摘してくれる人の意見をとりいれていかなくてはならない。
「前の学校では‥‥」という意見が出るということは、そこに自分の学校の問題点があるということである。それを謙虚な態度で受け止め、必要に応じて改善していかなければ、そこの学校はひからびたものになってしまう。
「前の学校では」が禁句なのではなく、「ここの学校では」こそが禁句であり、新しく来た人たちが気楽に「ここの学校のこんなところは良くないのではないですか」と言えるような雰囲気を作ることこそが大切だと私は考える。
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