完全学校週五日制になり、授業日数が少なくなったため、この頃では学校行事も様変わりしてきているが、私の周辺の学校では今でも秋になると徒歩の遠足を行っているところが多い。
行き先は山・海辺・川辺など様々だが、だいたいは学校から歩いて1時間程度で行ける範囲である。
自然の中で遊ぶだけでなく、鍋や食材を持って行き、野外で調理をして昼食をとるというのが一般的なパターンである。
私の地方では、このような遠足を「なべっこ遠足」と呼んでいる。
秋田県内の多くの学校(小・中・高・大学)や幼稚園・保育園で行われているようだし、呼び名も「なべっこ遠足」で共通なので、全国で通用する呼び方かと思っていたのだが、先日、同僚から「『なべっこ遠足』という呼び方は秋田県でしか通用しないらしい」という話を聞いた。
子供の頃から当たり前のように「なべっこ遠足」という言葉を使っていた私にはちょっと信じられないことだったので、インターネットで検索してみたら、どうやらこれが本当らしい。
Googleで「なべっこ遠足」をキーワードに検索してみたら該当サイトが417件。これを更に「行事」というキーワードで絞り込んだら124件が該当した。
全てのサイトを見るのはちょっと大変なので、ヒットした上位の60サイトを見てみたのだが、60件中59件が秋田県の学校あるいは在住者・出身者のサイトであった。(残りの1件は岩手県の学校のサイトだった)
「なべっこ遠足」は秋田県特有の言葉だったのである。
では、秋田県特有の行事かというと、これはちょっと違うようだ。似たような行事は近隣の各県に存在する。山形県で盛んな「芋煮会」がこれに似ている。芋煮会は山形県の他にも岩手県・宮城県・福島県などで行われているようだ。
鍋に入れる肉が牛肉と豚肉の違いがあったり、味付けが醤油味と味噌味の違いがあったりするが、共通なのは里芋を入れるということである。まあ「豚汁」の芋を里芋にしたという感じで想像してもらえばよいかもしれない。
ただ秋田県の「なべっこ」は里芋にはこだわっていない。里芋を使うこともあるが、それはごくまれで、鍋の内容は「きりたんぽ」であったり「すきやき」であったり「豚汁」であったりする。何でも好きなものでよいのである。学校の「なべっこ遠足」の場合、児童生徒が好きなメニューを作ることが多いが、時にはカレーを作ったりする子たちもいる(^^;)
また東北地方の芋煮会は、どちらかというと子供より大人の行事という雰囲気なのだが、秋田のなべっこは学校の遠足というニュアンスが強いように感じる。大人同士で「明日は○○に出かけてなべっこでもやるか」ということもないわけではないが、私の周辺を見る限りではそれほど一般的ではない。
「なべっこ遠足」という言葉は秋田県内で偏りなく全県均一に使われているようなので、もしかしたら学校で「なべっこ遠足」という言葉を使い始めたのかもしれない。(今のところ、その由来は確認できていないのだが‥‥)
野外で調理をして食事をするタイプの遠足は、秋田県だけでなくいろいろなところで行われていると思うのだが、他の都道府県では何と呼んでいるのだろうか?。そのことについても情報があったら知りたいものである。
この「なべっこ遠足」、学校の教育課程の中では「学校行事」という分野になる。学校の教育課程を表にまとめると次のようになる。
教 科 国語 社会 算数 理科 生活 音楽 図工 家庭 体育 道 徳 特別活動 学級活動 児童会活動 クラブ活動 学校行事 総合的な学習の時間
「学校行事」はさらに次のように5つに分かれる。
儀式的行事 入学式、卒業式、始業式、終業式、修了式
開校記念儀式、新任式、離任式、朝会等学芸的行事 学芸会、学習発表会、作品展示会、音楽会
音楽鑑賞会、演劇鑑賞会等健康安全・体育的行事 健康診断、健康指導行事、避難訓練、運動会
交通安全教室等遠足・集団宿泊的行事 遠足、修学旅行、野外活動、集団宿泊等 勤労生産・奉仕的行事 飼育栽培活動、校内美化活動、地域社会の清
掃活動、福祉施設との交流活動等
10数年前(全ての土曜日が授業日であった1992年3月まで)は、学校の時間にも余裕があったので、春はバス等に乗った都市部への遠足、秋は徒歩での遠足というのが、私の周辺では一般的であった。子供も教師もゆっくりと遠足行事を楽しんだものである。
その後、1992年4月から第2土曜日が休みになり、1995年4月からは第2・第4土曜日が休みになって、2002年4月からは全ての土曜日が休みになった。子供の生活にはゆとりが生じたわけだが、学校の教育課程は少ない授業日数の中であれこれやらないといけない状態になり、学校行事等も削減されてきた。
遠足も「学校行事」として春秋のそれぞれ1日を費やす余裕もなくなってきて、教科の学習と関連づけた「校外学習」の要素が強くなってきた。例えば社会科の学習で行わなければならない「ごみ処理場」の見学と遠足を結びつけて、6時間の学習を「学校行事(遠足・集団宿泊的行事)で3時間」「社会科の学習として3時間」という具合にカウントするようになってきたのである。
秋の「なべっこ遠足」なども、「頑張って歩くのだから体育として2時間」「調理をするので家庭科として2時間」「自然観察をするから理科で1時間」「残った1時間は学校行事」などとカウントしたりする(^^;)
ゆとりのない教育課程の中で教科の授業時数を確保するためにはしかたがないことかもしれないが、教科学習的な内容を含んではいてもやはり行事は行事である。細かいことにこだわらずにゆっくりとした体験をさせたい気もする。また、校外学習の要素が強くなったため、学校全体で「遠足」という行事を持たず、学年によって異なる日に行う傾向も出てきた。学年の学習進度等を優先すればそうなるのだが、個人的には、学校全体が「今日は遠足だぁー!」というお祭り感覚で行事を持っていた頃のほうが、子供が生き生きしていたような気がする。
小学校の場合、「なべっこ遠足」は低学年の子たちだけでは無理なので、学年を解体した「全校縦割りグループ」などでやることが多い。したがって、「教科学習の一環」としてではなく純粋な学校行事として行うことが多いのだが、よいものは残すという意味から、私としてはこれからもずっと続けてほしい行事である。
<03.11.10>