ワラビと灰


(これもオラホだけのことではないかもしれないけど‥‥)




 ご存じの通り、これは「ワラビ」である。山菜の中でも人気があり、私もワラビのおひたしやワラビたたきなどは大好物である。

 食べるのは若い葉(新葉)の時期で、成長してしまったものは食べられない。全国的には「ゼンマイ」のように葉の部分を食べることが多いようだが、私の地方では茎の部分(茎のように見えるが実際は葉なのだそうだが)を食べることも多い。

 このワラビ、採ってきたまま、軽くゆでた程度では苦くて食べられない。熱湯で十分に「あく抜き」をしなければいけないのだが、味の問題だけでなく、「あく抜き」が不十分だと命にかかわるおそろしい毒を持っているのだそうだ。



 百科事典を調べたら、下のような記述があった。

ワラビ(蕨) Bracken
 早春の若芽を食用にする夏緑性のシダ。ほかのシダとは、おりかえった葉の裏側の縁にくるまれている胞子嚢(のう)によってある程度区別がつく。胞子の時期は日本では9〜10月。いくつかの変種が世界各地の茂み、牧草地、ひらけた森林などにたくさん生育している。葉は太い地下茎から1枚だけのび、何回も羽状にわかれる。秋には葉の長さが1〜2mにもなり、初冬には地上部がかれてしまう。
 日本やアメリカとカナダの一部の地域では、握りこぶし状の若い葉をゆでて青野菜として食べる。じゅうぶんなあく抜きをしないとチアミン(ビタミンB1)を分解するチアミナーゼがふくまれていて、人間や胃が1つのウマなどの動物に、死ぬこともある脚気(かっけ)をひきおこす。ウシ、ヤギ、ヒツジなどの反芻動物は消化器系でチアミンを生成するので、ワラビのチアミナーゼの影響をうけることはない。また、調理してもこわれない別の有毒な要素もふくまれていて、大量に食べると、体じゅうが大量出血症状になり、骨髄がしだいに破壊され死んでしまう。
 だが、熱湯であく抜きをしたワラビを、酒のつまみや副食の一品として食べている程度ならば、なんら害はない。

分類:ワラビ科ワラビ属。ワラビの学名はPteridium aquilinum。


 体じゅうが大量出血症状になり、骨髄がしだいに破壊され死んでしまう」とは、実におそろしい。しかし、きちんと「あく抜き」をしたものを副食として食べる程度なら害はないということだし、捨てがたい味があるので、私はけっこう大量に(^^;)食べている。まあ、タバコも酒も大量にやっている私だから、ワラビ程度でおそれることはない(^^;)



 ところで、この「あく抜き」、皆さんのところではどのようにしてやっているだろうか?

 私のところでは(といっても、実は料理を全くしない私なので、全て人から聞いたことである。実はこの文章を書くために調べて初めてわかったことで、それまではできあがったものを、ただ「旨い旨い」と言って食べているだけの私であった^^;)次のような方法でやっている(のだそうだ)



 鍋などの容器に、ワラビを入れて、それに灰をかける。その上から熱湯をかけ、フタをして数時間放置する。

 ワラビを鍋から取り出し、きれいに水洗いして、別の鍋に入れてゆでる等の調理をする。



 この「灰をかける」というのがポイントなのだそうだ。灰を使わずにただ熱湯をかけただけでは苦みが消えないし、ワラビもきれいな緑色にならず、食べられたものではないという。

 灰の量や放置時間で、うんと柔らかくなったり、しゃきっとした歯ごたえになったりするのだそうで、そのへんに調理方法に合わせたコツがあるのだそうだ。

 最近では灰を入手しにくくなったので、「重曹」で代用することが多いのだそうだが、灰で「あく抜き」したような美味しさは重曹では出せないともいう。



 ところが、最近では、この「灰」に異変が起きているのだそうだ。

 これまでと同じ量をかけて同じ時間放置しておいても、これまでのようなきれいな色にならないのだそうだ。

 いろいろ話を聞いてみると、灰に不純物が含まれていることが原因らしい。

 昔の灰は全て木を燃やしたあとのものだったのが、今では「ゴミ焼き」ということで、ビニールやプラスチック等をいっしょに燃やしたあとの灰になってしまっているのだ。

 ゴミ消却によるダイオキシンの発生が環境問題になっているが、煙だけでなく灰にも影響が現れているようだ。実際にそんな灰をつかって「あく抜き」をすると、ワラビの色が茶色っぽく変色して、食べる気にならないようなワラビになってしまうという。もしかしたら、見た目だけでなく、食べたときにも身体に悪いものが含まれた状態になっているのかもしれない。



 そんなわけで、薪ストーブを使っている家(純粋な木材が原料の灰が出る)には、「ワラビのあく抜きをするので灰をわけてほしい」という申し込みが殺到するという。

 少々、余談になるが、その際に、ストーブの焚き付けに灯油などを使っている家の灰は敬遠されるという。味がわかる人にとっては、そういう灰であく抜きしたワラビは「油くさい」のだという。良い灰を作るためには焚き付けも杉の枯葉などを使って、純粋の「木灰」(うちの方ではモクハイと呼んでいる)にしなければならないのだそうだ。



 ワラビをきれいな緑色に仕上げるためには、灰であく抜きをするほかに、ゆでる際に鍋の中に銅線や銅板などの銅製品を入れるとよいのだそうだが、不純物の入った灰であく抜きをしたワラビだと、銅製品といっしょにゆでてもきれいな色は出ないのだそうだ。



 前述したように、私は料理に関しては全くの素人だし、植物のことや化学反応のこともよくわからない。ここまで書いたことの中にも的はずれなことや間違いも多いかもしれない。しかし、この頃、ゴミを焼いてできる灰は、昔の灰とは別のものになってきているということだけは確かなようだ。



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