市町村ホームページの悲劇


(オラホだけでなくて全国共通な気もするが‥‥ あ、長文です)

 私のホームページのリンクコーナーには、近隣市町村の公式ホームページも掲載している。自分で掲載している以上、無事にリンクしているかどうかの確認もあって、ときどき覗いてみるのだが、どこの市町村のホームページもアクセス数がほとんど伸びていない。

 オープンした時点では市町村の広報紙等に紹介されることもあって月に数百程度のアクセスはあるのだが、その後はバッタリという感じで、1日のアクセス数がゼロというホームページもかなりあるようだ。

 ほとんどの市町村のホームページが、業者の手によって作られた立派なものなのに、ほとんどアクセスされないというのはどうしてだろう。かなりの経費もかけているはずなのに‥‥。

 この問題について、少し考察してみたい。



誰が作ったかはっきりしない

 「業者の手によって作られた立派なもの」というのが、実はいちばんの問題である。どの市町村ホームページも誰が作っているのかが見えないのである。

 おそらくは、市町村の担当者が、「ホームページの構成はこんな感じで‥‥、資料はこれを使って‥‥」と指示して、ホームページ作成業者に委嘱して作ってもらうのだろう。たしかに見栄えのよいカッコイイものはできるが、こういうやり方だと新しい情報を加えたいときにとても具合が悪い。

 それぞれの市町村がホームページを立ち上げた時点では、ホームページ作りができる人があまりいなかったのだろうが、この頃は小学生でも作れる時代である。町役場の職員でもちょっと研修すれば1週間程度で立派なものを作ることができるようになるはずだ。

 市町村の公式ページなのだから、市町村長の責任で市役所や町役場に作らせるのが基本である。市町村紹介のパンフレットなどは企画は役場で立てても最終的には印刷業者に任せることになるのだが、インターネットもそれと同じではいけない。専門の業者なしでも作ることができるのがホームページのよいところなのだから、完全に自前でいくべきである。それによって初めて、誰が作っているのかが明確なホームページになるし、迅速な情報の提供・更新が可能になると思う。



性格がはっきりしない

 前述のように、市町村紹介のパンフレットと同じ感覚のホームページが多いので、「このホームページで何をしたいのか」がはっきりしない。

 町のパンフレットは、来町したお客さんにあげたり、「送ってください」という要請があれば郵送するものなのだが、インターネットのホームページとなると全く性格が違ってくる。その点をはっきりしないと良いホームページにはならない。

 性格をはっきりさせるということは誰に見てもらうかをはっきりさせるということである。

 インターネットは世界中どこからでも見ることができるものなので、町の中だけに配布している広報誌とは性格が異なる。まあ、世界に情報発信するために「英語版を作ろう」なんて無理をする必要はないのだが、基本的に、日本全国の不特定多数の人に向かって情報発信するのか、それとも町外に住む町出身者を含めた「町民」に絞るのかをはっきりすべきである。

 「両面の性格を併せ持つ」というのが理想的だろうが、現在はどっちつかずなホームページがほとんどである。

 どちらの方向に進むにしても、それなりの改善と工夫をしなければならないのだが、私個人の考えでは、「町民」にターゲットを絞ったかたちで進めるのが良いと思う。現在はまだインターネットを使ってホームページを見ることができる人は、住民の中で少数派という実態だが、今後はぐんと増えてくることが予想される。月に1度発行される広報紙よりも新しい情報を提供できる媒体としてホームページを活用するならば町内からのアクセス数はかなり増えるはずである。

 印刷物で供給される広報紙の情報よりも新鮮で詳細なものを常に提供するようにすれば、「町のホームページを見て得をした(見ないで損をした)」という人が増えてくる。この「見て得をする」という意識を持たせるのが人気ホームページにする決め手である。また、見るだけでなくて、町民から町当局への要望や情報提供ができるというインターネットの特性を利用しなくては意味がない。

 即時性と双方向性というインターネットの長所を、どう活用していくかが成功の分かれ目なのだが、今のところ、うまく使っている市町村のホームページにはお目にかかっていない。



宣伝不足

 日本全国を対象にするにせよ、町民にターゲットを絞るにせよ、いずれ宣伝活動は必要である。町民に関わる内容が主なホームページだとしても、ふるさとを離れて町外に住んでいる人にとっては広報紙を入手しなくても簡単にふるさとの情報を知ることができるホームページがあれば見てみたいはずである。

 ところが、市町村のホームページの存在を宣伝する努力はほとんど行われていない。市町村の広報紙の片隅に「○○町のホームページアドレス」などと小さく印刷されている例もあるが、これでは全く効果がない。

 一般的にインターネット上でホームページの宣伝をする方法は2つある。

 1つは、「Yahoo!」とか「goo」といった検索エンジンと呼ばれるサイトに登録することである。これに登録すれば、インターネットを使う人は「○○県○○町」というキーワードを入力することで、市町村のホームページを見つけることができる。しかし、試しに私がいくつかの市町村名で検索してみたが、それらで検索できるところはあまりなかった。つまり、登録作業を怠っているのである。これでは「日本全国に向かって情報発信」などと言っても、自分の家の前で肉声で「日本全国の皆さーん!」と言っているようなものである(^^;)

 もう1つの方法が、いろんな掲示板などに、「○○町のホームページをオープンしましたので、ぜひご覧ください!」と書き込むことである。その掲示板を見てくれる人はそれぞれ数百人しかいないかもしれないが、こまめにいろんな掲示板に宣伝の書き込みをすれば、かなりの効果はある。個人のホームページの場合、宣伝はこれが1番効果的である。しかし自治体のホームページでこういったことをしている例は見たことがない。

 どちらも、きちんとしたホームページの担当者(管理者)が不在か、あるいは努力不足だから、こういった状態になるのである。自治体がホームページ専門の仕事をする職員を置かないという、組織的な問題であると思う。



立派だが更新がない

 「どんなホームページでも、見る人は最低2回訪れる」という。

 前述の宣伝活動をやれば、「どんなホームページか見てみよう」ということで、たいてい1回は見てくれる。ほとんどの市町村のホームページは、とりあえず見た目は立派なので、「おおー!なかなかすごいなぁ」などと感動してもらえるかもしれない。

 そして、ちょっとたってから、「あのホームページはどうなっているだろう」と、もう一度アクセスする。そのときに前回と全く同じ内容であれば、「ああ、ここは更新のないホームページだな」ということで、その後は特別な必要(旅行に行くので地図情報を見るなど)がなければ、二度とアクセスすることはない。

 これがインターネットのおきて(^^;)である。

 私の近隣の市町村のホームページは、まさにそれである。

 トップページはどれもハイセンスでかっこいい。JavaスクリプトやJavaアプレット、フラッシュなどを使った視覚的な効果を考えているものもある(やり過ぎでめちゃくちゃ反応が遅く、たぶん誰も最後までつき合わないだろうと思えるK町のHPなどもあるが‥‥)またフレーム構造などを使って洒落たつくりにしている市町村も多い。

 おそらく、ホームページ作成を任された業者が、市町村のOKをとるために、いろいろなテクニックを使って見栄えのよいホームページ作りに腐心したのであろう。インターネット経験の少ない町の担当者にアピールするには、機能オンリーのシンプルなものより、インパクトの強い画像(動画等も含めて)を多用したものの方が受けるし、試作品の場合は電話回線を通さないでハードディスクに入っているファイルを見せるわけだから、反応の遅さなどは目に見えない。

 実はこれがくせ者である。かっこいい、高度な技術で作られたホームページは、更新などの管理が難しい。初級者レベルのホームページ作成テクニックでは手に負えない。

 そうなると市町村の職員が簡単に更新することができない。いちいち原稿を持って業者に頼みに行かなければならない。私の近隣の市町村ホームページは、ほとんど1つの業者が作っているのだが、実際にその作業にあたっているのは業者の社員の中でも1人か2人だと思う。そんなに簡単に対応できないだろうし(それも更新を頼んだ場合のことで、実際には更新を依頼することもほとんどないように思える)、そのたびに手数料もかかる。

 更新は、市町村の職員が自分の手で行えるようでなくてはならない。そのためにはシンプルなつくりにすることが必要である。実際に新聞社のホームページでニュースを扱うコーナーなどは、非常にシンプルなつくりになっている。ソースを見てみればわかるが、「今日のニュース」などの記事は、画面に表示されないタグの<!>を使った中に「ここにタイトル」とか「ここから本文」などという説明が書かれている。つまり、記事を書くための原版になっている文書があって、ニュース記者はその中に普通のワープロを打つように文字を打ち込んでいる(あるいはテキストデータを流し込んでいる)だけなのである。(写真を扱う場合も「ここに写真」というような設定がされているようだ)

 これで十分だし、こうでなくてはいけない。市役所や町役場のそれぞれの部署で、自分の仕事用にワープロの文書を作ったら、それをそのままホームページで使えばよいのだ。この頃では(あるいはこれからは)仕事のほとんどの結果がワープロやパソコンを使ってデジタル化されるのだから、ホームページ用にあらためて作るのではなく、それをそのままホームページでも使えるようにすればよいだけなのである。

 こういうシステムを早く作ってしまえば、迅速な情報発信・更新が可能になる。ホームページ作成業者に頼むのであれば、ホームページそのもののなかみまで作ってもらうのではなく、市役所・町役場の仕事をそのままホームページに発信できるようなシステムそのものを作ってもらうべきなのである。

 そうやって出来上がった市町村のホームページは、見た目は地味かもしれないが、なかみ(情報)の面ではとても魅力的なホームページになるはずだ。



売り物がない

 しつこく書いているように、本来、市町村のホームページは新鮮で詳細な情報の提供がいちばんの売り物でなくてはならない。(市町村のホームページではないが、バスケットボールで全国的な能代工業高校のホームページなどは、バスケット部の試合の結果の情報は素晴らしく速い。試合が終わればすぐにホームページで紹介されるので、テレビのスポーツニュースなどよりもいち早く試合の結果を知ることができる)

 迅速な情報提供は当然のこととして、町内や全国の人を引きつけるホームページにするためには、何か別の「売り物」もあったほうがよい。

 市町村自体に強烈な個性があることがいちばんよいのだが、全国の市町村全てが「これぞ日本一」というようなものを持っているわけではない。

 だとすれば、ホームページそのものに個性を持たせればよい。私なら次のようなことを考える。

 もし、全国を対象にするのであれば、町の特産品をインターネットで通信販売する。メール機能やCGIを使えば、そんなに難しいことではない。販売の収益も上がる効果があるが(あまり期待しない方がよいが)、宣伝としては効果的である。できれば、その製品の製造業者に協力してもらって、クイズの賞品にする。このことは宣伝しないと応募者もいないので、検索エンジンに登録する際には、単に「地域情報」とか「市町村」だけでなく、「懸賞・クイズ」等のコーナーにも登録する。また、いろんな掲示板に書き込んで宣伝する際にも「うちの町のホームページではクイズに答えて○○をもらおうというコーナーがあります」と書き込むようにする。懸賞関係のリンクを扱っているサイトに登録するのも効果的だ。これだけで、うまくすると毎月数千のアクセスが来るようになる。

 町民を主に対象とするのであれば、「掲示板」の設置がよい。よくこの話を市町村のホームページ担当者にすると、「掲示板荒らしがあると対応が大変だし‥‥」ということになるのだが、心配はいらない。実際、私のホームページの掲示板もかなりアクセス数は多いほうだと思うが、そういう悪質な書き込みの例はない。仮にあったとしても、こまめにチェックしていれば、すぐに削除が可能である。(掲示板荒らしにしてみれば、数日間も管理者が掲示板を見ないサイトが狙い目なようだから、かえって市町村のホームページの掲示板の方が危ないかもしれないが、まあ1日に数人しか見ないようなホームページで、そんな心配をすることもないだろう ^^;)

 市町村への質問や要望をインターネットで扱うには、メールやメール送信フォームによる受信などの方法もあるが、これだと町に寄せられた意見や情報が一般の人には見えないし、だいいち担当者の対応が大変である。

 掲示板システムなら、住民相互の情報交換も可能だし、担当者が放っておいても、うまくするとけっこう盛り上がる。(実際、個人ホームページの中には掲示板だけで成立しているような『人気サイト』もある)また市町村当局にしても、書き込みの内容によっては町長さんが「それはこういうことで‥‥」と返答したり、建設課長が答えたりと多様な対応ができるし、住民側でも単に市町村への要望や質問を書き込むだけでなく、「うちのほうの子供会で、夕涼み盆踊り大会をやるので遊びに来てください」などという情報発信・交換ができる。

 住民が毎日のようにアクセスする「動いているホームページ」にするには、掲示板システムの導入は必須であると思う(ただし、毎日、掲示板を見る管理者は必要であるが)



専門の担当者が必要(広報担当者と連動して)

 以上のように私の考察・提言を述べてきたが、このように運用するには、市町村役場の中に、きちんとした「ホームページ担当者」を置くことが前提である。

 現在の市町村ホームページの悲劇は、市町村に担当者を置かずに作成・管理を業者任せにしていることで起きている。

 かわいそうに、せっかく立派に作られた市町村のホームページは、全国の人はもちろん、自分の市町村の住民はおろか、市町村役場の人にも見てもらえないで、プロバイダのサーバのハードディスクの中で泣いているのである。

 これを檜舞台に立たせてやるには、市町村ホームページのしくみそのものを変えてやらなければならない。その具体的な方法については長々と書いてきた通りである。それを現実化するには担当職員が必要なのである。

 あらためて新しい課を作る必要はない。現在、どんな市町村でも印刷物である月1回発行の広報紙を作っているはずだし、その担当者を置いているはずである。それを活用すればよいのである。担当者が書いた広報紙の原稿をそのままホームページで使えるようなシステムにすれば、担当者が過重な仕事に苦しむということはない。広報紙の原稿を活用するというよりも、むしろホームページで常に情報を発信しておいて、広報紙にはそれを整理してまとめるという手順にしたほうが効率的である。

 また、広報担当者だけがホームページに関わるのではなく、各課がホームページで簡単に情報を発信するようなシステムが整えば、更に効率化が図られる。(各課の担当者が定期的にホームページや掲示板をチェックするだけでも、アクセス数は飛躍的に増えるはずだ。もちろん本来の意味のアクセス数アップではないのだが、ホームページが生きて動いているあかしにはなる)

 これは理想論ではなく、これからの市町村の情報活動は、このようにあるべきだと私は考える。



 以上、いろいろ好きなことを書いてきましたが、市町村のホームページを再考する会議や、新設する際の会議の資料にでも使っていただければ幸いです。

 市町村ホームページ担当の方もいらっしゃると思いますが、感想はいかがでしょうか?

 「そうだ、その通り! 自分もそのことが言いたかった」という方もいるでしょうし、反論がある方もいらっしゃるかと思います。私へのメールか、掲示板「千客万来ルーム」等でご意見ご感想をいただければ嬉しいです。(私としては「オラホ」の市町村ホームページがあのままではいけないと感じていますので‥‥)

 そうそう、この町のホームページなんかは参考になるかも



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